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第二十七話
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「グラシラド国の人間はここで待て。もてなしは出来ないが、白湯くらいは出せる」
褐色肌の大男は、村の入り口付近に有る、壁の無いあばら家にミマルン達を案内した。葉っぱで編んだゴザは敷いてあるが、王女や騎士兵士を座らせる様な場所ではなかった。
「キャンは聖人を村長宅まで案内してやれ。同行者は一名のみ。他はここで待機して貰おう。本来は客を招いたりしない村なので、みすぼらしさは我慢してくれ」
「村長とお会いするのでしたら、同行はわたくしですわね。よろしくて? プリシゥア」
「気を付けるっスよ」
レイとプリシゥアが頷き合っていると、村の褐色肌少年が走って来て屈強な男に耳打ちした。
「あー、それと。金髪の少年と同い年くらいの赤髪の少女が居たら、そいつを含めて三人でも良い、との事だ」
「俺の事か?」
不審に思っているグレイを値踏みする様に見る屈強な男。
「お前みたいだな。カタギじゃないっぽいが、村長が呼んでるなら仕方がない」
「三人でも良いって言い方なら、行っても行かなくても良いって意味になるよな? さて、どうするか」
罠の可能性を考えるが、判断材料が少な過ぎて考えが纏まらない。
村の少年はただの伝言係だった様で、用が済むとすぐに去って行った。
「人数は多い方が良いっス。頼むっス」
「しょうがないな。まぁ、確かに謎の村で言われるままに分断されるのは危険だしな。行こう」
プリシゥアにお願いされたので、警戒係として村長に会う事にした。
「こっちだ」
キャンの先導で村の大通りを歩くテルラ達。先頭レイ、しんがりグレイ、真ん中テルラと、いつもの隊列の形を取る。
余所者の来訪が伝わっているのか、人っ子一人居ない。
住居はやはり木造だが、全てが丸太を積み上げただけの武骨な建物だった。
「ここだ」
キョンが立ち止まる。
10人以上の褐色肌の男達が丸太を積み上げただけの建物を守っている。とても広い一軒家で、ここだけ背の低い植木で囲まれている。あからさまに重要施設なので、ここが村長邸か。
「武器やお荷物はこちらのお部屋に置いてください」
入り口を塞ぐ様に待っていた褐色肌の女性が、玄関脇にある小部屋のドアを開けた。屋台で使う様な丸椅子が数脚有る、使用人待機室みたいな部屋だった。女性は使用人らしい格好ではないが、物腰がメイドなのでメイドなのだろう。
「銃の本体を置くんだから、弾はそのままで良いよな? コートのあちこちに仕込んであるから、出すのも仕舞うのも面倒なんだが」
長銃と拳銃を椅子の上に置きながら訊くグレイ。
女性は、玄関付近を守っている男性を手招きで呼んで相談した。
「ええと、そうですね。銃と弾を一緒に置く方が危険でしょうから、弾はそのままで結構です」
テルラは大きなリュックを、レイは腰の剣をその部屋に置いた。
グレイは三丁の銃を持っているはずだが、椅子の上には二丁の銃しかない。
「こちらです」
ボディチェックされずに応接間に通された。用心深かったり適当だったりと、かなりチグハグな感じだ。
そこに居たのは、二人の若い女だった。
正面の椅子に座っているのは、ほどほどに豪華なドレスを着ている女。二十代中頃で、見る人によってはレイより美人に感じるかも知れない。髪の色は朝日の様に眩しいオレンジ色で、その珍しい髪色が魔力の高さを物語っている。彼女が村長だろうか。
「――お前は!」
ソファーに座っているもう一人の女が問題だった。
魔法使いのローブを羽織っていて、片足が無い。
その顔と足を見てグレイが目を剥いた。
「久しぶりね、テルラくん。レイ様。そして、グレイちゃん」
そいつは、ハイタッチ王子と共に居て、グレイが足を撃った、あの女魔法使いだった。
褐色肌の大男は、村の入り口付近に有る、壁の無いあばら家にミマルン達を案内した。葉っぱで編んだゴザは敷いてあるが、王女や騎士兵士を座らせる様な場所ではなかった。
「キャンは聖人を村長宅まで案内してやれ。同行者は一名のみ。他はここで待機して貰おう。本来は客を招いたりしない村なので、みすぼらしさは我慢してくれ」
「村長とお会いするのでしたら、同行はわたくしですわね。よろしくて? プリシゥア」
「気を付けるっスよ」
レイとプリシゥアが頷き合っていると、村の褐色肌少年が走って来て屈強な男に耳打ちした。
「あー、それと。金髪の少年と同い年くらいの赤髪の少女が居たら、そいつを含めて三人でも良い、との事だ」
「俺の事か?」
不審に思っているグレイを値踏みする様に見る屈強な男。
「お前みたいだな。カタギじゃないっぽいが、村長が呼んでるなら仕方がない」
「三人でも良いって言い方なら、行っても行かなくても良いって意味になるよな? さて、どうするか」
罠の可能性を考えるが、判断材料が少な過ぎて考えが纏まらない。
村の少年はただの伝言係だった様で、用が済むとすぐに去って行った。
「人数は多い方が良いっス。頼むっス」
「しょうがないな。まぁ、確かに謎の村で言われるままに分断されるのは危険だしな。行こう」
プリシゥアにお願いされたので、警戒係として村長に会う事にした。
「こっちだ」
キャンの先導で村の大通りを歩くテルラ達。先頭レイ、しんがりグレイ、真ん中テルラと、いつもの隊列の形を取る。
余所者の来訪が伝わっているのか、人っ子一人居ない。
住居はやはり木造だが、全てが丸太を積み上げただけの武骨な建物だった。
「ここだ」
キョンが立ち止まる。
10人以上の褐色肌の男達が丸太を積み上げただけの建物を守っている。とても広い一軒家で、ここだけ背の低い植木で囲まれている。あからさまに重要施設なので、ここが村長邸か。
「武器やお荷物はこちらのお部屋に置いてください」
入り口を塞ぐ様に待っていた褐色肌の女性が、玄関脇にある小部屋のドアを開けた。屋台で使う様な丸椅子が数脚有る、使用人待機室みたいな部屋だった。女性は使用人らしい格好ではないが、物腰がメイドなのでメイドなのだろう。
「銃の本体を置くんだから、弾はそのままで良いよな? コートのあちこちに仕込んであるから、出すのも仕舞うのも面倒なんだが」
長銃と拳銃を椅子の上に置きながら訊くグレイ。
女性は、玄関付近を守っている男性を手招きで呼んで相談した。
「ええと、そうですね。銃と弾を一緒に置く方が危険でしょうから、弾はそのままで結構です」
テルラは大きなリュックを、レイは腰の剣をその部屋に置いた。
グレイは三丁の銃を持っているはずだが、椅子の上には二丁の銃しかない。
「こちらです」
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そこに居たのは、二人の若い女だった。
正面の椅子に座っているのは、ほどほどに豪華なドレスを着ている女。二十代中頃で、見る人によってはレイより美人に感じるかも知れない。髪の色は朝日の様に眩しいオレンジ色で、その珍しい髪色が魔力の高さを物語っている。彼女が村長だろうか。
「――お前は!」
ソファーに座っているもう一人の女が問題だった。
魔法使いのローブを羽織っていて、片足が無い。
その顔と足を見てグレイが目を剥いた。
「久しぶりね、テルラくん。レイ様。そして、グレイちゃん」
そいつは、ハイタッチ王子と共に居て、グレイが足を撃った、あの女魔法使いだった。
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