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第二十六話

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 リビラーナ王国は王都より北東の位置に有り、直線なら港から王都までとほぼ同じ距離の位置なんだそうだ。
 ただし街道の様に整備された歩き易い道は無いとの事なので、想定している倍の食料を準備した。
「出発は明日の早朝です。ちゃんとした男武将の護衛を付けると言われましたが、折角ミマルンと仲良くなれたので、彼女が良いと伝えました。きっと彼女が道案内をしてくれるでしょう」
 テルラが言った通り、翌朝の夜明けと共にミマルンが宿に来た。
 出発の準備が整っているテルラ達と合流する。
「テルラのご指名により、再び同行する事になりました。宜しくお願い致します」
 笑顔で握手を求めるミマルン。
 それを受けて握手したテルラは苦笑いする。
「ルロンドさんとラカラさんがご一緒なのは想定内ですが、ちょっと大人数過ぎませんか?」
 三人部隊の他にも七人の男性が居て、テルラ達に無言の礼をした。帯剣している者が二人居るが、全員普段着で遠距離行軍用のリュックを背負っていた。鎧で武装しているのはルロンドだけだ。
「えっと、女だらけだと心配だと言う事で、初めて部下を付けられました。10人部隊になりましたが、一時的な人事なのでお気になさらす」
 不本意だからか、ミマルンは苦笑した。
 金髪女騎士のルロンドが生真面目な口調で状況の補足をする。
「向かうのは戦場ではありませんが、魔物の発生源とされている場所ですので、戦力増強は必然かと。エルカノートの聖人様と王女様に万が一が有ってはグラシラドの恥になりますので」
「グラシラド王のご配慮に感謝致しますわ。そちらの準備が整い次第出発しましょう」
 銀色の鎧を身に着けているレイが王族スマイルになると、ミマルンが準備は万端ですと答えた。
 なので、ミマルンの顔パスで北門から出て王都を後にした。
 隊列は、テルラ達はそのままで、先頭にミマルンを加える。
 更にその前にルロンド。
 しんがりも、プリシゥアとグレイの後ろを弓使いのラカラが担当した。
 その他の男達は、テルラパーティを囲む様な円形で布陣した。
「この人数で歩きかぁ」
 大人数で歩幅を合わせなければならないので、歩き難さを感じたカレンがため息交じりの小声で愚痴った。
 それに反応するラカラ。
「ここより北は山道が多く、馬車を使う方が進みが遅くなります。何より車輪の音が野盗を呼んでしまいます。申し訳ありませんが、頑張って歩きましょう」
 エルカノート出身組は警戒し過ぎではないかと思ったが、王都を囲む城壁が見えなくなった直後に野盗に襲われた。敵は三人だけだったが、火球の魔法で遠距離から攻撃された。ルロンドが大剣で火球を叩き落とし、10人部隊が全方位に顔を向ける守りの陣形を取る。
「うわ、もう? 早過ぎない?」
 いつも通り潜在能力で野盗の攻撃力を奪おうと思って額にダブルピースを当てたカレンだったが、それよりも早くラカラの弓が野党の一人の頭を貫いた。
「え?」
 情け容赦無く殺害された野盗を見て驚くエルカノート出身組。
 驚きで竦んでいる間に二人目の野盗の首が風魔法で飛び、護衛の男が投げた剣が最後の野盗の心臓に突き刺さった。10人部隊の男達は全員魔法使いで、帯剣している者も普通に剣を振ったりしない様だ。
「え、えっと? 逮捕したり尋問したりしないんですか?」
 テルラが戸惑いながら訊くと、ミマルンが苦笑した。
「エルカノートの旅ではそうしていましたね。でも、こちらではしません。戦争中である限り、あの手合いは無限に沸きますから。野盗逮捕専門の部隊でなければ、攻撃して来る相手に即反撃するのは常識なんですよ」
 死体を弔わず、放置したまま北上を再開する。
 元海賊であるグレイもグラシラド出身組と同じく平然としていたが、テルラ達エルカノート出身組は、悪党の命の軽さに釈然としない物を感じていた。
 しかし、五回目に野盗に襲われた時、全員がこう思った。
 こんなにも悪人がウヨウヨ居るのなら、いちいち相手にしてたら時間がいくら有っても足りないな、と。
 それ以降、悪人が瞬殺されても平気になった。
「でもまぁ、殺されると分かってても襲って来るくらい、悪事にはうま味が有るんだろうな。分からんでもない」
 元海賊であるグレイの独り言には誰も反応しなかった。
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