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第二十五話

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 エルカノートの港からポーカンカの港に向かう定期船に乗ったテルラ達は、不運にも海賊に狙われてしまった。
 王女であるレイの存在が海賊に知られると取り返しの付かない事になり兼ねないので、海賊船がまだ遠くに居る内に小舟で逃がされた。
 だが、小舟なので遠洋の波に煽られて転覆してしまう。
「私が海に潜り、ひっくり返った船を元に戻すっス! 救命胴衣を着ているレイは、船が流されない様に固定して欲しいっス!」
 波に煽られながら叫んだプリシゥアが、大きく息を吸ってから潜水して行った。
 小舟に乗せられる時に銀の鎧を脱がされ、一人だけ浮き輪付きの皮ベストを着せられたレイが腹を見せている小舟の船首に取り付く。
「あぷぇ、あぷぅ」
 カレンは自分のリュックを守るのに精一杯になっている。レイの鎧が入った袋が縛り付けてあるので今にも沈みそうだ。
「よっこいしょー!」
 イルカが飛び跳ねたのかと思うレベルの勢いで海中から拳を突き上げ、小舟を回転させるプリシゥア。
 レイも身体と腕をひねってサポートし、正常な状態に戻す。
「凄いですわ、プリシゥア! 早速荷物を船に乗せましょう!」
 溺れ掛けているカレンを助けつつ、リュックを船に乗せる。
 その後全員で船のヘリに捕まり、呼吸を整える。
「取り敢えず一息吐きましたわ。――さて、どうやって船に乗り込みましょうか。変に体重を掛けるとまたひっくり返りそうですし」
 そこまで言って、やっと周囲を確認する余裕が出来たレイが青褪める。
「テルラが居ませんわ!」
「ミマルンも居ないっスね」
 プリシゥアも周囲に目を向ける。
波は高いが天気は良いので遠くまで見えるが、さっきまで乗っていた定期船とそれに近付いている海賊船しか見えない。
「定期船がもうあんな遠くにあるっス。海流が思ったより早いっス。そのせいでひっくり返ったのかもっスね」
「探しに行かなければ!」
「うぺぇ……」
 レイは鼻息荒くしているが、カレンは沈む寸前になっていた。小舟に掴まっていなかったら実際に沈んでいただろう。
「探しに行こうにも、どこに居るか分からないっス。同じ海流に乗ってるはずっスから、下手に動かずに流れに身を任せた方が良いっス」
「むむぅ」
 レイは諦めずに周囲を探すが、テルラの金髪もミマルンの黒髪も見えなかった。
「まずカレンを船に乗せるっス。その後、上手くバランスを取って私達も乗るっス。船に乗って視線を高くすればテルラ達を探し易くなるはずっスから」
「そうですわね。では、プリシゥアがそちら側から乗ってくださいまし。わたくしはこちら側で体重を乗せますから」
「了解っス。ほら、カレン。頑張って船に乗るっス」」
「ごめん……泳ぎが得意じゃなくて……」
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