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第二十四話

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「とにかくだ。テルラが一番心配しているのは仲間の行方だろう?」
 一際大きな声を上げたグレイは、真面目な雰囲気で話を進める。
「船長のオペレッタに頼みが有るんだろ? テルラ」
「そうでした。僕達の仲間がこの海で行方不明になっているんです。三人です。探して貰えませんでしょうか、オペレッタさん」
「探す手掛かりは有るんですの?」
「全く有りません。グレイは絶望的と言いましたが、僕はこの付近に居る確率は高いと思います。同時に遭難した僕達がこうして生きているんですから」
 オペレッタはまるでテルラの言葉を無視するかの様に別の話をグレイに振る。
「グレイプニル。貴女、グレイと呼ばれていましたの? なら私もそう呼びますわ」
「好きにしろ。で、返事は?」
「アドバイザーのグレイに質問ですわ。海賊は人助けをしますの?」
「その時の状況次第だ。今回は三人の中にエルカノートの王女が居るから、報奨金目当てで動いてもおかしくはない。さっきも言ったが、一般人では有り得ない出会いは海賊の醍醐味でもある」
「あら。お姫様って、ミマルン様の事ではありませんでしたの?」
「俺はミマルンとは初対面だ。俺としては、エルカノートの王女が居ると思ったから姫が居ると言ったんだ。そいつも元仲間の一人だったから、お姫様を助けるのも海賊の醍醐味と言って船を止めさせたって訳だ。俺の個人的な理由で船を停めさせる様に誘導したのは認める」
 グレイは、半分はテルラに聞かせるために説明臭く言った。
 なので、テルラは不安無く話の行方を見守れた。
「ふむ。グレイにはお世話になっていますから、一度のワガママくらい忘れますわ。では、お姫様を助けに――」
 腕を振り上げ掛けたオペレッタに待てと鋭く言って制止するグレイ。
「海賊は船長のワンマンでも良いが、それは百戦錬磨の有能にだけ許される。オペレッタは新人。海上で死にたくなかったら、船の実情を把握している船員の意見も聞け」
「はーい。シズ、意見を聞かせて頂戴」
 船長に名前を呼ばれたヘッドドレスを着けた女性が頭を下げる。小舟を船の横に固定した後、目立たないところで控えていた。メイド服を着ているが、一人で力仕事をこなしている辺り、只者ではない。
「予定通り、このままエルカノートの港町に向かうなら問題は有りません。しかし行方不明者探しとなると、何日掛かるか予想出来ないでしょう。乗員が二人増えましたので、食料と水が不足するでしょう」
「補給が必要なのね?」
「今日明日見付かったとしても、単純に乗員が更に三人、合計五人増えますので、準備を整えなければ不安です。しかもその内の一人はエルカノートの王女。おもてなしが出来ないのは失礼かと」
「じゃ、補給しに港町に向かう事になりますか。どう? グレイ」
「訊くのが早い。北のエルカノートの港町に向かうのか、それとも南のポーカンカの港町に向かうのか。そこまで考えてから俺に訊くのが船長としての正解だ」
「むむむ。浅慮を叱られるのが一番ストレスですわ。地図を持って来て頂戴、シズ」
「はい」
 船内から一枚の紙を持って来るメイド。口をへの字にして不機嫌そうになってしまっているオペレッタは、それを膝の上に広げた。
「これは長靴の絵ですか?」
 紙を覗いたテルラが首を傾げる。一筆で描かれた長靴の外周に沿って無数の点が有る。脛の辺りにフックの様な出っ張りが有る。
「これは俺の知識で書いた大陸図だ。靴底が南。この出っ張りがポーカンカ半島。黒点が主要な港だ。今、俺達はここに居る」
 出っ張りの上辺りに人差し指を置くグレイ。
「この大陸って長靴みたいな形なんですか」
 ミマルンも地図を見る。
 大陸の北半分と南半分が砂漠で分断されている上に海洋産業が発達していないので、どの国でも大陸図を描く機会が無かった。海上を生活の場としている海賊でないと描けない物だろう。
「あくまで俺のイメージだ。俺の意見を言っても良いか? オペレッタ」
「どうぞ」
「テルラ達が流れ着いた島とこの辺りの海流を考えると、レイ達は南に流されている可能性が高い。だからUターンして小島をチェックしつつ、ポーカンカの港を目指すのが良いと思う。運が良ければ、漁船に救助されてポーカンカの港に着いているかもしれないしな。最終判断は船長だ」
「海賊の先輩の意見を尊重しますわ。これよりオペレッタ号は小島をチェックしつつポーカンカの港を目指しますわ!」
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