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第二十四話

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 遭難三日目。
 歩き出してすぐに自分達がキャンプした焚き火の跡を発見した。
テルラとミマルンが居る場所は、徒歩で半日ちょいくらいで一周出来る程度の無人島である事が判明した。
 人間や肉食獣と言った天敵が居ないので、小動物と鳥の楽園と化していた。
 森のお陰で真水も有る。
 近付くのもはばかられる大きめの犬猫も食べる物に困っていない様子なので、ネズミくらいの小動物も居るかも知れない。
 贅沢を言わなければ永住出来そうだが、重大な目的が有るテルラ達がこの島に詳しくなっても仕方が無いので、林の中の調査はせずに救助を待つ事にした。
 待って待って、この島に流れ着いてから数日が過ぎた。
「……何もしないってのは、とても疲れるんですね」
 焚き火の番をしているテルラが青い水平線を見ながら呟いた。曲刀使いのミマルンは毎日狩りに言っているので忙しいが、焚き火から上る白煙を目立たせる役目のテルラはさすがに元気がしおれて来た。動物や果物が豊富に有って飢えが無いのがせめてもの救いだった。
「ただいま。今日も助けは無しですか」
 獲物を仕留めて帰って来たミマルンの声も疲れている。
「通る船影も無いですね。食べたら移動しましょう」
 朝からのろしを上げ、夕方になったら火種を持って移動する。これがルーティンになっていた。
 最初の二日で船影が全く無い事に気付いたテルラは、海路が近くに無いのではと思った。
 なので、一日ごとにキャンプ地を移動する事にした。テルラ達には風向き等を読む能力や知識が無いので、一か所に留まるより位置による条件を変えた方がより見付けて貰えるのではと考えたのだ。
 成果無しで一周したら次の手を検討する予定になっている。
「森で良い棒を見付けました。これをこうして――」
 ミマルンは、真っ直ぐな2メートルくらいの木の棒の先端にテルラの白シャツを縛り付けた。まるで白旗の様だ。
「船影を見付けたら、これを振ってみたらどうでしょうか。何らかの事故で焚き火が消える事も有るでしょうから、準備をしておかないとと思いまして」
「それは良いアイデアです。振ってみましょう」
 応援旗の様に棒を掲げるテルラ。ちょっと重いが、遠くからでも動きが見えるだろう。
「良い感じですね。では夕飯の準備をしますね」
 満足げに頷いたミマルンは、足元に放り投げていた犬を捌いた。
 腹を満たした後、30分くらい歩いた場所にテントを立てて夜を過ごした。
「行ってきます」
 朝食と水汲みを終えたミマルンが今日の糧を求めて森に入って行く。
 それを見送ったテルラは、焚き木を拾いながら水平線を眺めた。
「……っ!?」
 思わず二度見するテルラ。
 とてもとても遠くで小さいが、待ちに待った船影がそこに有った。
「旗、旗っ!」
 慌てて立ち上がったテルラは、昨日作った旗を思いっ切り振った。焚き火から白煙は上がっているが、救助されたい一心から身体を動かさずにはいられなかった。
「おーい、おーい、助けてくださーい!」
 遠くにある船に声が届くはずは無いと分かっているが、やはり叫ばずにはいられなかった。
 すると、船の進みが止まった。
「おーい、おーい!」
 叫び続けるテルラ。
 止まって見えていたのは、船がこちらに向かって来ていたからだ。
 完全に気付いて貰えている。
「良かった……助かった」
 ある程度近付いたら、船のサイズが分かった。貨物船より小さいが、漁船より大きい。妙だと思ったが、外洋を行く漁船ならあのサイズが常識なのかも知れない。
 叫びながら、旗を振りながらそんな事を考えるテルラ。
 泳ぎが上手な人ならば泳いで行けそうな位置で錨を降ろした船は、小舟を下ろした。
 その小舟が更に近付いて来る。
 小舟に乗っているのは、赤い髪に黒いコートの人間。
 大人ではない小さなシルエット。
 あのコートの形には見覚えが有る。
「まさか、グレイ?」
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