198 / 277
第二十三話
3
しおりを挟む
夜明けと共に小さなテントから起きて来るテルラ。相変わらず身支度はキッチリしている。
数分後にミマルンが大きなテントから出て来て、寝起きそのままのカレンが一歩遅れて出て来た。
火の番をしていたレイは寝坊を許されている。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはよー」
「おはよっス」
気持ち良い晴天で特に注意する事も確認する事も無いので、会話は挨拶だけ。
それぞれが朝の仕事に取り掛かる。
テルラは自分用のテントの片付け。
ミマルンは朝食の準備をしているプリシゥアの手伝い。
カレンは女性用のテントを片付けなければならないのだが、まだレイが寝ているため、身支度と荷物の整理を静かにやる。
「ん? 鳥?」
干し肉と野草を煮込んでいる鍋の火力を見ていたミマルンがふと顔を上げると、南西の空に光る物が有った。白い鳥に朝日が反射しているのか。煮込み中は退屈なので、ついついそれをぼんやりと眺めてしまう。
「ん? ……んん?」
キラキラと光を放っている物はこちらに向かって来ている様で、じわじわと大きくなっている。結構な大きさだが、朝日を反射しているせいで良く見えない。
と思っていると、すぐ近くにそれが着地した。
茄子の様な胴体。
短い腕。
たくましい脚。
ワニの様に牙が沢山並んでいる口。
そして、全身金色。
「ど、ドラゴン!?」
ミマルンは勿論、その場に居る全員が立ち上がって身構える。
着地の地響きと仲間の大騒ぎに叩き起こされたレイがテントから飛び出す。
「ゴールドドラゴン? ゴールドグラスの守り神が、なぜここに?」
人間の三倍以上有る体躯の金色ドラゴンがうなり声を上げた。
テルラ達を威嚇しているのか、怖い顔でうなり続ける。
「どどど、どうする? まず攻撃力奪う?」
恐怖で震えるダブルピースを額に当てたカレンの前に立つテルラ。
「待ってください。相手は神様です。こうして人前に出たのは、何か理由が有るはずです」
「理由が有ろうが無かろうが、相手は強大ですわ。この間合いで出方を伺うのは危険かも知れませんわよ」
テルラを庇う位置に立つレイ。いつでも虹色の光線を撃てる様に構える。
プリシゥアも、テルラの隣に立って身構える。何か有れば素早くテルラを抱えて逃げられる様に。
「……」
咆哮がテルラ達を委縮させている事に気付いたドラゴンは、口を閉じて腕を動かし出す。変わらずドラゴンが何をしに来たのかサッパリ分からない。
「――身振りで何かを伝えようとしているみたいに見えますが、動きの法則性が全く掴めませんね」
ドラゴンの動きを警戒しながらその背後に回るミマルン。金色の鱗に包まれた身体に、怪我や汚れ等、不自然な所は無い。ドラゴン自身に何かが起こっている訳ではない様だ。
「どうしたら良いでしょう。地面に文字でも書きましょうか」
「文字が読めるかな。絵なら通じるかな。でも、何の絵を描けば良いのかな」
「貴方が何を言いたいか分かりません、と言う絵でしょうか。さて、どう描きましょうか」
相談を始めた人間達を眺めたドラゴンは、上からいきなりテルラに噛み付いた。
「んな!? テルラッ」
光線を撃とうとしたレイだったが、何も出なかった。
ドラゴンは、テルラを咥えたまま飛び立つ。
そのまま南の方、ゴールドグラスに向かって飛んで行った。
「ギャアアァアアアーーー! デルラアアァァーーー!!」
人間の物とは思えない絶叫と共にドラゴンを追い掛けて行くレイ。
「おかしいっス。私の潜在能力はテルラを完璧に守る事が出来るって奴じゃなかったっスか? 何も出来なかったっス」
「そんな事より、プリシゥア! 二人を追い掛けて!」
ミマルンに背中を押されたプリシゥアは、我に返ると同時に走り出した。鍛えているだけあって足が速い。
「ミマルンも追い掛けて。私は荷物を片付けてから追い掛けるから」
「一人で大丈夫ですか? カレン」
「拳銃を買っておいて良かったよ。正直怖いし不安だけど、この場よりテルラの方が大事だから。行って!」
「お気を付けて!」
カレンと作り掛けの朝食を残し、ミマルンも南に向かって走り出した。
数分後にミマルンが大きなテントから出て来て、寝起きそのままのカレンが一歩遅れて出て来た。
火の番をしていたレイは寝坊を許されている。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはよー」
「おはよっス」
気持ち良い晴天で特に注意する事も確認する事も無いので、会話は挨拶だけ。
それぞれが朝の仕事に取り掛かる。
テルラは自分用のテントの片付け。
ミマルンは朝食の準備をしているプリシゥアの手伝い。
カレンは女性用のテントを片付けなければならないのだが、まだレイが寝ているため、身支度と荷物の整理を静かにやる。
「ん? 鳥?」
干し肉と野草を煮込んでいる鍋の火力を見ていたミマルンがふと顔を上げると、南西の空に光る物が有った。白い鳥に朝日が反射しているのか。煮込み中は退屈なので、ついついそれをぼんやりと眺めてしまう。
「ん? ……んん?」
キラキラと光を放っている物はこちらに向かって来ている様で、じわじわと大きくなっている。結構な大きさだが、朝日を反射しているせいで良く見えない。
と思っていると、すぐ近くにそれが着地した。
茄子の様な胴体。
短い腕。
たくましい脚。
ワニの様に牙が沢山並んでいる口。
そして、全身金色。
「ど、ドラゴン!?」
ミマルンは勿論、その場に居る全員が立ち上がって身構える。
着地の地響きと仲間の大騒ぎに叩き起こされたレイがテントから飛び出す。
「ゴールドドラゴン? ゴールドグラスの守り神が、なぜここに?」
人間の三倍以上有る体躯の金色ドラゴンがうなり声を上げた。
テルラ達を威嚇しているのか、怖い顔でうなり続ける。
「どどど、どうする? まず攻撃力奪う?」
恐怖で震えるダブルピースを額に当てたカレンの前に立つテルラ。
「待ってください。相手は神様です。こうして人前に出たのは、何か理由が有るはずです」
「理由が有ろうが無かろうが、相手は強大ですわ。この間合いで出方を伺うのは危険かも知れませんわよ」
テルラを庇う位置に立つレイ。いつでも虹色の光線を撃てる様に構える。
プリシゥアも、テルラの隣に立って身構える。何か有れば素早くテルラを抱えて逃げられる様に。
「……」
咆哮がテルラ達を委縮させている事に気付いたドラゴンは、口を閉じて腕を動かし出す。変わらずドラゴンが何をしに来たのかサッパリ分からない。
「――身振りで何かを伝えようとしているみたいに見えますが、動きの法則性が全く掴めませんね」
ドラゴンの動きを警戒しながらその背後に回るミマルン。金色の鱗に包まれた身体に、怪我や汚れ等、不自然な所は無い。ドラゴン自身に何かが起こっている訳ではない様だ。
「どうしたら良いでしょう。地面に文字でも書きましょうか」
「文字が読めるかな。絵なら通じるかな。でも、何の絵を描けば良いのかな」
「貴方が何を言いたいか分かりません、と言う絵でしょうか。さて、どう描きましょうか」
相談を始めた人間達を眺めたドラゴンは、上からいきなりテルラに噛み付いた。
「んな!? テルラッ」
光線を撃とうとしたレイだったが、何も出なかった。
ドラゴンは、テルラを咥えたまま飛び立つ。
そのまま南の方、ゴールドグラスに向かって飛んで行った。
「ギャアアァアアアーーー! デルラアアァァーーー!!」
人間の物とは思えない絶叫と共にドラゴンを追い掛けて行くレイ。
「おかしいっス。私の潜在能力はテルラを完璧に守る事が出来るって奴じゃなかったっスか? 何も出来なかったっス」
「そんな事より、プリシゥア! 二人を追い掛けて!」
ミマルンに背中を押されたプリシゥアは、我に返ると同時に走り出した。鍛えているだけあって足が速い。
「ミマルンも追い掛けて。私は荷物を片付けてから追い掛けるから」
「一人で大丈夫ですか? カレン」
「拳銃を買っておいて良かったよ。正直怖いし不安だけど、この場よりテルラの方が大事だから。行って!」
「お気を付けて!」
カレンと作り掛けの朝食を残し、ミマルンも南に向かって走り出した。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~
乃神レンガ
ファンタジー
謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。
二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。
更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。
それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。
異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。
しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。
国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。
果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。
現在毎日更新中。
※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます
七夕の出逢い
葉野りるは
恋愛
財閥のお嬢様なんていいことないわ。
お見合いから始まる恋もあるのかもしれない。
でも、私は――
道端に咲く花を見つけるような、河原にあるたくさんの石から特別なひとつを見つけるような、そんな恋をしたい。
会社や家柄、そんなものに左右されない確かなもの。
私に与えられたこの狭い世界で、私は見つけることができるかしら?
見つけてもらうのではなく、自分で見つけたい……
■□■□■□■□
これはまだ携帯電話が普及する前の時代、恋を夢見る財閥のお嬢様のお話。
お見合い続きで胃の調子が優れなかったところ、偶然出逢った医師に突然の申し出をされる。
「あなたの胃が治るまで、私が交際相手になりましょう」
そこから始まった偽りの関係は……?
外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
おおぅ、神よ……ここからってマジですか?
夢限
ファンタジー
俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。
人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。
そんな俺は、突如病に倒れ死亡。
次に気が付いたときそこには神様がいた。
どうやら、異世界転生ができるらしい。
よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。
……なんて、思っていた時が、ありました。
なんで、奴隷スタートなんだよ。
最底辺過ぎる。
そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。
それは、新たな俺には名前がない。
そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。
それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。
まぁ、いろいろやってみようと思う。
これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる