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第二十三話

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 夜明けと共に小さなテントから起きて来るテルラ。相変わらず身支度はキッチリしている。
 数分後にミマルンが大きなテントから出て来て、寝起きそのままのカレンが一歩遅れて出て来た。
 火の番をしていたレイは寝坊を許されている。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはよー」
「おはよっス」
 気持ち良い晴天で特に注意する事も確認する事も無いので、会話は挨拶だけ。
 それぞれが朝の仕事に取り掛かる。
 テルラは自分用のテントの片付け。
 ミマルンは朝食の準備をしているプリシゥアの手伝い。
 カレンは女性用のテントを片付けなければならないのだが、まだレイが寝ているため、身支度と荷物の整理を静かにやる。
「ん? 鳥?」
 干し肉と野草を煮込んでいる鍋の火力を見ていたミマルンがふと顔を上げると、南西の空に光る物が有った。白い鳥に朝日が反射しているのか。煮込み中は退屈なので、ついついそれをぼんやりと眺めてしまう。
「ん? ……んん?」
 キラキラと光を放っている物はこちらに向かって来ている様で、じわじわと大きくなっている。結構な大きさだが、朝日を反射しているせいで良く見えない。
 と思っていると、すぐ近くにそれが着地した。
 茄子の様な胴体。
 短い腕。
 たくましい脚。
 ワニの様に牙が沢山並んでいる口。
 そして、全身金色。
「ど、ドラゴン!?」
 ミマルンは勿論、その場に居る全員が立ち上がって身構える。
 着地の地響きと仲間の大騒ぎに叩き起こされたレイがテントから飛び出す。
「ゴールドドラゴン? ゴールドグラスの守り神が、なぜここに?」
 人間の三倍以上有る体躯の金色ドラゴンがうなり声を上げた。
 テルラ達を威嚇しているのか、怖い顔でうなり続ける。
「どどど、どうする? まず攻撃力奪う?」
 恐怖で震えるダブルピースを額に当てたカレンの前に立つテルラ。
「待ってください。相手は神様です。こうして人前に出たのは、何か理由が有るはずです」
「理由が有ろうが無かろうが、相手は強大ですわ。この間合いで出方を伺うのは危険かも知れませんわよ」
 テルラを庇う位置に立つレイ。いつでも虹色の光線を撃てる様に構える。
 プリシゥアも、テルラの隣に立って身構える。何か有れば素早くテルラを抱えて逃げられる様に。
「……」
 咆哮がテルラ達を委縮させている事に気付いたドラゴンは、口を閉じて腕を動かし出す。変わらずドラゴンが何をしに来たのかサッパリ分からない。
「――身振りで何かを伝えようとしているみたいに見えますが、動きの法則性が全く掴めませんね」
 ドラゴンの動きを警戒しながらその背後に回るミマルン。金色の鱗に包まれた身体に、怪我や汚れ等、不自然な所は無い。ドラゴン自身に何かが起こっている訳ではない様だ。
「どうしたら良いでしょう。地面に文字でも書きましょうか」
「文字が読めるかな。絵なら通じるかな。でも、何の絵を描けば良いのかな」
「貴方が何を言いたいか分かりません、と言う絵でしょうか。さて、どう描きましょうか」
 相談を始めた人間達を眺めたドラゴンは、上からいきなりテルラに噛み付いた。
「んな!? テルラッ」
 光線を撃とうとしたレイだったが、何も出なかった。
 ドラゴンは、テルラを咥えたまま飛び立つ。
 そのまま南の方、ゴールドグラスに向かって飛んで行った。
「ギャアアァアアアーーー! デルラアアァァーーー!!」
 人間の物とは思えない絶叫と共にドラゴンを追い掛けて行くレイ。
「おかしいっス。私の潜在能力はテルラを完璧に守る事が出来るって奴じゃなかったっスか? 何も出来なかったっス」
「そんな事より、プリシゥア! 二人を追い掛けて!」
 ミマルンに背中を押されたプリシゥアは、我に返ると同時に走り出した。鍛えているだけあって足が速い。
「ミマルンも追い掛けて。私は荷物を片付けてから追い掛けるから」
「一人で大丈夫ですか? カレン」
「拳銃を買っておいて良かったよ。正直怖いし不安だけど、この場よりテルラの方が大事だから。行って!」
「お気を付けて!」
 カレンと作り掛けの朝食を残し、ミマルンも南に向かって走り出した。
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