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第二十一話

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 崩れた木製の壁から大量のネズミが溢れ出た。
 ドミノ崩しの様に木の板が地面に落ち、壁の損壊が広がって行く。
 それに並行してネズミの量が増え、地面がネズミ色に染まる。
 街の中からではなく壁の中からネズミが沸いている様に見えたが、今ではもうどっちからでも関係ないくらいの大群になっている。
「ギャーッ!キモイキモイ! って言うか、明らかにこっちに向かって来てない? ヤバくない?」
 カレンはパニックになりながらも自分達の食料を気にした。
 最初は四方八方に散っていたネズミ達だったが、次第にキャンプに群がり始めている。キャンプ場全体で朝食の準備をしている真っ最中なので、良い匂い釣られたのだろう。
 悲鳴や怒号でパニックになり、寝ていた人も騒ぎに起こされて動き出す。
 パニックが連鎖して行き、避難民達が逃げ出したりネズミに魔法を撃ったり剣を振ったりしている。
 ハチの巣を突いた様な騒ぎだ。
「この量です、きっとエサが足りなくて飢えているんでしょう。カレン、被害が出る前にネズミを無力化してください」
「人も齧るって言ってたもんね。――でも、どこに向かって撃てば」
 額にダブルピースを当てたカレンが困惑する。量が多過ぎて、360度全てが対象だ。
「とにかく街の人を優先に!」
「分かった!」
 カレンの光線は争わなければ無害なので、遠慮無く人を巻き込んでネズミを照らす。
 キャンプの端に居るテルラ達にもネズミが襲って来た。
「わたくしも戦いますわ!」
 かなりピンチなので、テルラに危険が迫らないと撃てない虹色光線が乱射出来るレイ。剣で小さいネズミを倒すのは困難だが、どんなに撃っても疲れない虹色光線なら容易に退治出来る。
「おおっと、危ないですわ。向きに気を付けないと戦っている兵士っぽい方々を巻き込んでしまいますわ」
 状況のせいでかなり強力になっていて、軽く撃つだけで何百匹ものネズミが蒸発している。水平に薙ぎ払えばかなり有効な攻撃手段なのに、街の人が邪魔でそれが出来ない、とヤキモキする。
 プリシゥアとミマルンは、パーティと旅の荷物を守るために拳と曲刀でネズミを退治する。すでに地面が完全に隠れるくらいになっているので、雑に攻撃しても簡単に潰せた。しかし、そうやって数匹ずつ潰したところで、わずかな効果も無い様に感じた。とにかく数が多過ぎる。
「居ました! 不死の魔物です! あそこです!」
 指の輪を左目に当ているテルラが指を差す。
「どちらですの? あちらですわね! では――いえ、撃てませんわ!」
 虹色光線を撃とうとしたレイだったが、その先には街が有る。瞬間的な判断なので雑な予想だが、今の威力で撃つと街を貫通しながら縦断し、多数の家屋が半壊以上の被害を被る。
 ネズミは小さいので下方向に向けたらどうかと考えたが、不死の魔物の正確な位置を探れないレイが余計な事をすると、地面を削った粉塵で目標を吹き飛ばしてしまうかも知れない。
「撃ってください、レイ! 街はほぼ無人だそうですから、人的被害は出ないはずです!」
「しかし、建物が。民の帰る場所が!」
「これだけ増える魔物を放置する方がよほどいけません! ここで増殖を止めなければ、大陸全土を飲み込む事態になりかねません! 他の街に逃げられたらおしまいです! 今のうちに!」
「ええい、仕方がありませんわ!」
 レイは虹色の光線を地面と平行に撃った。不死の魔物を逃がしたら破壊損になるので、どうしても太めの光線を水平にしなければならなかった。
 朝日より眩しい光が街を横断する。
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