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第二十話

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 エルカノート王は高圧的に言う。
「レインボー達が活躍してくれたお陰で魔物退治の方法が確立され、数は確定していないが、少なくても20匹以上の不死の魔物が退治されている。各地の騎士兵士ハンターが頑張っているからだ。なので、もう王女が出張る必要は無い」
「退治された不死の魔物の数が不確定なのは、テルラの左目で見ていないからですわよね。ならば、パーティの解散は不利益しかありませんわ」
 娘の反論を予想していたのか、エルカノート王は冷静に続ける。
「この話は大聖堂にも伝えてあり、返事も貰っている。テルラ君はレイの判断に任せると言っている」
「まぁ、テルラはそう言うでしょうね。テルラ本人はガーネットの左目が有るので、旅は止めないですわよね?」
「そこまでは聞いていない。要請すれば返答が有るだろうが、それはもうレインボーには関係無い事だ」
 他の王族が居るのでレイは笑顔のままだが、兄のヴィンセントとカレンだけはレイがイラ付いている事に気付いた。
 18歳になった王女らしい声で反論を諦めないレイ。
「しかしテルラパーティには不死の魔物の首が落とせる剣士が必要です。それはわたくしですわ。なので、わたくしは旅を止めるつもりはありませんわ」
「レインボー。お前は今日で成人したのだ。しかも正式に王位継承権第二位となったのだ。明日からは女王となる勉強をしっかりとして、その知識でヴィンセントを助けなければならない」
「お父様。お言葉ですが――」
「レインボー、ちょっと待て。皆様お疲れでしょうから、これで解散としないか?」
 兄にそう言われたレイは、笑顔で立ち上がった。
「そうですわね。――本日はわたくしのお誕生日を祝福してくださり、心より感謝いたしますわ。お部屋を準備させておりますので、今夜はゆっくりとお休みください」
 唐突で失礼気味だったが、全員空気を読んでこの場を辞して行った。
 カレンは、他国の王族達が全員退室してからヴィンセントに耳打ちした。
「王子様。この後大丈夫ですか? 私も残りましょうか?」
「大丈夫だよ。どうせ結果はレインボーの勝ちで見えてるから。君もお城に泊まってくれ。神様と同室だから、お世話をお願いするよ。君達は夕飯がまだだろうから、後で部屋に運ばせる。じゃ」
 カレンとネモも部屋を追い出された。ドアが閉まる直前、自分が抜けると戦力が僧兵一人になるので家出してでもテルラに付いて行くと言う言葉が聞こえた。
「あの調子なら心配無いか。お城の夕飯楽しみだね」
「そうだな。――錬金術の本の事だが、カレンから10メートル以上離れた状態で24時間経ったら消滅する様にする。王族達にバラしたからな、安全装置だ」
「じゃ、失くしたら消えちゃうの?」
「うっかり落としたりしない様にな。この世界の女神からの要請でもある。カレンの死後も残るのが不安なんだとさ。安全装置を付けるから、カレン以外が触ったら呪うってのは無しになった。が、王族達には呪いは有るって事にしておけ。その方が面倒が無くて良いだろう」
「分かった」
「そんな訳で、後でちょっと貸せ」
「はーい」
 軽い調子で返事をしたカレンは、本が入った鞄を預けたメイドを探した。そのメイドはすぐそこに居て、恭しく肩掛け鞄を返してくれた。
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