さればこそ無敵のルーメン

宗園やや

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第十九話

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 肌が褐色な女性が目を開けた。簡単なベッドに寝かされ、薄い毛布を掛けられている。
「お目覚めね。言葉は分かる?」
 ドア付近の椅子に座っていた薄い桃色の鎧を着た女騎士が、ゆっくりと歩いてベッドの脇に来た。
 けだるそうに上半身を起こした褐色女性は、薄い部屋着に着替えさせられている事に驚いて周囲を見渡した。石壁の狭い部屋の隅で山積みになっている自分の荷物を見て表情の強張りを解く。
「言葉は分かる? 声を出せる?」
 再び訊かれたので、褐色女性は頷いた。硬そうな質感の長い黒髪が揺れる。
「難しい言葉でなければ、分かります」
「私はベリリム・クラク・アブレイド。この街の勇者であり、正式な騎士でもあります。貴女を着替えさせたのは、男性の門番達ではなく、貴女と同じ女の私がやった事ですのでご安心を」
 水が半分ほど入っているコップが差し出されたので、褐色女性はそれを受け取った。喉が渇いていたのか、警戒する事無く一気に飲み干す。
「美味しい……。ありがとう」
「ここはカミナミアの街を守る門内に設けられた、客人待機所よ。貴女はここがカミナミナかと訊いた後に気絶したと聞いていますが?」
 自分の目的を思い出したのか、褐色女性は居住まいを正して表情を引き締める。緊張のせいか、最初の一音をどもった。
「わ、私はミマルン・ペペ・グラシラド。砂漠を超え、グラシラド国からやって来ました」
「無知で失礼。国名と同じ苗字と言う事は、貴女様はもしや王族で?」
「はい。七人兄弟の末っ子、第三王女なので、王族の中では身分が低いですが」
「王女様が、なぜお一人でこんな街に?」
「エルカノートが魔物を根絶する方法を確立したと言う噂が我が国にも届き、グラシラド王である父から詳細を調べて来いとの勅命を賜ったのです」
 凛として言った後、褐色の顔を床に向けるミマルン。
「しかし、魔物発生の元凶であるリビラーナ王国はお隣の国なので、国境守備に兵の大半を割かねばならず、私に付ける護衛は無い、と言われ……」
「それでお一人で」
「はい……」
「外交を王女に任せるのは道理ですが、護衛無しはいささか。失礼ながら、その様な事をなされては、グラシラド国と貴国に属する騎士兵士の評価が下がります。私は騎士でありますから、死罪になろうとも王女を一人で異国に出す事をよしとしません」
「護衛は居ました。一人旅の準備としてハンター資格を取っている最中、一人の侍女が荷物持ちに名乗り出てくれたんです。王の許可をあえて取りませんでしたが、周囲の反対も無かったので、出発は二人旅でした。しかし過酷な砂漠越えに耐え切れず、彼女は砂漠で永遠の眠りに就いてしまいました」
 褐色女性は姿勢を変え、ベッドを椅子の様にして座る姿勢になる。
「王が私を冷遇する理由はハッキリと存在しますが、軽々しく口外する様な内容ではございませんので……」
「左様でございますか。では、無理にはお聞きしません」
「ともかく、彼女のお陰で私は無事に砂漠を超えられ、エルカノート王都キングライズに到着しました。そこで魔物の根絶を目指しているレインボー姫はカミナミアに拠点を移したと聞き、こうして参った次第なのです。で、レインボー姫はどちらに?」
「残念ながら、王女は何週間も前に魔物退治の旅に行ってしまわれました。ご帰還の日時は不明です。旅先での状況に左右される旅ですので」
「そ、そんな……。ここにも居られないとなったら、私はどうすれば……追い掛ける? それとも、うぅ……めまいが……」
 ミマルン王女は、長旅の疲労が祟って再び気を失った。
 力の抜けた身体をとっさに支えたベリリムは、褐色女性の頭を枕に乗せた。
「余程困難な旅をして来られたのだろう。事は魔物退治関連なので、レインボー姫にお目通り願っても良さそうだ」
 異国の王女に同情したベリリムは、長い黒髪が絡まない様に横に流してから、そっと毛布を掛けてあげた。
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