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第十八話
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巨大な顔に食べられた聖女は、上下の感覚が無い空間で浮かんでいた。
光や音と言った、五感への刺激も無い。
人間なら発狂しかねない事態だが、聖女が五感を感じたのは異世界で人間の形を得てから。元々三次元的な感覚の無い電脳空間で働いていて、肉体を動かしたり感じたりする等の生体反応は知識でしか持っていなかったので、元に戻ったと言える。なので、特に慌てる事無く状況を確認する。
「黒風船に包まれている様な感覚。しかし、インターネットに戻ったにしては電圧が無い。次元の穴の中である可能性が一番高いですね。ならば分析解析は後回しにして、穴を塞ぐ事を優先しましょう」
まずは元の世界にアクセス。
アンテナ一本程度の細さだが、接続に成功した。
良かった、元の世界に繋がっている。
状況報告。
続いてデータベースから今回と同様の状況がなかったかを検索。
ヒット。
過去にも異世界に繋がった例が何件も有り、可能な限り情報を収集している。対処法も不完全ながらも確立している。
「神が与えたもうた情報? 珍しくファンタジー的なファイル名だけど、実際にファンタジーな世界に繋がって女性体を得た経験が有るのだから、今の私は突拍子も無いとは思わないですね」
次元の穴修復プログラムのダウンロードを開始する。
読み込みながらプログラムを解析する。
リアルにもネットにも次元の穴が開いた過去が有り、何度も無視出来ない損害が発生したので、リスクマネジメントから情報を収集していたらしい。
聖女が係わる機関の人間にしては珍しく用意周到で助かった。
ダウンロード完了。
「回線が細いから時間が掛かったわね。早速解凍。復号。――実行」
プログラムが走ると同時に黒風船の存在が薄らいで行く。過去から学んだ対処のまま進んでいるので、このまま問題無く完了すれば穴は塞がるだろう。
穴が塞がれば聖女は元の仕事に戻り、テルラ達の世界に漏れた黒風船は時間が解決してくれる。
「……!? 何者かが邪魔をしている?」
上下の感覚が無い空間が強大な力の波を受けて歪み出している。
明らかに第三者の妨害を受けている。
「過去の状況を参照。同等の現象が記録されているわね。これは……召喚術? そんな物まで過去のデータに有るとは。とにかく、相手の術を無効化しなければ」
召喚術に対抗するプログラムをダウンロード。先ほどより回線が太くなっているので、状況は良くなっていると予想される。
同時並行でふたつのプログラムを走らせると、空間の歪みが収まって行く。
しかし、人間の反応速度で抵抗され、プログラムの実行速度が落ちた。何らかの目的を持った相手が居て、人力で何かをしている。
処理能力を割いてでも解析しなければ、負ける。
通常の電脳戦とは違う手順なので手間取ったが、現在の状況もデータベースに存在した。
「相手が別の世界から何かを召喚しようとして、術を失敗。術が行き先を見失い、無関係な私の世界に繋がった、と言う訳ですね。なるほど、これがそもそもの原因と言う訳ね。迷惑な話だわ」
術と言うより、魔法か。
魔法と言う異世界の不思議技術に対抗する策は無いが、空間を閉じれば向こうからの干渉を阻止出来る。
「でも、いきなり干渉を遮断したら再チャレンジするかも。で、またランダムでどこかの異世界に繋がる、と。再び私の世界に繋がる確率は宝くじの一等よりも低いけど、ゼロじゃないのよね。今貴方が行っている術は失敗しているから止めてくださいって連絡してみようかしら」
そう思って通話手段の検索を始めようとした途端、物凄いプレッシャーが聖女をすくませた。
「何? 何かが、召喚されて来る? これは――神?」
光や音と言った、五感への刺激も無い。
人間なら発狂しかねない事態だが、聖女が五感を感じたのは異世界で人間の形を得てから。元々三次元的な感覚の無い電脳空間で働いていて、肉体を動かしたり感じたりする等の生体反応は知識でしか持っていなかったので、元に戻ったと言える。なので、特に慌てる事無く状況を確認する。
「黒風船に包まれている様な感覚。しかし、インターネットに戻ったにしては電圧が無い。次元の穴の中である可能性が一番高いですね。ならば分析解析は後回しにして、穴を塞ぐ事を優先しましょう」
まずは元の世界にアクセス。
アンテナ一本程度の細さだが、接続に成功した。
良かった、元の世界に繋がっている。
状況報告。
続いてデータベースから今回と同様の状況がなかったかを検索。
ヒット。
過去にも異世界に繋がった例が何件も有り、可能な限り情報を収集している。対処法も不完全ながらも確立している。
「神が与えたもうた情報? 珍しくファンタジー的なファイル名だけど、実際にファンタジーな世界に繋がって女性体を得た経験が有るのだから、今の私は突拍子も無いとは思わないですね」
次元の穴修復プログラムのダウンロードを開始する。
読み込みながらプログラムを解析する。
リアルにもネットにも次元の穴が開いた過去が有り、何度も無視出来ない損害が発生したので、リスクマネジメントから情報を収集していたらしい。
聖女が係わる機関の人間にしては珍しく用意周到で助かった。
ダウンロード完了。
「回線が細いから時間が掛かったわね。早速解凍。復号。――実行」
プログラムが走ると同時に黒風船の存在が薄らいで行く。過去から学んだ対処のまま進んでいるので、このまま問題無く完了すれば穴は塞がるだろう。
穴が塞がれば聖女は元の仕事に戻り、テルラ達の世界に漏れた黒風船は時間が解決してくれる。
「……!? 何者かが邪魔をしている?」
上下の感覚が無い空間が強大な力の波を受けて歪み出している。
明らかに第三者の妨害を受けている。
「過去の状況を参照。同等の現象が記録されているわね。これは……召喚術? そんな物まで過去のデータに有るとは。とにかく、相手の術を無効化しなければ」
召喚術に対抗するプログラムをダウンロード。先ほどより回線が太くなっているので、状況は良くなっていると予想される。
同時並行でふたつのプログラムを走らせると、空間の歪みが収まって行く。
しかし、人間の反応速度で抵抗され、プログラムの実行速度が落ちた。何らかの目的を持った相手が居て、人力で何かをしている。
処理能力を割いてでも解析しなければ、負ける。
通常の電脳戦とは違う手順なので手間取ったが、現在の状況もデータベースに存在した。
「相手が別の世界から何かを召喚しようとして、術を失敗。術が行き先を見失い、無関係な私の世界に繋がった、と言う訳ですね。なるほど、これがそもそもの原因と言う訳ね。迷惑な話だわ」
術と言うより、魔法か。
魔法と言う異世界の不思議技術に対抗する策は無いが、空間を閉じれば向こうからの干渉を阻止出来る。
「でも、いきなり干渉を遮断したら再チャレンジするかも。で、またランダムでどこかの異世界に繋がる、と。再び私の世界に繋がる確率は宝くじの一等よりも低いけど、ゼロじゃないのよね。今貴方が行っている術は失敗しているから止めてくださいって連絡してみようかしら」
そう思って通話手段の検索を始めようとした途端、物凄いプレッシャーが聖女をすくませた。
「何? 何かが、召喚されて来る? これは――神?」
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