上 下
94 / 277
第十一話

5

しおりを挟む
 女魔法使いの話を聞き終えた一行は、病院近くの定食屋でお昼にした。ここでのお代は軍が持ってくれると言われたので、好みに拘らずに量を重視したメニューを注文した。
「フフ。レイとカレンもいっぱしの旅人になって来たじゃないか」
 グレイが冷やかすと、レイは澄ました顔でお冷を飲んだ。
「城の外でお行儀良くしてもお腹は膨れない事を、さすがに学びましたからね。旅先では質より量です」
「だよねー」
 カレンが同意して笑うと、他のみんなも笑った。
「さて。国境に行くかこのまま折り返し帰るかの判断は、我々に任されました。ハンターとして相談を始めましょう。何か意見が有る人は居ますか?」
 テルラが表情を引き締めて言ったので、仲間達も仕事モードに入った。
「俺の意見は一貫している。金になるなら行く。待っているのは魔物の大群と言う話だから、報酬は破格になるだろう。上手く行けば大儲けだから、危険でも行きたい」
 と、グレイ。
 次に口を開くのはレイ。
「我が国の事を考えるのなら、魔物退治よりも先に王子をなんとかしないといけないと思います。さきほどジェイルク様とお話しましたが、わたくし達が編み出した不死の魔物を退治する方法を試す準備が整っているとの事です。このふたつの事から、わたくしは無理に国境越えをする必要は無いと思いますわ」
「カレンとプリシゥアはどうですか?」
 テルラが話を振ると、注文していた定食が運ばれて来た。
 人数分の食事がテーブルに並ぶのを待ち、店員が去って行くのを見ながら応えるカレン。
「うーん、そうだなぁ。あの魔法使いがした『彼女』の話には同情するよ。王子がやってる行動も、事情を知ったら分からなくもない。でも王子は人を平気で殺してるって話じゃない? だから、レイと同じく王子の方を何とかしないとって思う。ただ、それはハンターが心配する事かな」
「魔法使いの話は王子が仕込んだ嘘で罠の可能性も有るっスから、王子は隣国に任せてこのまま帰るのが安全だと思うっス。でも、不死の魔物を確認しないで帰ったら女神に失望されるかも知れないっスから、現地の様子を見るのも必要かなって思うっス」
「確かにプリシゥアの言う通りですね。女神ティングミア様はご不在らしいですが、だからこそ妹のオグビア様が我々をご覧になっている可能性は有ります。さすが僧兵のプリシゥアは信仰心に篤いですね」
 テルラが褒めると、プリシゥアは照れ隠しにフォークを持った。
「いやぁ、信徒として当然っス。で、テルラはどう考えてるっスか?」
「僕もグレイとは別の方向で一貫しています。不死の魔物が居る可能性が有るのなら、左目で見て確認します。それが僕の役目ですから。――では、全員の意見を聞いたところで、リーダーとして、これからどうするかを考えます」
 一旦目を瞑って思考を巡らせたテルラは、頷いてから口を開く。
「みなさんの意見を纏めると、隣国の要塞が見える地点まで行く事になりますね。王子をなんとかしないといけないと言うレイの発言も、王子が関わっている恐れが有る現場に行かないとどうにも出来ませんからね。僕のガーネットの左目で要塞を見れば潜在能力を持った存在を確認出来ますから、王子がまだそこに居るなら見えるかも知れません」
 レイを見るテルラ。
 銀髪美女は無言で頷く。
「王子と不死の魔物の存在を確認した後にどう動くかは、現場の状況を見てからでしか判断出来ないと思います。――どうですか? みなさん」
「異議無し」
 カレンが右手を上げると、他の仲間も片手を上げて賛同した。
「では、援軍に便乗して国境の街まで行きましょう。話が纏まったところで、いただきましょう」
「いただきます」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 事故で死んで異世界に転生した。 十年後に親によって俺、テオは奴隷商に売られた。  三年後、奴隷商で売れ残った俺は廃棄処分と称されて魔物がひしめく『魔の森』に捨てられてしまう。  強力な魔物が日夜縄張り争いをする中、俺も生き抜くために神様から貰った転生特典の【重力】を使って魔物を倒してレベルを上げる日々。  そして五年後、ラスボスらしき美女、エイシアスを仲間にして、レベルがカンスト俺たちは森を出ることに。  色々と不幸に遇った主人公が、自由気ままに世界を旅して貴族とか王族とか絡んでくるが暴力と脅しで解決してしまう! 「自由ってのは、力で手に入れるものだろ? だから俺は遠慮しない」  運命に裏切られた少年が、暴力と脅迫で世界をねじ伏せる! 不遇から始まる、最強無双の異世界冒険譚! ◇9/25 HOTランキング(男性向け)1位 ◇9/26 ファンタジー4位 ◇月間ファンタジー30位

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友
ファンタジー
 サクヤは目が覚めると森の中にいた。  しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。  虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。  歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。  それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。 9/28~10/6 までHOTランキング1位! 5/22に2巻が発売します! それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。

国外追放されたい乙女ゲームの悪役令嬢、聖女を超えた魔力のせいでヒロインより溺愛されて困まっています。

白藍まこと
ファンタジー
 わたしは乙女ゲームの悪役令嬢ロゼ・ヴァンリエッタに転生してしまう。  ロゼはその悪役ムーブで最終的には国外追放されてしまう主人公(ヒロイン)の咬ませ犬だ。  それはまずい。  原作ルートを回避してモブ令嬢として慎ましく……する必要ないか?  大人しく国外追放されて自由気ままなスローライフ送ればいいんじゃない?  なーんだ簡単じゃん、原作通りにするだけだもん。  一人でも生きていけるように魔術の鍛錬だけしとくかな。  ……あれ?  皆さんから妙に好かれている気がする。なぜ。

七夕の出逢い

葉野りるは
恋愛
財閥のお嬢様なんていいことないわ。 お見合いから始まる恋もあるのかもしれない。 でも、私は―― 道端に咲く花を見つけるような、河原にあるたくさんの石から特別なひとつを見つけるような、そんな恋をしたい。 会社や家柄、そんなものに左右されない確かなもの。 私に与えられたこの狭い世界で、私は見つけることができるかしら? 見つけてもらうのではなく、自分で見つけたい…… ■□■□■□■□ これはまだ携帯電話が普及する前の時代、恋を夢見る財閥のお嬢様のお話。 お見合い続きで胃の調子が優れなかったところ、偶然出逢った医師に突然の申し出をされる。 「あなたの胃が治るまで、私が交際相手になりましょう」 そこから始まった偽りの関係は……?

お嬢様として異世界で暮らすことに!?

松原 透
ファンタジー
 気がつけば奴隷少女になっていた!?  突然の状況に困惑していると、この屋敷の主から奴隷商人の話を勧められる。  奴隷商人になるか、変態貴族に売られるか、その二択を迫られる。  仕事一筋な就労馬鹿の俺は勘違いをしていた。  半年後までに、奴隷商人にとって必要な奴隷魔法を使えること。あの、魔法ってなんですか?  失敗をすれば変態貴族に売られる。少女の体にそんな事は耐えられない。俺は貞操を守るため懸命に魔法や勉学に励む。  だけど……  おっさんだった俺にフリフリスカート!?   ご令嬢のような淑女としての様々なレッスン!? む、無理。  淑女や乙女ってなんだよ。奴隷商人の俺には必要ないだろうが!  この異世界でお嬢様として、何時の日かまったりとした生活は訪れるのだろうか? *カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花
ファンタジー
 15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。  どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。  そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。  しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。 「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」  だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。  受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。  アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。 2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。

処理中です...