上 下
24 / 45

第23話

しおりを挟む
「何が聖女だ……ッ!」

 これじゃあ、まるで死神じゃないか!
 誰も助けられないのに、アタシだけ生き延びろって?
 アタシが聖女なわけないじゃないか!

「セイラ、無事で戻ってください」
「エルムス、あんた……?」
「僕はここに残って、追撃を防ぎます。あなたを守るのは僕の役目ですから」

 聖職者め、嘘をつく気だね?
 最後まで一緒だって言ったじゃないか!

 ダメだ。
 どうすればいい?

 神様、嗚呼……神様!!
 頼む、頼むよ……!

 まともなお祈りの方法なんて知りゃしないけど、助けておくれよ!
 あんた、妹の時だって何にもしてくれなかったじゃないか!

「姐さん!」

 『送り狼』達が馬を回してくる。

「アタシは行かないよ! ここでアタシが芋引くわけにはいかないね」
「姐さん、それこそ無駄死にッス。お頭も伯爵も、姐さんなら後任せられるって、命張るんスから」

 そんなことわかってる。
 でも、大前提が間違ってるのだ。

「人は人が救わないと……」

 老婆の言葉が、脳裏によみがえる。
 神に祈るだけじゃだめだ。
 神とかいうのは、怠惰な奴でどんなに祈ったって願いを叶えてくれやしない。

「何が神だ、クソが! 救わねぇなら、救えるようにしやがれ!」
「あ、姐さん!?」
「聖女だなんだと適当吹かしやがって! やる気がないなら偉そうにすんな! いま、ここで、救って見せろ! ……いや、救わせろ! でねぇと、死んだあとテメェが泣くまでぶん殴ってやる!」

 泣きながら天に向かって怒りを投げつける。
 自分でもひどいやつあたりだと思うが、心の底から出た悪態を止めるすべを、アタシは持たなかった。

『──認定プロセスを開始……完了』

「あ?」

 頭の中で、意味不明な言葉が聞こえた。
 声というよりも、妙に無機質で事務的な感じの……。

『当該個体を聖女に認定。対象を救世システムの端末として定義します』

「は、なんだ、これ。なんなんだよ」
「セイラ?」
「エルムス、ヘンなんだ。アタシの頭ん中で、何かが喋ってる!」

『定義完了。続いて、要請を受諾。承認プロセス開始……承認』

 体が熱くなってくる。
 まるで自分の身体じゃないみたいに、動かしにくい。

『──神罰執行器官、展開。聖女リアクター出力安定。神罰粒子加速開始』

 背中が急に熱くなって、先ほどまでの重さが嘘のように体が軽くなった。
 なんだかよくわからないけど、何かがアタシの中で大きくなっていく。
 不明な部分は多いが、いくつかの事は本能的にわかる。

 声は『神罰』といった。
 アタシが望んだものだ。

 それがアタシの中で、渦巻き、回転し、加速し……螺旋となって今にも溢れ出そうとしている。

『3……2……1……撃てます』
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

わし七十歳定年退職者、十七歳冒険者と魂だけが入れ替わる ~17⇔70は地球でも異世界でも最強です~

天宮暁
ファンタジー
東京郊外で定年後の穏やかな生活を送る元会社員・桜塚猛(さくらづかたける)、70歳。 辺境の街サヴォンに暮らす万年D級冒険者ロイド・クレメンス、17歳。 冒険者ランク昇格をかけて遺跡の奥に踏み込んだロイドは、東京・桜塚家で目を覚ます。 一方、何事もなく眠りについたはずの桜塚猛は、冒険者の街サヴォンの宿屋で目を覚ました。 目覚めた二人は、自分の姿を見て驚愕する。ロイドはまったく見覚えのない老人の身体に、桜塚は若く精悍な冒険者の身体に変わっていたのだ。 何の接点もなかったはずの二人の意識が、世界を跨いで入れ替わってしまったのだ! 七十歳が十七歳に、十七歳が七十歳に―― いきなり常識の通じない「異世界」に放り出された二人の冒険が、今始まる! ※ 異世界、地球側並行で話が進みます。  完結まで毎日更新の予定です。  面白そう!と思ってもらえましたら、ご応援くださいませ。

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...