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スピンオフ(心の物語り)
彼の正体は?
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数週間前…借りてたアパートの家賃も払えず、ついに追い出され行き場をなくした俺は、あの店でデリヘルしながらなんとか食いつないでいた。
入った当初はそこまでしなくてもなんとか生活出来てたけど、今はもう無理だ。
こんなことしてまでなんで俺があの人の借金を背負わなきゃいけないんだ…
デリヘルは店の監視下にないせいか、普段より無理難題を押し付けられる
事もある。
メニューにないことも追加してくるやつもいるし、少しでも抵抗すれば今回みたいに暴力行為に走るやつもたまにいる。
そろそろ限界…
こんなこと続けるくらいなら、もう死にたい―――
暫く床に座ったまま部屋の中を見回すと、置いてあるのは大量のダンボールとベットとソファーとテレビくらいで、後は何も無い。
妙に片付いた真新しいこの部屋には生活感がほぼないのに、一つだけぽつんと置かれた写真立てが気になって立ち上がった。
「えっ…」
4人で写ってるその写真には、俺の知ってる人が二人…
この人…もしかして!?
俺がその写真立てを手に取ったその時…
「あ、まだ居たんじゃん!良かった!」
「これ…」
「ん?どうしたの?…写真…?」
タイミング良くシャワーから出てきた彼が、目をまん丸くして近づいてくる。
「お前…名前は?」
「あ、そういえば自己紹介もしてなかったね。俺、心。君は?」
「しん…じゃあお前が将くんの…?」
「えっ?将吾のこと知ってるの?」
「あぁ、同じ店でバイトしてた事あって…」
「そうなの!?なんだぁっ!じゃあゆっくりしてってよ!」
「いや、そういう訳にはいかないよ…迷惑かけられないっ」
「遠慮しないでよ、将吾の知り合いならもう歓迎しない理由なんかないしっ!」
「俺は…っ、俺はそんなんじゃないから…っ」
俺は…二人みたいにそんないい人間じゃないから。
世話になるなんてとんでもない…
将くんは俺が入ったばかりの頃、世話役として色々教えて貰くれた経緯から仲良くなって、二人で遊んだりとかはした事がなかったけれど、連絡を取るくらいの仲になった。
それからすぐ将くんは突然あの店を辞めた。
けど俺は将くんが好きで、将くんが店を辞めた後もこの世界に疲れた時、連絡を取っては他愛も無い話をして癒されていた。
それこそ今目の前にいる彼の話を聞いたこともあったし、前の店のボーイの扱いの悪さを心配してくれた将くんが、俺に凜さんの店を紹介してくれたりもした。
元々、将くんの学校の先生だった凜さんと付き合い始めたって聞いた時も、自分の事のように嬉しかったけど、俺には縁のない世界なんだって思ってたから、せめて俺の好きな人には幸せであって欲しいと願ってたんだ。
だからあの事件があった時も、俺が凜さんに頼み込んで自らあの役を買って出た。
あんなに優しい凜さんと大好きな将くんを傷つけた男…
俺もそいつが憎かった。
だけど全ての事が終わって、凜さんが部屋に入ってきてあの男に向かっていった時、俺は思ってしまったんだ。
将くんが羨ましいって―――
その後も凜さんは俺に気を使ってくれて優しくて暖かくて、将くんはみんなに愛されてるし、凜さんにもきっとこんな風に大事にされてるんだって思ったら、なんで俺はいつまで経ってもこんなんだって苦しくなって…
どうせ堕ちるならとことん堕ちてやろうなんて思って、凜さんが店を辞めた今、デリヘルの回数もオプションも増やしてかなり無理をしていた所に心くんが俺の前に現れて…
幸せを願ったって叶うはずないし、願うだけ虚しくなるだけなのに、俺にもそれが欲しいって思っちゃったんだ。
でもダメだ…
こんな暖かい人のところにいたら戻れなくなる。
俺は写真立てをそっと置いて、部屋を出ようとした。
「えっ、ちょっと待ってよ…っ!どこ行くつもり?行くとこないんだろ?」
「…っ、ないけど、世話になんかなれない。何とかなるから…」
「何とかって?また体売るつもり!?」
「俺にはそれしかねぇんだよっ!」
「ごめん…君の抱えてる事情は分からないけど…でも、だったらせめて今日だけでもここに泊まっていきなよ…」
「だからそれはっ…」
次の瞬間、俺は暖かい温もりに包み込まれ段々と体の力が抜けていった。
こんな風に抱きしめられたのって何時ぶりだろう…
ダメだとわかっていながらも離れられない自分がいた。
「じゃあさ、俺が君を買う。それならいいでしょ?」
「何言ってんだよっ!意味わかんねぇ…っ」
「君にはどう見えてんのかなぁ?俺さ、こう見えてそんなに真面目な人間じゃないから。欲しいと思ったら手に入れないと気が済まないの…」
「…っ!?…どういう…意味だよ…」
「あぁ、可愛いなぁって思っちゃったから…離したくないなぁとか思ってる」
「何言ってんだよっ…初対面だろ!?それにお前っ、将くんとだって…っ」
「そんなの関係ある?」
「あるだろ…っ!?普通っ!」
「じゃあ俺、普通じゃないのかもね…」
すっと体を離してニコッと口角を上げると、かち合う瞳の奥が謎めいてて少しゾクッとした…
この人…本当に将くんが好きだった人!?
「じゃあ交渉成立ってことでいい?」
「えっ…あ、いや…」
そしてあれよあれよとベットに投げ出され、全裸にさせられた俺の背中は暖かく、柄にもなくドキドキしている。
こんなシチュエーションは日常茶飯事だし、何ならご飯を食べるのと同じくらい普通にしてる事なのに。
それが緊張なのか、はたまた恋愛のそれなのか…
俺にはまだ、わからなかった。
入った当初はそこまでしなくてもなんとか生活出来てたけど、今はもう無理だ。
こんなことしてまでなんで俺があの人の借金を背負わなきゃいけないんだ…
デリヘルは店の監視下にないせいか、普段より無理難題を押し付けられる
事もある。
メニューにないことも追加してくるやつもいるし、少しでも抵抗すれば今回みたいに暴力行為に走るやつもたまにいる。
そろそろ限界…
こんなこと続けるくらいなら、もう死にたい―――
暫く床に座ったまま部屋の中を見回すと、置いてあるのは大量のダンボールとベットとソファーとテレビくらいで、後は何も無い。
妙に片付いた真新しいこの部屋には生活感がほぼないのに、一つだけぽつんと置かれた写真立てが気になって立ち上がった。
「えっ…」
4人で写ってるその写真には、俺の知ってる人が二人…
この人…もしかして!?
俺がその写真立てを手に取ったその時…
「あ、まだ居たんじゃん!良かった!」
「これ…」
「ん?どうしたの?…写真…?」
タイミング良くシャワーから出てきた彼が、目をまん丸くして近づいてくる。
「お前…名前は?」
「あ、そういえば自己紹介もしてなかったね。俺、心。君は?」
「しん…じゃあお前が将くんの…?」
「えっ?将吾のこと知ってるの?」
「あぁ、同じ店でバイトしてた事あって…」
「そうなの!?なんだぁっ!じゃあゆっくりしてってよ!」
「いや、そういう訳にはいかないよ…迷惑かけられないっ」
「遠慮しないでよ、将吾の知り合いならもう歓迎しない理由なんかないしっ!」
「俺は…っ、俺はそんなんじゃないから…っ」
俺は…二人みたいにそんないい人間じゃないから。
世話になるなんてとんでもない…
将くんは俺が入ったばかりの頃、世話役として色々教えて貰くれた経緯から仲良くなって、二人で遊んだりとかはした事がなかったけれど、連絡を取るくらいの仲になった。
それからすぐ将くんは突然あの店を辞めた。
けど俺は将くんが好きで、将くんが店を辞めた後もこの世界に疲れた時、連絡を取っては他愛も無い話をして癒されていた。
それこそ今目の前にいる彼の話を聞いたこともあったし、前の店のボーイの扱いの悪さを心配してくれた将くんが、俺に凜さんの店を紹介してくれたりもした。
元々、将くんの学校の先生だった凜さんと付き合い始めたって聞いた時も、自分の事のように嬉しかったけど、俺には縁のない世界なんだって思ってたから、せめて俺の好きな人には幸せであって欲しいと願ってたんだ。
だからあの事件があった時も、俺が凜さんに頼み込んで自らあの役を買って出た。
あんなに優しい凜さんと大好きな将くんを傷つけた男…
俺もそいつが憎かった。
だけど全ての事が終わって、凜さんが部屋に入ってきてあの男に向かっていった時、俺は思ってしまったんだ。
将くんが羨ましいって―――
その後も凜さんは俺に気を使ってくれて優しくて暖かくて、将くんはみんなに愛されてるし、凜さんにもきっとこんな風に大事にされてるんだって思ったら、なんで俺はいつまで経ってもこんなんだって苦しくなって…
どうせ堕ちるならとことん堕ちてやろうなんて思って、凜さんが店を辞めた今、デリヘルの回数もオプションも増やしてかなり無理をしていた所に心くんが俺の前に現れて…
幸せを願ったって叶うはずないし、願うだけ虚しくなるだけなのに、俺にもそれが欲しいって思っちゃったんだ。
でもダメだ…
こんな暖かい人のところにいたら戻れなくなる。
俺は写真立てをそっと置いて、部屋を出ようとした。
「えっ、ちょっと待ってよ…っ!どこ行くつもり?行くとこないんだろ?」
「…っ、ないけど、世話になんかなれない。何とかなるから…」
「何とかって?また体売るつもり!?」
「俺にはそれしかねぇんだよっ!」
「ごめん…君の抱えてる事情は分からないけど…でも、だったらせめて今日だけでもここに泊まっていきなよ…」
「だからそれはっ…」
次の瞬間、俺は暖かい温もりに包み込まれ段々と体の力が抜けていった。
こんな風に抱きしめられたのって何時ぶりだろう…
ダメだとわかっていながらも離れられない自分がいた。
「じゃあさ、俺が君を買う。それならいいでしょ?」
「何言ってんだよっ!意味わかんねぇ…っ」
「君にはどう見えてんのかなぁ?俺さ、こう見えてそんなに真面目な人間じゃないから。欲しいと思ったら手に入れないと気が済まないの…」
「…っ!?…どういう…意味だよ…」
「あぁ、可愛いなぁって思っちゃったから…離したくないなぁとか思ってる」
「何言ってんだよっ…初対面だろ!?それにお前っ、将くんとだって…っ」
「そんなの関係ある?」
「あるだろ…っ!?普通っ!」
「じゃあ俺、普通じゃないのかもね…」
すっと体を離してニコッと口角を上げると、かち合う瞳の奥が謎めいてて少しゾクッとした…
この人…本当に将くんが好きだった人!?
「じゃあ交渉成立ってことでいい?」
「えっ…あ、いや…」
そしてあれよあれよとベットに投げ出され、全裸にさせられた俺の背中は暖かく、柄にもなくドキドキしている。
こんなシチュエーションは日常茶飯事だし、何ならご飯を食べるのと同じくらい普通にしてる事なのに。
それが緊張なのか、はたまた恋愛のそれなのか…
俺にはまだ、わからなかった。
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