92 / 104
第三章 新生活始めました
りつのモヤモヤと想い出
しおりを挟む
電話を切った後、どうにも落ち着かなくてキッチンに向かい、コーヒーが沸くのを待ってる間にタバコに火をつけ、ため息と一緒に大きく煙を吐き出すと急にある事を思い出した。
タバコを咥えながら、寝室のクローゼットの奥の方にしまってあったダンボール箱を引っ張り出しその中を確認すると、昔保健室で使ってたファイルとか文房具、それこそ将吾が覚えてたキャラクターの玩具とかフィギュアなんかが沢山出てきた。
そして…
「おっ、あったあった」
それは、辞める前にどうしてもこれだけは記念にと、校長に頼み込んで手に入れた将吾達の学年の卒業アルバム。
今の今まですっかり忘れていたが、辞めた直後は仕事もする事も無くてこのアルバムを開いては将吾の事思い出していた。
ペラペラページをめくりながらリビングに移動すると、アルバムの間から数枚の写真が出てきて床に散らばった。
「ん?なんだっけ…これ」
アルバムをテーブルに置いて灰を一旦灰皿に落として、散らばった写真を拾うと、懐かしい顔ぶれが沢山写っていて思わずテンションが上がった。
「うわ、懐かしい…」
この頃、俺が辞めるって噂が広まって、それを聞き付けた馴染みの連中が昼休みに保健室に溜まるようになって、それで記念にって誰かが撮ってくれたものだ。
そこには陽介や湊、涼ちゃんやリオンも写ってて、健太なんてめちゃくちゃクソガキで、随分大人になったなぁなんて感傷に浸りながらコーヒーを取りにキッチンに向かうと、もう一度ソファーに座り直し再び1枚1枚写真を確認してみる。
リオンなんて、あの頃がこれなら今やどんな大人になってるんだろう…
あれから涼ちゃんとはどうなったんだ?
涼ちゃんとも全く連絡取ってないなぁ…
陽介も湊も元気かなぁ…
そして最後の1枚まで見終わった時、俺が一番見たかった姿が写ってないことに気がつく。
あれだけ頻繁に来てたはずの将吾の写真が1枚もない。
将吾を感じたくて引っ張り出したのに、将吾の写真が1枚もないなんて、なんだか現実の寂しさにプラスされて余計に寂しさが増してきた。
そう言えばちょうどこの頃からだ。
将吾が全然保健室に来なくなったの…
入院してた隼人に付きっきりで、俺のところになんて全く顔も出さなくなって、やっぱり俺なんかより隼人の方がいいだろうって、そう思い込んでた。
結局、将吾が保健室に顔を出したのは、俺が退職する日だった。
この日の事は誰にも言ってなかったのに、妙に勘が鋭いというか巡り合わせというか…
将吾に黙って出ていこうとしてたあの時のことを思い出すと、今でもチクリと胸が痛む。
酷い事したよな…俺。
ソファーの背にもたれてふっと寝室に視線を向けると、出しっぱなしのダンボールが目に入り、タバコを消してダンボールの中からお気に入りだったキャラクターをいくつか取り出して、リビングの飾り棚に並べてみる。
「ふふっ…アイツ気付くかな?」
最後、キャラが二つくっついてるアイテムを手に取り、何となく裏っ返してみると、底にマジックで【しょうご♡かのっち】って書いてあって、それは間違いなく将吾の字で俺は嬉しさで胸が苦しくなった。
「はっ、何だこれ。いつ書いたんだ?あいつ…///」
昔の将吾の可愛いイタズラに当時気が付けなかった事に悔しさを覚えつつも、頬は緩みっぱなし…
しかし、こんな可愛いやつを一瞬でも手放した俺はほんとバカなんだと思う。
にしても、思い出を掘り返したせいで将吾に会いたい気持ちが更に増してしまって、この長い夜をどう耐えようかと考える。
あーもう!早く帰ってこいっ!!
仕方なくソファーに沈み天井を眺めると、シーンと静まり返る部屋で将吾がいなかった頃や、出ていった時の事なんかも思い出してしまう。
俺ら、本当に色々あったよなぁ…
その内に段々と瞼が閉じて、片付けもしないままソファーの上で眠ってしまった。
タバコを咥えながら、寝室のクローゼットの奥の方にしまってあったダンボール箱を引っ張り出しその中を確認すると、昔保健室で使ってたファイルとか文房具、それこそ将吾が覚えてたキャラクターの玩具とかフィギュアなんかが沢山出てきた。
そして…
「おっ、あったあった」
それは、辞める前にどうしてもこれだけは記念にと、校長に頼み込んで手に入れた将吾達の学年の卒業アルバム。
今の今まですっかり忘れていたが、辞めた直後は仕事もする事も無くてこのアルバムを開いては将吾の事思い出していた。
ペラペラページをめくりながらリビングに移動すると、アルバムの間から数枚の写真が出てきて床に散らばった。
「ん?なんだっけ…これ」
アルバムをテーブルに置いて灰を一旦灰皿に落として、散らばった写真を拾うと、懐かしい顔ぶれが沢山写っていて思わずテンションが上がった。
「うわ、懐かしい…」
この頃、俺が辞めるって噂が広まって、それを聞き付けた馴染みの連中が昼休みに保健室に溜まるようになって、それで記念にって誰かが撮ってくれたものだ。
そこには陽介や湊、涼ちゃんやリオンも写ってて、健太なんてめちゃくちゃクソガキで、随分大人になったなぁなんて感傷に浸りながらコーヒーを取りにキッチンに向かうと、もう一度ソファーに座り直し再び1枚1枚写真を確認してみる。
リオンなんて、あの頃がこれなら今やどんな大人になってるんだろう…
あれから涼ちゃんとはどうなったんだ?
涼ちゃんとも全く連絡取ってないなぁ…
陽介も湊も元気かなぁ…
そして最後の1枚まで見終わった時、俺が一番見たかった姿が写ってないことに気がつく。
あれだけ頻繁に来てたはずの将吾の写真が1枚もない。
将吾を感じたくて引っ張り出したのに、将吾の写真が1枚もないなんて、なんだか現実の寂しさにプラスされて余計に寂しさが増してきた。
そう言えばちょうどこの頃からだ。
将吾が全然保健室に来なくなったの…
入院してた隼人に付きっきりで、俺のところになんて全く顔も出さなくなって、やっぱり俺なんかより隼人の方がいいだろうって、そう思い込んでた。
結局、将吾が保健室に顔を出したのは、俺が退職する日だった。
この日の事は誰にも言ってなかったのに、妙に勘が鋭いというか巡り合わせというか…
将吾に黙って出ていこうとしてたあの時のことを思い出すと、今でもチクリと胸が痛む。
酷い事したよな…俺。
ソファーの背にもたれてふっと寝室に視線を向けると、出しっぱなしのダンボールが目に入り、タバコを消してダンボールの中からお気に入りだったキャラクターをいくつか取り出して、リビングの飾り棚に並べてみる。
「ふふっ…アイツ気付くかな?」
最後、キャラが二つくっついてるアイテムを手に取り、何となく裏っ返してみると、底にマジックで【しょうご♡かのっち】って書いてあって、それは間違いなく将吾の字で俺は嬉しさで胸が苦しくなった。
「はっ、何だこれ。いつ書いたんだ?あいつ…///」
昔の将吾の可愛いイタズラに当時気が付けなかった事に悔しさを覚えつつも、頬は緩みっぱなし…
しかし、こんな可愛いやつを一瞬でも手放した俺はほんとバカなんだと思う。
にしても、思い出を掘り返したせいで将吾に会いたい気持ちが更に増してしまって、この長い夜をどう耐えようかと考える。
あーもう!早く帰ってこいっ!!
仕方なくソファーに沈み天井を眺めると、シーンと静まり返る部屋で将吾がいなかった頃や、出ていった時の事なんかも思い出してしまう。
俺ら、本当に色々あったよなぁ…
その内に段々と瞼が閉じて、片付けもしないままソファーの上で眠ってしまった。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる