こじらせ男子は一生恋煩い

桜ゆき

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第二章 心との生活

心との日々

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りつから離れて心の家に居候して数日、完全な心変わりとまではいかないけれど、優しくしてくれる心に日に日に気持ちが傾いていった。


「…ぉご…将吾!起きてっ」

「んっ…もぉあさ?」

「今日早いんでしょ?」

「うん…心は?」

「俺も一緒に出るよ」


まだ開ききらない眠たい目を擦りながら、のそっとベットを出ると心が簡単な朝食を用意して待っててくれてる。


「ほらっ、顔洗ってきて。食べよ?」

「ん…」


結局、ここに来てもしてもらってばっかりの俺はそんな自分を変えたくて、ちゃんとした社会人になるべく絶賛頑張っている最中。

いつもなら昼過ぎに起きてバイトに行ってたから、出勤時間が早いと眠くて仕方ない。

でもこういうことにも慣れていかないと…

顔を洗って戻ってくると、テーブルの向かいに座る心が、俺の顔をニヤニヤしながら見つめてくるから恥ずかしくなって目をそらした。


「…なんだよっ」

「え?何が?」

「ニヤニヤしてるから…」

「え?本当?わぁ…無意識だった///」


両手でほっぺを押さえて照れたような顔でチラチラこっちを見てくるから、その可愛さに耐えられなくなる。


「は…っ///早く食べようぜ」

「うん…そうだね///」


美味しい?なんて聞かれて頷けば、心はまた目尻を下げて微笑む。

心はりつより束縛や嫉妬が激しいおかげで、離れていく不安はないし今はすごく落ち着いてる。

食べ終わってのんびり洗面所で歯を磨いてると、心が後ろからぎゅーっと腰にしがみついて頭を首に擦り付けてくるから、くすぐったくて頭をどかそうと必死にもがいた。


「んっ…やめれっ」

「いいじゃんっ、充電~」

「みあけないやんっ」(みがけないじゃん)

「やってあげよっか?」

「…っ、いいっ!」

「はいっ、お水」

「ん…」


水を口に含み、ぺってするのを見られたくなくて鏡越しにあっちいってと手で合図すると、仕方ないなって感じでほっぺをプクッとさせながら、心はリビングへ戻って行った。

リビングに戻って出かける準備をしていると、食器を洗い終わった心が入れ違いで洗面所に行くのをちょっと目で追いながら、最後に髪を整えて着替え、ソファーに座り心が戻ってくるのを待った。

だけど、戻ってきた心は特に俺を気にすることも無く携帯に夢中。

構われないと構われないで気になるから、チラチラと心に目をやれば、それに気がついた心と目が合った。


「ん?どぉしたの?」

「…っ、別に」

「そろそろ行く?」

「んぅ」


ちょっとかまって欲しいなぁ…なんて思ってても言えやしないから、そんな感情を押し殺してすくっと立ち上がろうとすると、隣に座っていた心の顔がもうすぐそばまで迫っていた。


「んっ、なにっ!?」

「キス…してほしそうな顔してたから…」

「なっ!そん顔してないっ///」

「じゃあいらない?」


俺の顔をまじまじと覗き込む心は、いつもそういう恥ずかしいセリフを涼しい顔してサラッと吐く…

恥ずかしくてすっと顔を逸らし横目でチラッと心を見れば、悪い顔をして俺のほっぺをムニッと両側から摘んだ。


「い…っ!?ちょっ、なに!?」

「え~もぉなんか可愛くてぇ~」

「可愛くなんかないっ」

「可愛いよぉ?もうデロデロに可愛い~」

「なっ、離せよっ///」


ほっぺをパッと離されると直ぐにギュッと抱きしめられて、グリグリと甘えてくる。

甘えられることって今まであまりなかったから、なんだか少し優越感に浸っていれば、今度は急に大人しくなる心の一喜一憂に俺の心はかき乱される


「離さないよ…もぅ絶対離さない…」

「んっ///し、んっ、苦しいっ…」


ゆっくり体を離すと、少し上から柔らかい視線が降り注ぐ…


「将吾が俺の事嫌いになっても、俺はずっと将吾が好き…」

「なんだよ///それ…」

「誓の言葉…?」

「なっ////」

「まぁいいじゃんっ、そろそろ行こ?」


何事も無かったかのように荷物を持って玄関に向かう心の後ろ姿に、俺もちゃんと気持ちを伝えたくて聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。


「おっ…俺も、俺も好きだから…」

「ん?」

「なっ、なんでもないっ////」

「将吾、来て?」


荷物をもって玄関までテトテト歩いていくと、心の顔が近付き唇と唇がそっと触れた。


「ん…っ///」

「ふふっ、嬉しい♡」

「聞こえてんじゃん///」


目がなくなっちゃいそうなくらいニコニコ笑う心は、本当に嬉しそうに俺の手を握る。

俺もその手を握り返し、心とのこんな日常も悪くないなって思い始めていたんだ。
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