こじらせ男子は一生恋煩い

第一章 出会いと再会

心の想い

将吾が表に出た直後、りつさんがいる事に気が付いた俺は、店の中で少し様子を見ていた。

取り返しに来たんなら阻止するまでと思っていたが、案外あっさりと身を引いてくれて安堵したのも束の間、りつさんが立ち去った後、将吾は膝から崩れ落ちた。

俺は慌てて将吾に駆け寄り、既に遠くを歩くりつさんにこの状況を勘づかれないようにと、将吾を店の中に誘導した。

将吾は明らかに苦しんでる…
俺といて本当の意味で幸せかと言ったら、そうじゃないのかもしれない。

だって将吾はやっぱり、りつさんの事が好きなんだから…

それを知ってて俺は、将吾をりつさんから奪った。 

少なくとも将吾が俺を必要としてくれてるのなら、俺は将吾を渡すつもりはない。

俺が将吾を苦しめてるのかもしれないけど、それでも俺は将吾が欲しい。

急に現れた将吾を捨てた人になんか渡したくない。

将吾への想いは絶対に負けないから…
俺が将吾を守る！そう決めたんだ。


「大丈夫…？」

「ん…」

「りつさん、来てたんだろ？何だって？」

「ピアス…ありがとうって…幸せに…っ、なれよって…俺、多分本当にフラれた…っ」


そんな苦し紛れの捨て台詞…
未練タラタラじゃん。

りつさんもまだ将吾が好きなんだろう？

本来なら俺が少しでも助け舟を出してあげれば、きっと直ぐに仲直りして上手くいくような案件だ。

だけど俺は手を貸さない…

ずるいと言われようが後で恨まれようが、そんなの知った事では無い。

俺はそれだけ将吾が大事、将吾が必要、将吾が大好きだから…


「もうさ、あの人の事は忘れて、俺と幸せになろ？」

「…うん」

「立てる？」

「…ぅんっ」

「帰ろ」


俺は将吾を連れて店を出ると、将吾の手を取り歩き出した。