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第一章 出会いと再会
りつの想い
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俺の目の前で倒れた将吾を担ぎ上げ店に戻った俺は、店の従業員に事情を説明して一部屋空けてもらい、将吾をベットに寝かせた。
そして、額に手を当て呼吸や脈を確認する。
一先ず大事には至らなそうで安心すると、ホッと胸をなで下ろした。
将吾の眠る姿はあの時と変わらず、ずっと見ていられる程やっぱり可愛い…
もちろん、あの時だって本当は手放したくなんてなかった。
けど将吾のこれからの為にも、これ以上大人の俺の都合で感情移入してはダメだと、離れる事を決めたんだ。
だけど、今思えばそんなものは表向きのただの言い訳で、あれだけの事をしておいて将吾の為だなんて、綺麗事を並べてた自分が情けない。
結局は、全部自分の為…
都合の悪い事は全部忘れて、辛い現状からから逃げ出したんだ。
それにしても何があったんだ?
久しぶりに会った将吾は、あの時より痩せてて髪も伸びっぱなしだし、だいぶ疲弊してるように見える。
熱もないし息もしっかりしてるけど、まさかどっか悪いんじゃないよな?
寝てる隙にそぉっと服を捲ってみれば、そこには痛々しい痣や傷、少し痩せて浮き出た肋骨…
もしかして…虐待か…?
久しぶりに会った可愛い俺の生徒は、かなり変わり果てた姿で俺の前に現れた。
衝動的に保護してしまったものの、一体これからどうしたらいいんだ…
せっかく自ら手放したのに、また俺の元に戻ってくるなんてもう運命でしかないとさえ思ってしまう…
だけどもう昔の俺じゃない…
将吾だって子供じゃないんだ、暫く休ませたら直ぐ家に帰そう。
そう思ってたのに…
弱りきった将吾を見てたら堪らなくて、一緒に帰ろう…なんて、俺が言える立場じゃねぇのに思わず口に出してしまっていた。
全てから逃げて、コイツを一人にしたのは俺なのにな。
そして、俺は店の店長に事情を説明して、立ち上がることさえやっとな将吾を抱え、一先ず自分の家に連れて帰る事にした。
帰りのタクシーの中でも会話を交わす事はなく、離れていた時の長さを感じる…
あれから、2年…くらいか?
もう将吾も二十歳になったのか…
とは言え、まだまだあどけなさが残ってる。
自宅に着くと、入るのを躊躇っているのか、玄関に立ち尽くす将吾の手を引き部屋の中へと招き入れた。
「なんか飲む?」
「うん…」
「気持ち悪さは?」
「まだ…ちょっと…」
相変わらず顔色は良くない。
ソファーに座らせコーンスープを温めてそれを手渡すと、将吾はそれを両手で抱え少しづつ飲み始めた。
「今も、実家にいるの…?」
「ううん、一人暮らし…」
「そっか…じゃあ、働いてんだ…」
「うん…バイトだけど…一応。…加野っちは?学校辞めてから…ずっとあのお店で働いてんの?」
「…うん」
「へぇ…」
将吾のその反応に俺は心が折れそうになった…
驚くでもなく、どんな店なのか聞く事もない。
多分将吾は、俺がどんな仕事をしてるのか直ぐにわかったんだと思う。
そして将吾から少し離れ、換気扇の下で煙草を吸っていると、服の裾をツンっと引っ張られた感覚に振り返る。
目も合わせず俯く将吾は、俺の服の裾を掴んでただ黙ってそこに立っていた。
「どぉした?気分でも悪いか?」
「お風呂…借りていい?」
「あ、あぁいいよ…入ってきな」
くしゃっと頭を撫でてやると、長い前髪の隙間からチラッと視線が覗き、一瞬目が合ったがすぐに逸らされた。
俺は、風呂場に向う将吾の後ろ姿に目を細め煙草を吸うと、ため息と一緒に大きく煙を吐き出した。
そして、額に手を当て呼吸や脈を確認する。
一先ず大事には至らなそうで安心すると、ホッと胸をなで下ろした。
将吾の眠る姿はあの時と変わらず、ずっと見ていられる程やっぱり可愛い…
もちろん、あの時だって本当は手放したくなんてなかった。
けど将吾のこれからの為にも、これ以上大人の俺の都合で感情移入してはダメだと、離れる事を決めたんだ。
だけど、今思えばそんなものは表向きのただの言い訳で、あれだけの事をしておいて将吾の為だなんて、綺麗事を並べてた自分が情けない。
結局は、全部自分の為…
都合の悪い事は全部忘れて、辛い現状からから逃げ出したんだ。
それにしても何があったんだ?
久しぶりに会った将吾は、あの時より痩せてて髪も伸びっぱなしだし、だいぶ疲弊してるように見える。
熱もないし息もしっかりしてるけど、まさかどっか悪いんじゃないよな?
寝てる隙にそぉっと服を捲ってみれば、そこには痛々しい痣や傷、少し痩せて浮き出た肋骨…
もしかして…虐待か…?
久しぶりに会った可愛い俺の生徒は、かなり変わり果てた姿で俺の前に現れた。
衝動的に保護してしまったものの、一体これからどうしたらいいんだ…
せっかく自ら手放したのに、また俺の元に戻ってくるなんてもう運命でしかないとさえ思ってしまう…
だけどもう昔の俺じゃない…
将吾だって子供じゃないんだ、暫く休ませたら直ぐ家に帰そう。
そう思ってたのに…
弱りきった将吾を見てたら堪らなくて、一緒に帰ろう…なんて、俺が言える立場じゃねぇのに思わず口に出してしまっていた。
全てから逃げて、コイツを一人にしたのは俺なのにな。
そして、俺は店の店長に事情を説明して、立ち上がることさえやっとな将吾を抱え、一先ず自分の家に連れて帰る事にした。
帰りのタクシーの中でも会話を交わす事はなく、離れていた時の長さを感じる…
あれから、2年…くらいか?
もう将吾も二十歳になったのか…
とは言え、まだまだあどけなさが残ってる。
自宅に着くと、入るのを躊躇っているのか、玄関に立ち尽くす将吾の手を引き部屋の中へと招き入れた。
「なんか飲む?」
「うん…」
「気持ち悪さは?」
「まだ…ちょっと…」
相変わらず顔色は良くない。
ソファーに座らせコーンスープを温めてそれを手渡すと、将吾はそれを両手で抱え少しづつ飲み始めた。
「今も、実家にいるの…?」
「ううん、一人暮らし…」
「そっか…じゃあ、働いてんだ…」
「うん…バイトだけど…一応。…加野っちは?学校辞めてから…ずっとあのお店で働いてんの?」
「…うん」
「へぇ…」
将吾のその反応に俺は心が折れそうになった…
驚くでもなく、どんな店なのか聞く事もない。
多分将吾は、俺がどんな仕事をしてるのか直ぐにわかったんだと思う。
そして将吾から少し離れ、換気扇の下で煙草を吸っていると、服の裾をツンっと引っ張られた感覚に振り返る。
目も合わせず俯く将吾は、俺の服の裾を掴んでただ黙ってそこに立っていた。
「どぉした?気分でも悪いか?」
「お風呂…借りていい?」
「あ、あぁいいよ…入ってきな」
くしゃっと頭を撫でてやると、長い前髪の隙間からチラッと視線が覗き、一瞬目が合ったがすぐに逸らされた。
俺は、風呂場に向う将吾の後ろ姿に目を細め煙草を吸うと、ため息と一緒に大きく煙を吐き出した。
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