3 / 5
第3話 魔王、勇者と戦う。
しおりを挟む
「ユウ、今日はお前の稽古をつけてやる」
食事を終えた後、勇者と一緒に外に出た俺は木剣を握っていた。
なぜ魔王が勇者に剣術を教わらないとならないのだ? と思ったが、これは勇者のことを知る絶好のチャンス。
勇者の弱点、勇者の戦いの癖を見つけて、勇者討伐に活かそうではないか。
ということで、勇者と剣術講座に付き合うことにした。
「まずお前に剣を教える前に……一つお前に教えたいことがある」
「なんだそれは?」
「まぁ……その、あれだ。死ぬっていうことは怖いってことだ」
「……!」
その瞬間、勇者アランから殺意を感じた。
やつは無言で俺のほうに突っ込む。斬りかかろうと持っていた木剣を振り上げた。
俺は思い出す。勇者に殺された苦い記憶を。
しかし俺はこのままやられる俺ではない。
見た目は子供だが、魔王だ。二度も勇者に負けてたまるか。
「……!」
振り下ろされた木剣を俺は受け止めた。
勇者にとって想定外だったのだろう。驚きが顔に出ていた。
次はこちらの番だ。
「――火弾」
俺が唱えると身体が熱くなる。特に両手が熱い。
だが成功だ。この身体になって初めて魔法を使ったが無事成功だ。
隙だらけの勇者に俺は左手を向ける。すると手から大きめの火の玉が出てくる。
さすがの勇者も身の危険を感じたのだろう。素早く後退した。
俺の発動させた火の玉は真っ直ぐ飛び、生えていた木を燃やした。
「無詠唱で火弾を!?成長したなお前。父ちゃんは嬉しいぞ」
メラメラと燃える木を見て、勇者は質問する。
「子供だからと言って油断していると死ぬことになるぞ。勇者よ」
お前に教えてやろうじゃないか。今お前が戦っているのは魔王っていうことを。
俺は木剣の先を勇者に向ける。
「寸止めしてユウに戦いの恐怖を教えてやろうと思ったが……気が変わった。ユウ、打ち合いをしよう。父ちゃんを倒すつもりでかかってきなさい」
「もちろんだ!」
俺はまっすぐ突っ込む。
勇者の首を倒すために、そして魔王の恐ろしさを教えるために。
覚悟しろ! 勇者。
ドガっ
「痛い!」
バコっ
「痛いっ!……ちょっと」
バコっドガっ!
「くそっ……この俺が……二度も」
勇者と魔王の戦いはあっという間に幕を閉じた。
魔王の負けで………
〇○○
「んっ………」
目覚めると、部屋の中にいた。
ふわふわした感触から、ベッドの上に寝ていると自覚する。
たしか勇者と戦って……負けたんだ。
体を起こすが、全身にズキズキとした痛みを感じる。
とりあえず痛みを治さないと、
「――治癒」
あれ?
「――治癒……ヒール」
マジかよ。魔力が切れたのか。
火魔法を撃っただけだぞ? 魔力少なすぎるぞ。勇者の息子よ。
仕方がない。魔力が元に戻るまで安静にしておくか……
俺は再び眠りにつこうとした時、
「――治癒」
誰かが治癒魔法を唱える。声がしたほうを見ると勇者の娘、ルティアがいた。
身体の傷がどんどん癒えていく……さっきまで体を起こすだけで激痛が走ったが、今もう何とでもない。
まさか……人間に助けられることになるとは。
余計なお世話だと言いたいところだが、こいつのおかげで助かった。ここは褒めてやろう。
光栄に思え、勇者の娘よ。
この魔王が貴様を誉めてやろう。
「いい働きだ―」
「はぁ~だるかった」
なんだこいつ?
ため息を吐くルティア。一気にこいつのことが嫌いになった。
よし、勇者の次はこいつをぶっ殺そう。
「ご苦労さんルティア」
「今度からはお母さんに頼んでよ。 私、無駄な魔力使いたくないんだから」
「はははははっ! 次も頼む」
「お父さん……私の話、聞いてた?」
ルティアの横には勇者もいた。
……うん? なんで顔が腫れている? まさか俺がやったのか? いや、あいつには傷一つも与えられなかった。
俺が凝視していると、勇者と目が合う。悟られてしまったようで、笑いながら顔の腫れを触り、説明する。
「これはな。母さんにやられたんだ」
「エナに……なぜだ?」
「当たり前でしょう?」
勇者の代わりに、娘のルティアが答える。
はぁ、と息を吐いて、やれやれと呆れながら、
「庭をめちゃくちゃにした挙句、ユウをボコボコにするんだから……それはお母さんに怒られるよ」
「てへっ☆」
「可愛くないから……全然反省してないってお母さんに言ってあげようか?」
「ごめんなさい。それだけは勘弁してください」
勇者はエナを恐れている様子。
まさか実力はエナのほうが上なのか?
「ユウ悪かったな。痛かっただろう?」
勇者に謝られるほど、これ以上の屈辱はない。
俺は勢いよくベッドから降りる。
「別に大したことない、ただのかすり傷だ。それよりもう一度戦うぞ!」
「やめときなよユウ。どうせ戦っても勝てないって……もう治癒魔法をかけてあげないよ?」
「ふざけるな俺が勇者に負けるわけないだろ? 次こそは勝つ! あの時は目にゴミが入ったせいで負けんだ! さぁ、今すぐ外に行くぞ!」
「あーあ。ムキになっちゃって。ガキね」
「ガキは貴様もだろ?」
「私はアンタより2つ上なんですけど」
俺は睨む。そしてルティアも睨みつける。
「二人とも喧嘩はやめろ」
勇者は割って仲裁する。
「ユウ、やる気になっているところ悪いが、父ちゃんと戦うのはしばらくお預けだ」
「なに!? 勝ち逃げは認めんぞ!」
「まぁそう怒るなよ。母さんの機嫌が直るまで我慢してくれ……また庭を荒らしたら母さんに殺されるからな」
「むむむっ………」
やはり、勇者よりエナのほうが強いらしい。
うむ……仕方がない。ここは我慢してやるか。
勇者が殺されてしまったら、俺の打倒勇者!の目標が果たせなくなるからな。
エナの機嫌が直るまで、勇者の倒す作戦を立てるとするか。
「そういえばお前ら、明日から学園が始まるだろ?ちゃんと宿題は終わっただろうな?」
ん?学園?お前ら?
「うわ~そうだ。明日から授業が始まるんだった。ねぇサボってもいい?」
「ダメだ。ちゃんと行け」
「えー」
「ちょっと待て!俺も行くのか!?」
「当たり前だろ?お前もシャルスト学園の生徒なんだから」
「ふざけるな。俺はそんなくだらない場所には行かないぞ!」
シャルスト学園かなんだか知らないが俺は魔王だぞ。そんな所で学ぶことなんて一つもない。
それに学園なんか行ったら勇者を倒すチャンスが少なくなるじゃないか。
「ユウ、お前までわがまま言うなよ……いいか?お前らはまだまだ子供なんだ。ちゃんと学園に行って、遊んで、しっかり学ぶ。それがお前らの仕事だ。それに学園は楽しいぞー!友達と会えるし、新しい魔法だって学べるんだからな。正直お前らが羨ましいよ。父ちゃんが子供だった頃は勇者の試練とかあって学園なんか行かせてもらえなかったからな。俺も友達と青春を送りたかったな」
「何が友達だ。くだらん」
「そんなに青春を送りたいんだったら私の代わりにお父さんが学園に行ってよ」
「お前らな……」
俺とルティアの鳴り止まないブーイングに勇者は言葉を詰まらせる。
「そんなに嫌がるなよ……ほらお前ら姉弟《きょうだい》一緒にシャルスト学園に登校できるだぞ。嬉しいだろ?なぁ、ルティア?」
「えーユウと? めんどくさい」
「同感だ。なんでこいつと一緒に歩かないといけないんだ?」
「お前らって仲悪いのか……?」
「とにかく俺は学園には行かないぞ。興味もないし行く意味もないからな!」
俺が強く言うと、部屋の入り口から「あら~?」と声が聞こえた。
そこにはエナが立っていた。表情はにっこりしているが凄まじい圧を感じる。
さっきまで文句を言っていたルティアは「お、お母さん」と顔を引きつらせていた。
「私の聞き間違いかしら?さっき誰かが学園に行かないって言ったような気がしたんだけど?」
エナはにこやかな表情のまま俺のほうへ近づく。腰に手を当てながら背の低い俺に目線を合わせると「ユウはそんなこと言わないもんね?」と同意を求めてきた。
どうやらこいつは俺を学園に行かせたいらしい。なら尚更行く気はない。
「聞き間違いではない、俺は学園に行かんぞ」
俺は魔王だぞ。人間の言うことなんぞ聞いてたまるか。
「ユウはいつの間にか悪い子になったんだね。それじゃおしおきが必要だね~」
エナは握りこぶしを見せつける。どうやら力づくで行かせるみたいだな。
さすが大魔法使いエナ。従わないやつは暴力で従わせる、その心意気は素晴らしい。
だが喧嘩を売る相手を間違えたな。
「いいだろ!貴様がやる気なら相手になってやるぞ!」
こいつにも借りがある。殺された魔物たちの仇取らせてもらうぞ。
「もし俺と戦って貴様が勝ったら学園に行ってやろう。だが俺が勝ったら勇者と戦うことを許してもらうぞ」
エナはにこやかな表情からに一変した。目つきは鋭くなり、怒り顔つきに。
そして右手の拳を振り上げ、俺の頭にげんこつを喰らわせる。
「うおおおおおおおおおお!」
重たい一撃。痛すぎて目から涙が出てくる。
「つべこべ言わずに黙って行く!そんな怠けたこと言っているとダメな大人になるよ!」
悶絶している俺を見て、ルティアは「バカね」とクスクスと笑っていた。
くそっ……絶対勇者を殺した後、絶対お前を狙うからな。
「バカはアンタもよ!ルティア!」
「いたっ!」
エナはルティアにもお仕置きをした。
鉄拳を落とされ、涙を浮かべていた。
「お母さん………なんで私も殴るの?」
「ちゃんと聞こえているんだからね!殴られなかったらアンタも学園に行く」
「うぅ……分かったよ」
「くそっ……暴力女が」
説教中に俺が呟く。
横にいたルティアは「ぷっ」と噴き出していた。
ゴツンっ!
「「あいたぁ!」」
再び俺たちの頭上にげんこつが落ちてくる。
食事を終えた後、勇者と一緒に外に出た俺は木剣を握っていた。
なぜ魔王が勇者に剣術を教わらないとならないのだ? と思ったが、これは勇者のことを知る絶好のチャンス。
勇者の弱点、勇者の戦いの癖を見つけて、勇者討伐に活かそうではないか。
ということで、勇者と剣術講座に付き合うことにした。
「まずお前に剣を教える前に……一つお前に教えたいことがある」
「なんだそれは?」
「まぁ……その、あれだ。死ぬっていうことは怖いってことだ」
「……!」
その瞬間、勇者アランから殺意を感じた。
やつは無言で俺のほうに突っ込む。斬りかかろうと持っていた木剣を振り上げた。
俺は思い出す。勇者に殺された苦い記憶を。
しかし俺はこのままやられる俺ではない。
見た目は子供だが、魔王だ。二度も勇者に負けてたまるか。
「……!」
振り下ろされた木剣を俺は受け止めた。
勇者にとって想定外だったのだろう。驚きが顔に出ていた。
次はこちらの番だ。
「――火弾」
俺が唱えると身体が熱くなる。特に両手が熱い。
だが成功だ。この身体になって初めて魔法を使ったが無事成功だ。
隙だらけの勇者に俺は左手を向ける。すると手から大きめの火の玉が出てくる。
さすがの勇者も身の危険を感じたのだろう。素早く後退した。
俺の発動させた火の玉は真っ直ぐ飛び、生えていた木を燃やした。
「無詠唱で火弾を!?成長したなお前。父ちゃんは嬉しいぞ」
メラメラと燃える木を見て、勇者は質問する。
「子供だからと言って油断していると死ぬことになるぞ。勇者よ」
お前に教えてやろうじゃないか。今お前が戦っているのは魔王っていうことを。
俺は木剣の先を勇者に向ける。
「寸止めしてユウに戦いの恐怖を教えてやろうと思ったが……気が変わった。ユウ、打ち合いをしよう。父ちゃんを倒すつもりでかかってきなさい」
「もちろんだ!」
俺はまっすぐ突っ込む。
勇者の首を倒すために、そして魔王の恐ろしさを教えるために。
覚悟しろ! 勇者。
ドガっ
「痛い!」
バコっ
「痛いっ!……ちょっと」
バコっドガっ!
「くそっ……この俺が……二度も」
勇者と魔王の戦いはあっという間に幕を閉じた。
魔王の負けで………
〇○○
「んっ………」
目覚めると、部屋の中にいた。
ふわふわした感触から、ベッドの上に寝ていると自覚する。
たしか勇者と戦って……負けたんだ。
体を起こすが、全身にズキズキとした痛みを感じる。
とりあえず痛みを治さないと、
「――治癒」
あれ?
「――治癒……ヒール」
マジかよ。魔力が切れたのか。
火魔法を撃っただけだぞ? 魔力少なすぎるぞ。勇者の息子よ。
仕方がない。魔力が元に戻るまで安静にしておくか……
俺は再び眠りにつこうとした時、
「――治癒」
誰かが治癒魔法を唱える。声がしたほうを見ると勇者の娘、ルティアがいた。
身体の傷がどんどん癒えていく……さっきまで体を起こすだけで激痛が走ったが、今もう何とでもない。
まさか……人間に助けられることになるとは。
余計なお世話だと言いたいところだが、こいつのおかげで助かった。ここは褒めてやろう。
光栄に思え、勇者の娘よ。
この魔王が貴様を誉めてやろう。
「いい働きだ―」
「はぁ~だるかった」
なんだこいつ?
ため息を吐くルティア。一気にこいつのことが嫌いになった。
よし、勇者の次はこいつをぶっ殺そう。
「ご苦労さんルティア」
「今度からはお母さんに頼んでよ。 私、無駄な魔力使いたくないんだから」
「はははははっ! 次も頼む」
「お父さん……私の話、聞いてた?」
ルティアの横には勇者もいた。
……うん? なんで顔が腫れている? まさか俺がやったのか? いや、あいつには傷一つも与えられなかった。
俺が凝視していると、勇者と目が合う。悟られてしまったようで、笑いながら顔の腫れを触り、説明する。
「これはな。母さんにやられたんだ」
「エナに……なぜだ?」
「当たり前でしょう?」
勇者の代わりに、娘のルティアが答える。
はぁ、と息を吐いて、やれやれと呆れながら、
「庭をめちゃくちゃにした挙句、ユウをボコボコにするんだから……それはお母さんに怒られるよ」
「てへっ☆」
「可愛くないから……全然反省してないってお母さんに言ってあげようか?」
「ごめんなさい。それだけは勘弁してください」
勇者はエナを恐れている様子。
まさか実力はエナのほうが上なのか?
「ユウ悪かったな。痛かっただろう?」
勇者に謝られるほど、これ以上の屈辱はない。
俺は勢いよくベッドから降りる。
「別に大したことない、ただのかすり傷だ。それよりもう一度戦うぞ!」
「やめときなよユウ。どうせ戦っても勝てないって……もう治癒魔法をかけてあげないよ?」
「ふざけるな俺が勇者に負けるわけないだろ? 次こそは勝つ! あの時は目にゴミが入ったせいで負けんだ! さぁ、今すぐ外に行くぞ!」
「あーあ。ムキになっちゃって。ガキね」
「ガキは貴様もだろ?」
「私はアンタより2つ上なんですけど」
俺は睨む。そしてルティアも睨みつける。
「二人とも喧嘩はやめろ」
勇者は割って仲裁する。
「ユウ、やる気になっているところ悪いが、父ちゃんと戦うのはしばらくお預けだ」
「なに!? 勝ち逃げは認めんぞ!」
「まぁそう怒るなよ。母さんの機嫌が直るまで我慢してくれ……また庭を荒らしたら母さんに殺されるからな」
「むむむっ………」
やはり、勇者よりエナのほうが強いらしい。
うむ……仕方がない。ここは我慢してやるか。
勇者が殺されてしまったら、俺の打倒勇者!の目標が果たせなくなるからな。
エナの機嫌が直るまで、勇者の倒す作戦を立てるとするか。
「そういえばお前ら、明日から学園が始まるだろ?ちゃんと宿題は終わっただろうな?」
ん?学園?お前ら?
「うわ~そうだ。明日から授業が始まるんだった。ねぇサボってもいい?」
「ダメだ。ちゃんと行け」
「えー」
「ちょっと待て!俺も行くのか!?」
「当たり前だろ?お前もシャルスト学園の生徒なんだから」
「ふざけるな。俺はそんなくだらない場所には行かないぞ!」
シャルスト学園かなんだか知らないが俺は魔王だぞ。そんな所で学ぶことなんて一つもない。
それに学園なんか行ったら勇者を倒すチャンスが少なくなるじゃないか。
「ユウ、お前までわがまま言うなよ……いいか?お前らはまだまだ子供なんだ。ちゃんと学園に行って、遊んで、しっかり学ぶ。それがお前らの仕事だ。それに学園は楽しいぞー!友達と会えるし、新しい魔法だって学べるんだからな。正直お前らが羨ましいよ。父ちゃんが子供だった頃は勇者の試練とかあって学園なんか行かせてもらえなかったからな。俺も友達と青春を送りたかったな」
「何が友達だ。くだらん」
「そんなに青春を送りたいんだったら私の代わりにお父さんが学園に行ってよ」
「お前らな……」
俺とルティアの鳴り止まないブーイングに勇者は言葉を詰まらせる。
「そんなに嫌がるなよ……ほらお前ら姉弟《きょうだい》一緒にシャルスト学園に登校できるだぞ。嬉しいだろ?なぁ、ルティア?」
「えーユウと? めんどくさい」
「同感だ。なんでこいつと一緒に歩かないといけないんだ?」
「お前らって仲悪いのか……?」
「とにかく俺は学園には行かないぞ。興味もないし行く意味もないからな!」
俺が強く言うと、部屋の入り口から「あら~?」と声が聞こえた。
そこにはエナが立っていた。表情はにっこりしているが凄まじい圧を感じる。
さっきまで文句を言っていたルティアは「お、お母さん」と顔を引きつらせていた。
「私の聞き間違いかしら?さっき誰かが学園に行かないって言ったような気がしたんだけど?」
エナはにこやかな表情のまま俺のほうへ近づく。腰に手を当てながら背の低い俺に目線を合わせると「ユウはそんなこと言わないもんね?」と同意を求めてきた。
どうやらこいつは俺を学園に行かせたいらしい。なら尚更行く気はない。
「聞き間違いではない、俺は学園に行かんぞ」
俺は魔王だぞ。人間の言うことなんぞ聞いてたまるか。
「ユウはいつの間にか悪い子になったんだね。それじゃおしおきが必要だね~」
エナは握りこぶしを見せつける。どうやら力づくで行かせるみたいだな。
さすが大魔法使いエナ。従わないやつは暴力で従わせる、その心意気は素晴らしい。
だが喧嘩を売る相手を間違えたな。
「いいだろ!貴様がやる気なら相手になってやるぞ!」
こいつにも借りがある。殺された魔物たちの仇取らせてもらうぞ。
「もし俺と戦って貴様が勝ったら学園に行ってやろう。だが俺が勝ったら勇者と戦うことを許してもらうぞ」
エナはにこやかな表情からに一変した。目つきは鋭くなり、怒り顔つきに。
そして右手の拳を振り上げ、俺の頭にげんこつを喰らわせる。
「うおおおおおおおおおお!」
重たい一撃。痛すぎて目から涙が出てくる。
「つべこべ言わずに黙って行く!そんな怠けたこと言っているとダメな大人になるよ!」
悶絶している俺を見て、ルティアは「バカね」とクスクスと笑っていた。
くそっ……絶対勇者を殺した後、絶対お前を狙うからな。
「バカはアンタもよ!ルティア!」
「いたっ!」
エナはルティアにもお仕置きをした。
鉄拳を落とされ、涙を浮かべていた。
「お母さん………なんで私も殴るの?」
「ちゃんと聞こえているんだからね!殴られなかったらアンタも学園に行く」
「うぅ……分かったよ」
「くそっ……暴力女が」
説教中に俺が呟く。
横にいたルティアは「ぷっ」と噴き出していた。
ゴツンっ!
「「あいたぁ!」」
再び俺たちの頭上にげんこつが落ちてくる。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
チートも何も貰えなかったので、知力と努力だけで生き抜きたいと思います
あーる
ファンタジー
何の準備も無しに突然異世界に送り込まれてしまった山西シュウ。
チートスキルを貰えないどころか、異世界の言語さえも分からないところからのスタート。
さらに、次々と強大な敵が彼に襲い掛かる!
仕方ない、自前の知力の高さ一つで成り上がってやろうじゃないか!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる