魔法世界の綺沙羅

みちづきシモン

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綺沙羅続き(仮)

16。呪いを治す

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「やぁ君達、順調に強くなってるようだね」
 洋文を見つけて会うと笑ってそう話す。綺沙羅は、数子を治せる段階にきた事を話した。
「本当かい?! よ、よし! すぐに病院に行こう!」
 洋文は慌てたのか持っていた教材をバタバタと落としてしまう。
「落ち着いてください。慌てなくても大丈夫ですよ!」
 綺沙羅は教材を拾い上げ洋文に渡した。そして、一緒に皆で職員室に向かった。
 洋文は色々と用事を済ませて車のキーを持って出てきた。
 車に乗って病院へ向かうと手続きをしてすぐに数子のいる部屋に向かった。
「あらあら、また来てくれたのね。今日は何のお話をする?」
「今日は数子さんの呪いを治しに来ました」
「え? 本当に? でも……大丈夫なの?」
「ふん、任せろ!」
 陸也が魔法を唱えると数子の真っ黒な手足が徐々に元に戻っていく。そして完全に肌色になった。
 数子は恐る恐る手足を動かしてみる。
「動く……! 手も足も動くわ……!」
数子は喜びに涙した。洋文は感極まって数子を抱きしめる。
「良かった!本当に良かった!」
「ありがとう!本当にありがとう、皆さん!」
 号泣する数子と抱きしめる洋文の姿に感動したのか綺沙羅と来夢も貰い泣きしていた。
「お手柄だな、陸也!」
「ふん、てめーに褒められても嬉しくねーな番樹」
「まぁまぁ、僕らの修行の成果だし綺沙羅のプリンも少し役に立ったね」
 こうして、数子は無事退院した。元の生活に戻るにはリハビリに通院しなければならないが、それでも苦にならないと言っていた。
「今まで動かなかった分沢山動くつもりしてるの」
 そう笑う数子に、洋文が改まって姿勢を正し膝まづいて言った。
「私と結婚して貰えませんか数子さん」
 驚いた数子は姿勢を正し、洋文の手を掴んで言った。
「喜んで」
 わぁーっと綺沙羅達は拍手した。祝福を受け照れる二人。
 この日幸せな時間が訪れていた。
「私もあんな風にプロポーズされたいな」
 綺沙羅がボソリと言った。来夢も続く。
「ウチもやで、綺沙羅。ええよなぁ」
 優は、ギュッと拳を握りしめて決意を固めたようだった。陸也は知らないフリしている。

 洋文、数子の二人の結婚はともかく、魔力を高めて高度な魔法を扱えるようになったのは大きかった。それまでより格段に多くの魔法を使えるようになるからだ。
綺沙羅は神羅の書を開いた。
「わっショーい!」
「書の妖精さん。私達に新しい戦う力を覚えさせてほしいの」
「いいでショ。順番に前に出るでショ」
 書の妖精の力で、新たな魔法を覚えていく綺沙羅達。
 覚え終わった綺沙羅達だったが、書の妖精は少し気にかかっていることがあるのか、神羅の書を閉じようとした綺沙羅を制した。
「ちょっと待つでショ」
「うん?どうしたの?妖精さん」
「こんなに沢山魔法を覚えてどうするつもりでショ?戦争でもするでショか?」
「ふん、そんなの決まってんだろ。強くなるだけ強くなって誰からも舐められないように……」
「ウチらは守れる力が欲しいんや。守られるのもアリやけど、守ってくれる人が強いとは限らんやろ?」
「俺たちが強くなればそれでみんな守れるからな!」
「悪いことに使うわけじゃないよ。安心して欲しいかな」
 陸也を途中で遮って、各々意見を言う。それでも書の妖精は納得しなかった。
「魔法を覚えるのが悪いとは言わないでショ。強い魔法を覚えるのはいいでショ。それより、数を覚えることで悪手を打たないか心配でショ」
「その場にあった魔法を使えるかということ?」
「そういうことでショ。それが出来ないと無益な争いが生まれるでショ」
「その辺は学校で学ぶしかないかな?」
 綺沙羅は書の妖精と話しながら、考えていた。確かにこれまで沢山の魔法を書の妖精に覚えさせてもらった。それらは詠唱が必要なものも魔法を思い描けば詠唱できた。
 簡潔になるということは、誤射する可能性もあるということだ。
「魔法のコントロールを学びつつ別の手段も考えないとね」
「わかっているならいいでショ」
 綺沙羅は本を閉じた。四人プラス一人と相談する。
「真那先生に聞いてみようよ、綺沙羅。僕はそうした方がいいと思う」
「俺もそう思うぞ!あの先生なら間違いはないだろう」
「ウチらが習ってきた学問にはヒントないもんなぁ」
「ふん、大丈夫か?うちの学校」
(綺沙羅、私達だけで悩んでも仕方ないわ。勿論私が教える事もできるけど、それより先生に聞いてみる方がいいと思う)
(炎羅ちゃんはコツを掴んでるんだね)
 改めて自分と炎羅の格の違いを思い知り、戦闘は任せてと言われた意味を噛みしめる。
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