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恋と仕事と
第21話
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逃げられず、何故かカーラの部屋まで連れて行かれるノアラン。
(そこは、明らかにプライベートゾーンでは)
怯みながらもビルスを止めることは出来ない。
「カーラは起きて、支度を済ませているか?」
ドアの前にいた護衛に訊ねると、姿勢を正した護衛が腹の底から出したような大声で答えた。
「はっ、先程キイラが食堂に確認に行ったので、もうお支度は終わられていらっしゃるかと存じます」
「う、うむ」
あまりの大声に、カーラが顔を出したほど。
「あらお父さま?ノアラン様も!おはようございます」
「カーラ、朝食前に少しいいだろうか?」
侍女が戻ればすぐに朝食のはずだが、そんなにも急ぐことなのかと、怪訝な顔をした娘に、以心伝心の父は頷いた。
「では、居間へ参ります?」
「いや執務室に。キイラが戻ったら、少し遅れると食堂に知らせてもらってくれ」
「承知いたしましたっ!」
すぐ隣りでがなられ、堪えきれずに目をぱちくりしてしまったが、耳を押さえなかっただけでも自分を褒めてやれると、そんなことを思いながらビルスはふたりを執務室へと連れて行った。
「さあ。ノアラン殿、カーラもそちらへ座って」
真剣な顔の男二人が何を言おうとしているのかと、耳を澄ませたカーラに、ノ口を開いては躊躇い、自分を鼓舞するよう拳を握っては顔を上げを繰り返したノアランがとうとう声を発した。
「カーラ様」
ブラスが応援するように、目配せをしている。
「ブラス様にはお伝えしたのですが、わ、私はヴァーミル家の実子ではありません」
「・・・え!」
カーラが驚きの声を洩らした。
ヴァーミル侯爵家の四人は、侯爵とそっくりなキーシュ、侯爵夫人とそっくりなノアランと、どう見ても仲の良い家族にしか見えなかったから。
「私は、私の実父は・・・、マトウ・ローリスなんです」
マトウ・ローリスと聞いても、カーラはそれが誰だかすぐにはピンと来なかった。
「ローリス・・・?マトウ・ローリスの子って、ええっ!ノ、ノーラン・ローリス?」
ノアランは小さく肩を竦めてから、ゆっくりと頷いた。カーラの次の反応が気になり、見開いた瞳でじっと見つめている。
「そ、そんなっ!それはいつからご存知でしたの?ずっと黙っていらした?」
「カーラ様が我が家にいらしたあと、父ヤーリッツから聞かされて知りました」
「では初めてお会いした頃はまだ?」
「はい。間違いなく父ヤーリッツ、母キャメイリアの子どもだと信じていました」
そう答えたノアランは、寂しそうに見えた。
「実父はこちらでは恥知らずと言われていると聞きました」
「ああ、まあそうなんだが、気にすることはない」
ブラスが割り込んで慰める。
「いえ、いいのです。私も母とのことを知り、そう思いましたから」
ノアランが打ち明けられずにいたのは、あの恥知らずの子と知られたら、カーラがどう思うだろうと怯えていたからだ。
しかしキャメイリアは「言うなら早く!カーラ様なら大丈夫」と言う。
ブラスも「大丈夫だ」と言う。
いつかカーラの手を取るためには、乗り越えねばならない山。
母も、彼女の父も、大丈夫だと背中を押してくれる。
言わずにどうする!
味方ができたと知ってから言うなんて、狡いかも知れないが、ノアランは漸く踏み出すことが出来たのだった。
(そこは、明らかにプライベートゾーンでは)
怯みながらもビルスを止めることは出来ない。
「カーラは起きて、支度を済ませているか?」
ドアの前にいた護衛に訊ねると、姿勢を正した護衛が腹の底から出したような大声で答えた。
「はっ、先程キイラが食堂に確認に行ったので、もうお支度は終わられていらっしゃるかと存じます」
「う、うむ」
あまりの大声に、カーラが顔を出したほど。
「あらお父さま?ノアラン様も!おはようございます」
「カーラ、朝食前に少しいいだろうか?」
侍女が戻ればすぐに朝食のはずだが、そんなにも急ぐことなのかと、怪訝な顔をした娘に、以心伝心の父は頷いた。
「では、居間へ参ります?」
「いや執務室に。キイラが戻ったら、少し遅れると食堂に知らせてもらってくれ」
「承知いたしましたっ!」
すぐ隣りでがなられ、堪えきれずに目をぱちくりしてしまったが、耳を押さえなかっただけでも自分を褒めてやれると、そんなことを思いながらビルスはふたりを執務室へと連れて行った。
「さあ。ノアラン殿、カーラもそちらへ座って」
真剣な顔の男二人が何を言おうとしているのかと、耳を澄ませたカーラに、ノ口を開いては躊躇い、自分を鼓舞するよう拳を握っては顔を上げを繰り返したノアランがとうとう声を発した。
「カーラ様」
ブラスが応援するように、目配せをしている。
「ブラス様にはお伝えしたのですが、わ、私はヴァーミル家の実子ではありません」
「・・・え!」
カーラが驚きの声を洩らした。
ヴァーミル侯爵家の四人は、侯爵とそっくりなキーシュ、侯爵夫人とそっくりなノアランと、どう見ても仲の良い家族にしか見えなかったから。
「私は、私の実父は・・・、マトウ・ローリスなんです」
マトウ・ローリスと聞いても、カーラはそれが誰だかすぐにはピンと来なかった。
「ローリス・・・?マトウ・ローリスの子って、ええっ!ノ、ノーラン・ローリス?」
ノアランは小さく肩を竦めてから、ゆっくりと頷いた。カーラの次の反応が気になり、見開いた瞳でじっと見つめている。
「そ、そんなっ!それはいつからご存知でしたの?ずっと黙っていらした?」
「カーラ様が我が家にいらしたあと、父ヤーリッツから聞かされて知りました」
「では初めてお会いした頃はまだ?」
「はい。間違いなく父ヤーリッツ、母キャメイリアの子どもだと信じていました」
そう答えたノアランは、寂しそうに見えた。
「実父はこちらでは恥知らずと言われていると聞きました」
「ああ、まあそうなんだが、気にすることはない」
ブラスが割り込んで慰める。
「いえ、いいのです。私も母とのことを知り、そう思いましたから」
ノアランが打ち明けられずにいたのは、あの恥知らずの子と知られたら、カーラがどう思うだろうと怯えていたからだ。
しかしキャメイリアは「言うなら早く!カーラ様なら大丈夫」と言う。
ブラスも「大丈夫だ」と言う。
いつかカーラの手を取るためには、乗り越えねばならない山。
母も、彼女の父も、大丈夫だと背中を押してくれる。
言わずにどうする!
味方ができたと知ってから言うなんて、狡いかも知れないが、ノアランは漸く踏み出すことが出来たのだった。
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