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恋と仕事と
第16話
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『カメリア』開店準備が山を越えた頃。
新しい店舗を覗きに、現シーズン公爵でカーラの父ビルスがやって来た。
「お父さま!」
「久しいなカーラ。忙しいのはわかるが、もう少しまめに顔を見せてほしいものだ」
苦笑を浮かべたビルスは、カーラの後ろに素晴らしく美麗な親子と思われる男女に気がついた。
「あちらは」
「前にお話ししましたシルベス王国のヴァーミル侯爵夫人キャメイリア様と、ご令息ノアラン様ですわ」
「ああ!いつもたくさんの荷物を送ってくださる!」
眉尻を下げたビルスは二人のもとに歩み寄ると、礼儀正しく挨拶を交わした。
「お知らせしたように、この店はノアラン様と共同所有、共同事業と致しますわ」
「もう契約は交わしたのかね」
カーラに言っても無駄なので、ビルスは良く知るわけでもないノアランに視線を向ける。
(うん、シルベス人らしいというか、きらびやかだ)
そんなことを思いながら。
「はい、コーテズの法務官が作成した契約書を交わしました」
「そうか。カーラ、法務官が作成したなら大丈夫だろうが、せめてその前に一言くらいいってもらいたかったぞ」
ビルスは、ひとりでさくさくと進んでしまうカーラに市松の寂しさを感じて、拗ねた気持ちでそう言ったのだが、ノアランは勝手したと聞こえたらしい。
「申し訳ございませんシーズン公爵閣下」
ノアランが、がばっと頭を下げて謝ると、ビルスは呆気に取られたあと、その意図に気づいて声を立てて笑い出した。
「いや、違うんだよご令息!怒っているわけではないんだ。カーラは思ったらなんでもすぐ行動してしまうのでね、たまには相談してもらいたいということなんだ」
「ま、まあお父さまったら、わたくしそんな単純ではございませんわ。ちゃんと熟慮して行動しておりますもの」
ツンとしたカーラをちらりと見、吹き出すのを我慢したようなブラスに、仲の良い家族のじゃれ合いが見たキャメイリアもあたたかな気持ちを覚えていた。
(いざとなったら公爵らしく厳然と判断されるのだろうけれど、それでもマトウとは全然違うわ)
はるか昔、熱愛の末にローリス家にやって来たキャメイリアは、マトウの豹変と裏切りに戸惑い、深く傷ついてシルベスへ逃げ帰ったが。
本能的にブラスは夫ヤーリッツと同じタイプ、そう妻や家族を大切に愛する、貴族らしくない貴族だろうと感じ取っていた。
ブラスに会ったことで、カーラへの信頼が増したと感じたキャメイリアは、ノアランが望むなら実家にもう一度頭を下げて爵位を相談してみもいいとさえ思えるようになったのだ。
背中に微妙なキャメイリアの視線を感じたブラスは、「あ!」と声を上げて、手を叩くと。
「よろしければコーテズ滞在中に、我が屋敷にて晩餐会にお招きしたいと思うのですが如何でしょうな」
ブラスは過去最高の素晴らしいタイミングで、皆の気を引くことに成功した。
新しい店舗を覗きに、現シーズン公爵でカーラの父ビルスがやって来た。
「お父さま!」
「久しいなカーラ。忙しいのはわかるが、もう少しまめに顔を見せてほしいものだ」
苦笑を浮かべたビルスは、カーラの後ろに素晴らしく美麗な親子と思われる男女に気がついた。
「あちらは」
「前にお話ししましたシルベス王国のヴァーミル侯爵夫人キャメイリア様と、ご令息ノアラン様ですわ」
「ああ!いつもたくさんの荷物を送ってくださる!」
眉尻を下げたビルスは二人のもとに歩み寄ると、礼儀正しく挨拶を交わした。
「お知らせしたように、この店はノアラン様と共同所有、共同事業と致しますわ」
「もう契約は交わしたのかね」
カーラに言っても無駄なので、ビルスは良く知るわけでもないノアランに視線を向ける。
(うん、シルベス人らしいというか、きらびやかだ)
そんなことを思いながら。
「はい、コーテズの法務官が作成した契約書を交わしました」
「そうか。カーラ、法務官が作成したなら大丈夫だろうが、せめてその前に一言くらいいってもらいたかったぞ」
ビルスは、ひとりでさくさくと進んでしまうカーラに市松の寂しさを感じて、拗ねた気持ちでそう言ったのだが、ノアランは勝手したと聞こえたらしい。
「申し訳ございませんシーズン公爵閣下」
ノアランが、がばっと頭を下げて謝ると、ビルスは呆気に取られたあと、その意図に気づいて声を立てて笑い出した。
「いや、違うんだよご令息!怒っているわけではないんだ。カーラは思ったらなんでもすぐ行動してしまうのでね、たまには相談してもらいたいということなんだ」
「ま、まあお父さまったら、わたくしそんな単純ではございませんわ。ちゃんと熟慮して行動しておりますもの」
ツンとしたカーラをちらりと見、吹き出すのを我慢したようなブラスに、仲の良い家族のじゃれ合いが見たキャメイリアもあたたかな気持ちを覚えていた。
(いざとなったら公爵らしく厳然と判断されるのだろうけれど、それでもマトウとは全然違うわ)
はるか昔、熱愛の末にローリス家にやって来たキャメイリアは、マトウの豹変と裏切りに戸惑い、深く傷ついてシルベスへ逃げ帰ったが。
本能的にブラスは夫ヤーリッツと同じタイプ、そう妻や家族を大切に愛する、貴族らしくない貴族だろうと感じ取っていた。
ブラスに会ったことで、カーラへの信頼が増したと感じたキャメイリアは、ノアランが望むなら実家にもう一度頭を下げて爵位を相談してみもいいとさえ思えるようになったのだ。
背中に微妙なキャメイリアの視線を感じたブラスは、「あ!」と声を上げて、手を叩くと。
「よろしければコーテズ滞在中に、我が屋敷にて晩餐会にお招きしたいと思うのですが如何でしょうな」
ブラスは過去最高の素晴らしいタイミングで、皆の気を引くことに成功した。
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