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コーテズにて
第17話
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「ええ、隣国シルベスでは侍女だけではなく、専用の店でも髪のトリートメントやセットをするのですわ。それを知って、我がコーテズでもタウンハウスを持たない家門の方や、専属侍女を連れて来られない時など、ヘアサロンは便利なのではないかと思いましたの」
カーラの説明にニーナミアが頷く。
「ところで。先程のドレスは本日中に用意させますが、それでも多少お待ち頂かねばなりません。その間カフェとヘアサロンなら、ニーナミア様はどちらがよろしいでしょう?」
「え?」
「できれば店のすべてをお試し頂きたいのですけれど」
若いカーラに圧され、癪に障ったニーナミアが小さな意地悪を吐いた。
「お試しだなんて、私たちは練習台でございますか」
「まあ、練習台だなんて、そんな不完全なことは致しません。私共はプレオープンであっても、従業員一同、持てる実力をすべて発揮してお客様を満足させることをお約束致しますわ」
カーラの背後に並ぶ使用人たちも、それに同意するようこくこくと頷いている。
「そ、そうですか。ではせっかくなのでヘアサロンにしてみますわ」
飛んで火に入る夏の虫、である。
ヘアサロンではトイルが手ぐすねを引いて、待ち受けたニーナミアとアミーラの髪を美しく纏め上げた。
キュリアラを興奮で真っ赤に染め上げたように、トイルはニーナミアとアミーラを喜びに染め上げていく。
「アミーラ見て」
ニーナミアが頬を紅潮させて、合わせ鏡に映る自分の髪で作り上げられた大輪の花を見せた。
よほど気に入ったらしく、声も弾んでいる。
「すごいわ、こんなの今まで見たことがない」
小さく呟いているのが聴こえて、トイルがちょっと自慢を込めそれに応えた。
「これはシルベスのヘアサロンで発表された最新のスタイルでございます。コーテズではまだここでしかできないことですのよ」
「ここでしかできない?」
「はい、まだお二人ほどしか経験されたことのないヘアスタイルでございます」
ナラやエイミも入れるともっと多いが嘘も方便、トイルはニーナミアをうまく絡め取っていく。
「ですからこのお髪でパーティーに出られましたら、さぞ人目をおひきになることと存じます」
「ねえ、さっきのこのスタイルをされたお二人ってどなた?」
「我が主カーラ・シーズンとメルクメール伯爵家のご令嬢ですわ」
ニーナミアは大変満足そうに笑んだ。
メルクメール伯爵家なら派閥が違うため、王城のような大規模なパーティーでなければかち合うことはないだろうと考えて。
カーラ・シーズンとなら被っても構わない。客を立てるに決まっているからだ。
「プレオープン期間はいつまでだったかしら?」
トイルが即座に答える。
「あと四日でございますわ」
「そう。では明後日の昼前にもう一度お願いしたいわ。それと」
ニーナミアは普段田舎者と馬鹿にされている鬱憤を晴らさんばかりに、夜会と茶会に行く日すべて、トイルにヘアセット予約を入れた。
こういうのは早いもの勝ちである。
「あの、その日はもう通常のオープン後のために料金がかかりますが、よろしいのでしょうか?」
心配になったトイルが訊ねると、ニーナミアは胸を張った。
「もちろん!いくらかかろうが、すべて予約しますわよ」
カーラの説明にニーナミアが頷く。
「ところで。先程のドレスは本日中に用意させますが、それでも多少お待ち頂かねばなりません。その間カフェとヘアサロンなら、ニーナミア様はどちらがよろしいでしょう?」
「え?」
「できれば店のすべてをお試し頂きたいのですけれど」
若いカーラに圧され、癪に障ったニーナミアが小さな意地悪を吐いた。
「お試しだなんて、私たちは練習台でございますか」
「まあ、練習台だなんて、そんな不完全なことは致しません。私共はプレオープンであっても、従業員一同、持てる実力をすべて発揮してお客様を満足させることをお約束致しますわ」
カーラの背後に並ぶ使用人たちも、それに同意するようこくこくと頷いている。
「そ、そうですか。ではせっかくなのでヘアサロンにしてみますわ」
飛んで火に入る夏の虫、である。
ヘアサロンではトイルが手ぐすねを引いて、待ち受けたニーナミアとアミーラの髪を美しく纏め上げた。
キュリアラを興奮で真っ赤に染め上げたように、トイルはニーナミアとアミーラを喜びに染め上げていく。
「アミーラ見て」
ニーナミアが頬を紅潮させて、合わせ鏡に映る自分の髪で作り上げられた大輪の花を見せた。
よほど気に入ったらしく、声も弾んでいる。
「すごいわ、こんなの今まで見たことがない」
小さく呟いているのが聴こえて、トイルがちょっと自慢を込めそれに応えた。
「これはシルベスのヘアサロンで発表された最新のスタイルでございます。コーテズではまだここでしかできないことですのよ」
「ここでしかできない?」
「はい、まだお二人ほどしか経験されたことのないヘアスタイルでございます」
ナラやエイミも入れるともっと多いが嘘も方便、トイルはニーナミアをうまく絡め取っていく。
「ですからこのお髪でパーティーに出られましたら、さぞ人目をおひきになることと存じます」
「ねえ、さっきのこのスタイルをされたお二人ってどなた?」
「我が主カーラ・シーズンとメルクメール伯爵家のご令嬢ですわ」
ニーナミアは大変満足そうに笑んだ。
メルクメール伯爵家なら派閥が違うため、王城のような大規模なパーティーでなければかち合うことはないだろうと考えて。
カーラ・シーズンとなら被っても構わない。客を立てるに決まっているからだ。
「プレオープン期間はいつまでだったかしら?」
トイルが即座に答える。
「あと四日でございますわ」
「そう。では明後日の昼前にもう一度お願いしたいわ。それと」
ニーナミアは普段田舎者と馬鹿にされている鬱憤を晴らさんばかりに、夜会と茶会に行く日すべて、トイルにヘアセット予約を入れた。
こういうのは早いもの勝ちである。
「あの、その日はもう通常のオープン後のために料金がかかりますが、よろしいのでしょうか?」
心配になったトイルが訊ねると、ニーナミアは胸を張った。
「もちろん!いくらかかろうが、すべて予約しますわよ」
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