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ヴァーミル侯爵家の秘密
第5話
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父に頼まれたように母の部屋を訪ねたキーシュは、ベッドに突っ伏したキャメイリアの側に歩み寄った。
キャメイリアの侍女は黙って見守っている。
「母上、父上がいらしてほしいそうです。すべて父上が話してくれましたよ。でも真実を知ったからと言って何も変わりません。私の母上はキャメイリア・ヴァーミル唯一人だし、ノアの父上はヤーリッツ・ヴァーミル唯一人で、私とノアはこの世にふたりだけの兄弟だ!
だから母上、安心して下さい!
家族みんなで話しましょう、これからのことを」
落ち着いたキーシュの声に、ぐすぐすと鼻を鳴らした母が顔を上げる。
「はい、私の宝物を貸して差し上げますからね、お顔を拭いてください」
母が刺繍してくれたハンカチを、その母に差し出す。
涙を堪えていたキャメイリアは刺繍に気がつき、ぎゅっと握りしめた。
「さあ、母上一緒に行きましょう」
キーシュに支えられ、ヤーリッツとノアランが待つ部屋へ向かうと、ふたりは確かに変わったようには見えなかった。
いや、むしろ血の繋がりより強い絆を確認したのかもしれない。キャメイリアは不思議とそんな気がしていた。
「リア、すまない。勝手に話してしまって」
キャメイリアは真っ赤な潤んだ目でこくりと頷く。
「いいの。わたく・・しでは一生話せなかったかもしれない・・・」
それだけを絞り出したリアに、痛々しい目を向けたノアランが腕を広げる。
「母上、ほら見てください。私たち四人は皆同じ肌の色で同じ銀髪だ、瞳の色は兄上は父上と同じで弟の私は母上の色。どこから見ても仲のいいそっくり家族ですよ!どこから見たって本当の家族だ!」
「ええ、そうねノア。わたくしこわかったの。本当のことを知られたらノアがコーテズの父親の所に行ってしまうんじゃないかって。ノアをとられたくなかったの。隠していて、ごめなさ」
ぐすぐすと鼻を鳴らし、涙を溢しながら謝る母キャメイリアを三人の男たちは大きな愛で包み込んだ。
「大丈夫、何も心配しないで」
キャメイリアが落ち着くのを待ち、ヤーリッツがある紙の束を持って部屋に戻ってきた。
「実はな。シーズン公爵家のご令嬢が帰られた後、念のために調査をさせたんだ。
それで驚くべきことがわかった。ノアには辛い話になるかもしれん」
「大丈夫です」
父子は視線を交わして、何かを確かめあったようだ。
「うむ。勿論信じている。
まずノアの実父、マトウ・ローリスだがな。ノアだとか言って、黒髪の別人を息子だと連れ歩いている」
「「「え?何で?」」」
「息子だと騙されているのかも知れないな、よく似ているらしいんだよローリス辺境伯に。
だからノアはもうノーマーク!と言うことだ」
ヤーリッツはキャメイリアに視線を送り、にっこりと笑った。
「マトウ・ローリスはなんというか行きあたりばったりな性格らしい。いろいろと問題を起こしていて、国王からも何度も叱責を受けている」
「そうですわ、まったく何故あんな人を良いと思ったのかわかりませんわ」
ブツブツとキャメイリアが文句を言ったのを、男たちがうれしそうに見る。
特にヤーリッツが。
「そして、シーズン公爵家とカーラ様だが」
キャメイリアの侍女は黙って見守っている。
「母上、父上がいらしてほしいそうです。すべて父上が話してくれましたよ。でも真実を知ったからと言って何も変わりません。私の母上はキャメイリア・ヴァーミル唯一人だし、ノアの父上はヤーリッツ・ヴァーミル唯一人で、私とノアはこの世にふたりだけの兄弟だ!
だから母上、安心して下さい!
家族みんなで話しましょう、これからのことを」
落ち着いたキーシュの声に、ぐすぐすと鼻を鳴らした母が顔を上げる。
「はい、私の宝物を貸して差し上げますからね、お顔を拭いてください」
母が刺繍してくれたハンカチを、その母に差し出す。
涙を堪えていたキャメイリアは刺繍に気がつき、ぎゅっと握りしめた。
「さあ、母上一緒に行きましょう」
キーシュに支えられ、ヤーリッツとノアランが待つ部屋へ向かうと、ふたりは確かに変わったようには見えなかった。
いや、むしろ血の繋がりより強い絆を確認したのかもしれない。キャメイリアは不思議とそんな気がしていた。
「リア、すまない。勝手に話してしまって」
キャメイリアは真っ赤な潤んだ目でこくりと頷く。
「いいの。わたく・・しでは一生話せなかったかもしれない・・・」
それだけを絞り出したリアに、痛々しい目を向けたノアランが腕を広げる。
「母上、ほら見てください。私たち四人は皆同じ肌の色で同じ銀髪だ、瞳の色は兄上は父上と同じで弟の私は母上の色。どこから見ても仲のいいそっくり家族ですよ!どこから見たって本当の家族だ!」
「ええ、そうねノア。わたくしこわかったの。本当のことを知られたらノアがコーテズの父親の所に行ってしまうんじゃないかって。ノアをとられたくなかったの。隠していて、ごめなさ」
ぐすぐすと鼻を鳴らし、涙を溢しながら謝る母キャメイリアを三人の男たちは大きな愛で包み込んだ。
「大丈夫、何も心配しないで」
キャメイリアが落ち着くのを待ち、ヤーリッツがある紙の束を持って部屋に戻ってきた。
「実はな。シーズン公爵家のご令嬢が帰られた後、念のために調査をさせたんだ。
それで驚くべきことがわかった。ノアには辛い話になるかもしれん」
「大丈夫です」
父子は視線を交わして、何かを確かめあったようだ。
「うむ。勿論信じている。
まずノアの実父、マトウ・ローリスだがな。ノアだとか言って、黒髪の別人を息子だと連れ歩いている」
「「「え?何で?」」」
「息子だと騙されているのかも知れないな、よく似ているらしいんだよローリス辺境伯に。
だからノアはもうノーマーク!と言うことだ」
ヤーリッツはキャメイリアに視線を送り、にっこりと笑った。
「マトウ・ローリスはなんというか行きあたりばったりな性格らしい。いろいろと問題を起こしていて、国王からも何度も叱責を受けている」
「そうですわ、まったく何故あんな人を良いと思ったのかわかりませんわ」
ブツブツとキャメイリアが文句を言ったのを、男たちがうれしそうに見る。
特にヤーリッツが。
「そして、シーズン公爵家とカーラ様だが」
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