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ローリスの秘密
第13話
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謁見の間では緊張が走る。
それが何故か、マトウとノーランにはわからなかったが。
王がゆっくりと頷いたのを見て、壁際にいた近衛騎士たちが一斉に剣を抜き、マトウとノーランを取り囲んだ。
「捕縛せよ!」
「なっ、なんだ何をするっ!」
「黙れ!マトウ・ローリスは謀略と不敬により捕縛し、裁判にかけられる」
「何を!そんなこと事実無根!濡衣だ!陛下っへぃ、あ?」
国王は微動だにせず、マトウを冷たく見下ろしていた。
そしてまたノーランに視線をやり。
「ノーラン・ローリス。もう一度訊ねる。其方は本当にノーラン・ローリスか?」
縄を打たれたノーランは、何を訊かれているか漸く理解した。歯がカチカチと音を立てて当たるほど震え出す。
「あ、い、いえ」
「違うのか」
「いや、これは間違いなく私の息子ですっ」
「マトウ、口を閉じておれ」
「して、ノーランでないなら、おまえは誰だ?」
「ソ、ソーイ、デリ・・ス・・・」
棄てたはずの名を名乗り、がっくりと項垂れて膝をついた。
「我を謀ったのか?」
厳しい声にガバッと土下座をすると、つい数秒前までノーランだった男は、泣きながら叫んだ。
「申し訳ございません!わ、悪気はなか、なかったっ、辺境伯から息子の身代わりをしろと、行き場がなか、なかたから」
滝のように涙と汗を流し、うまく話せない。
「ソーイ・デリス?デリースか?正直に話せば、恩情を与えてやってもよい。何しろおまえにかけられている容疑は国王を騙した重罪。このままなら死罪一択だ。死にたくなければすべて話すのだな。地下牢へ連れて行け」
ノーランだった男が引きずられて行くのを、真っ白な顔で見ていたマトウが我に返る。
「陛下っわ、わたひもだまされてた」
「ほお、そうか」
「は、はいっ、あやつにだまされて」
「いいや、騙されたのは我とシーズン公爵家である。もうすべてわかっているのだ。これがなにかわかるか?」
マトウは首を傾げた。
「これは、おまえの妻だったカメリアがノーランを生んだときの医者の記録だ」
「え?」
「おまえの妻はカメリア、銀の髪に淡い菫のような瞳の持ち主で、赤子が生まれたときの髪色は銀色だと書いてあった」
「あ・・・そんな・・・」
マトウは俯いて、小さく声を漏らす。
「赤子には特徴的な黒子があった。右耳に大きな一つの黒子に見えるが、実は三つの黒子が固まっているものと、肘にもな」
ハッとしたマトウが顔を上げる。
「気づいたか?しかし少し遅かったな。本物の息子はどうした?生きているのか」
「・・・わ・・かりません」
「探したのか」
「はい。でもわかりませんでした」
「それで嘘をついたと?愚か過ぎる、本当のことを言えば良かったではないか?
おまえはひとりの若者を王への謀議の共犯にしたのだ。お前の息子と同じ年頃の若者の人生を壊したのだぞ!」
言えば言うほどに王は不愉快になっていった。
それが何故か、マトウとノーランにはわからなかったが。
王がゆっくりと頷いたのを見て、壁際にいた近衛騎士たちが一斉に剣を抜き、マトウとノーランを取り囲んだ。
「捕縛せよ!」
「なっ、なんだ何をするっ!」
「黙れ!マトウ・ローリスは謀略と不敬により捕縛し、裁判にかけられる」
「何を!そんなこと事実無根!濡衣だ!陛下っへぃ、あ?」
国王は微動だにせず、マトウを冷たく見下ろしていた。
そしてまたノーランに視線をやり。
「ノーラン・ローリス。もう一度訊ねる。其方は本当にノーラン・ローリスか?」
縄を打たれたノーランは、何を訊かれているか漸く理解した。歯がカチカチと音を立てて当たるほど震え出す。
「あ、い、いえ」
「違うのか」
「いや、これは間違いなく私の息子ですっ」
「マトウ、口を閉じておれ」
「して、ノーランでないなら、おまえは誰だ?」
「ソ、ソーイ、デリ・・ス・・・」
棄てたはずの名を名乗り、がっくりと項垂れて膝をついた。
「我を謀ったのか?」
厳しい声にガバッと土下座をすると、つい数秒前までノーランだった男は、泣きながら叫んだ。
「申し訳ございません!わ、悪気はなか、なかったっ、辺境伯から息子の身代わりをしろと、行き場がなか、なかたから」
滝のように涙と汗を流し、うまく話せない。
「ソーイ・デリス?デリースか?正直に話せば、恩情を与えてやってもよい。何しろおまえにかけられている容疑は国王を騙した重罪。このままなら死罪一択だ。死にたくなければすべて話すのだな。地下牢へ連れて行け」
ノーランだった男が引きずられて行くのを、真っ白な顔で見ていたマトウが我に返る。
「陛下っわ、わたひもだまされてた」
「ほお、そうか」
「は、はいっ、あやつにだまされて」
「いいや、騙されたのは我とシーズン公爵家である。もうすべてわかっているのだ。これがなにかわかるか?」
マトウは首を傾げた。
「これは、おまえの妻だったカメリアがノーランを生んだときの医者の記録だ」
「え?」
「おまえの妻はカメリア、銀の髪に淡い菫のような瞳の持ち主で、赤子が生まれたときの髪色は銀色だと書いてあった」
「あ・・・そんな・・・」
マトウは俯いて、小さく声を漏らす。
「赤子には特徴的な黒子があった。右耳に大きな一つの黒子に見えるが、実は三つの黒子が固まっているものと、肘にもな」
ハッとしたマトウが顔を上げる。
「気づいたか?しかし少し遅かったな。本物の息子はどうした?生きているのか」
「・・・わ・・かりません」
「探したのか」
「はい。でもわかりませんでした」
「それで嘘をついたと?愚か過ぎる、本当のことを言えば良かったではないか?
おまえはひとりの若者を王への謀議の共犯にしたのだ。お前の息子と同じ年頃の若者の人生を壊したのだぞ!」
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