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ローリスの秘密

第2話

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『ソレイ暦1632年3月6日、ローリス家にてカメリア夫人とノーラン様の往診。

カメリア様はまだ起き上がれないが、スープを口にすることが出来るようになった。脈は正常。
少し話をしたが、自分だけ国に返されると言っていた。当たり前だが、こどもをとられたくないと気に病んでおり、そのせいでよく眠れないよう。回復も遅れるはずだ。

ノーラン様は乳母に乳を飲ませてもらっている。食欲旺盛、下痢などもなし。
まだ目は開いていないが、肌色は抜けるように白い。柔らかな髪の毛が数本生えていて、どれもカメリア様と同じ銀色のようだ。

右耳たぶに大きな黒子があるとよく見たら、小さな黒子が三つ固まって一つに見えるものだった。左腕の肘にも小さな黒子。但し色は薄め』


 ボビンの指先を皆で追った。


「本当のノーラン様はやはり銀髪で、右耳たぶと左腕に黒子。特に右耳の黒子は特徴的なものですから、これを陛下に提出すれば!」
「そうね。ノーラン様はきっとシルベス人の特徴が強い方だったのだわ」


「ところでボビン、ローリスの土砂崩れらどうなったの?」
「はあ、ぼつぼつと使用人たちは戻って来ているそうですが、辺境伯とノーラン様はまだ現場らしいですよ」
「ふうん。偽物のくせに熱心ね?」

 ルブが首を傾げた。

「見つかったと言われてから、二月も経っていないのだから、ボロが出ないよう辺境伯のそばに張り付かせているのではないですか?」

 ルブの考えの方が現実的な気がした。

「そうかもしれないわね。そうして、そのうち本物らしくなって、完全に本物とすり替わってしまう。王家すら騙して?」
「そんな者が国境を守る辺境伯だなんて、とんでもないことですな」

 騎士たちが怒りを湧き上がらせているのを見ながら、

「ノーラン様に黒子があるかどうか、最低それだけは確認しておかないとだわ。お父様と一度話したいわね」
「シーズンに帰りますか?」
「まだ一度も辺境伯親子に会ってもいないのに?」
「ですよね」

 しかし、シルベスでピンを仕入れるような話とはわけが違う。
一気にかたをつけてもらわねば、ここにいるカーラたちに危険が及ぶかもしれないのだ。

「お父様、こちらに来て下さらないかしら」

 ふと口をついて出たそれは、もっとも良い策に思えたが。

「そうですねえ、カーラ様が戻られるのは目立ちそうですが、ビルス様が移動されるのもまたえらく目立ちそうですね、じゃあ私が行ってきますよ」

 ボビンはカーラの考えを却下し、こともなげに領地に行ってくると言った。

「単騎で走れば、途中で乗り替えて三日で往復出来るから。ビルス様と相談して」
「ちょっと待って!」

 今すぐ駆け出しそうだったボビンを止めたのはナラだ。

「まだ確認してないわ!ノーラン様の黒子」
「大丈夫だ、土砂崩れの現場で確認してから行くから」
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