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シルベスでの出会い

第16話

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 シオンと専属契約を結んだあと、ほくほくした気持ちのままでカーラはヴァーミル侯爵家へ向かう、ノアランとの茶会である。

「ヴァーミル侯爵様がやり手でヴァーミル領を発展させた方だと言っていたわよね」

 ボビンに訊ねると、ヴァーミル領と侯爵や夫人、二人の息子について細かく答えてくれた。

「いつ調べたの?」
「ご令息と別れたあと、すぐですよ」
「へえ、さすが」
「褒めて下さいよ!髪飾りの職人たちにはあんなに手厚いのに」

 プッとエイミが笑う。
ナラは小さくうんうんと頷いていた。

「え?あなたたちにもいつも美味しいもの用意したりしているじゃない」
「え?普通の食事じゃないですか。褒めてくれたりとかないですけど」
「さっき、さすがって言ったわ」
「それ褒めたつもりですか?渋すぎる!」

 我慢できなくなったトイルが吹き出した。

「カーラ様はあれだ!外面がいいってヤツ」

 ボビンが不貞腐れたようにそう言うと、馬に乗っていたルブたちも笑いだした。

「ふん、失礼ね!私がいいのは外面だけじゃなくてよ」
「なんのこっちゃ!」

 和やかな笑いに包まれながら、気づくとヴァーミル侯爵家に着いていた。

 門扉の前に馬車を停め、ボビンが名を名乗ると扉が開けられて、外側から見るよりずっと奥行きの深い敷地に通される。
パカパカと蹄の音を立てながら、馬車は屋敷の前までカーラたちを運んで行った。


「ごきげんよう!先日はありがとうございました。よくおいでくださいましたね」
「ごきげんよう。こちらこそご招待に預かりまして、ありがとうございます」
「本日は私と父だけ在宅しております、後ほど父もご挨拶に参りますので」

 そう言いながらノアランがエスコートし、カーラを馬車から下ろすと、ゆっくりと奥庭へ連れて行った。

 シーズン領では見たことのない花がたくさん咲いている。

「あら、この香りは」
「先日御令嬢が美味いと仰られた花茶に使うフロイリアと言う花です。ヴァーミルでは本当にどの家にもありますよ。花を摘み、乾燥させて自家製の花茶を作るんです」
「まあ、素敵!」
「今日は我が家の花茶も用意させましたので、楽しみになさっていてくださいね」

 甘い花の香りが匂い立つ中、ノアランと二人でバラとフロイリアのアーチの下を抜けていくのがとてもロマンチックだと、不覚にもカーラはうっとりしていた。

「見慣れない花も多いのではありませんか」
「そうですわね。でもどれもとても美しく可憐で、見惚れてしまいますわ」
「気にいって頂けてうれしいです」

 目の前が開けて、茶の用意が整ったガゼボが現れると、ノアランはいすを引いてカーラを座らせた。
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