29 / 149
シルベスでの出会い
第13話
しおりを挟む
「私、以前も何度かこちらに伺いましたが、このように美しく装飾された物は初めて見ましたわ」
トイルが店主に、すこーし恨みがましく言うと、すまなそうにペコリと頭を下げた。
「最近作った物なもので」
「そうなの?じゃあこれはまだ誰も知らないのかしら?」
「何人かに見せたのですが、どうしてもお値段が高くなりますもので、うちのような店にいらっしゃる方にはなかなかどうして」
「売れなかったのね?」
そう言ったカーラは、口からイヒヒヒヒと声が聞こえそうなニヤニヤ笑いを浮かべていた。
「これ全部頂きますわ!というか、よろしければ私と専属契約を結びませんこと?
毎月同じ量を納めてくだされば、その分は固定にしてお支払い、私がより多く売ることが出来たときはそれを出来高払いで上乗せして差し上げましょう!どう?どうかしら?」
カーラ以外の全員がキョトンとする。
「ちょっと、どうして誰も反応しないのよ!」
「いやいや、カーラ様そんなこと勝手に決めたらダメじゃないですか?」
ナラは諌言しながら、立てた人差し指を振る。
「私のお小遣いでやるから大丈夫よ。それにまだ誰も手を付けていない今がチャンス!私がコーテズの社交界で流行らせ、売りまくれば資金なんてすぐに回収できるわよ。ねえ、それともナラはこれ売れないと思う?」
圧がすごい、自分ならノーは言えないなとトイルは目を反らしたが。
「まあ、売れると思います。宝石を髪にも纏わせたくて、わざわざがっちり糸に編み込んでネットを作るくらいですからね。それでも踊ったりするうちに外れて失くすのはザラですから」
「でしょ、でしよ、でっしょー!でもこれは踊っても外れないのよ。私が用意した宝石をつけてもっと高級な品に仕立てたら、絶対に売れるわ。それもびっくりするほど売れるわよ!
ねえ今の話を聞いて、あなたはどうなさりたいの?」
グイグイと押されて、主はガクッと跪いた。
「おいおい、大丈夫か?」
ルブが助け起こすと、酷く汗をかいている。
「カーラ様、少しはお相手のことを気遣って差し上げなくては!」
「だって、こんな条件滅多にないことよ、お互いに!」
引く気のないカーラはまだ喋り続けている。
「あの、御令嬢・・・嬉しいとは思うのですが、見てのとおり一人で細々とやっておりめすので、とてもご期待には添えないかと思います・・・」
言葉尻がどんどんと小さくなって、自信のなさが見てとれるようだ。
カーラ以外は皆、店主を気の毒そうに見守っている。
「ご主人はこのシルベスがお好きなのかしら?」
急に話を変えたカーラに、主は無意識に誘導された。
「たまたま辿り着いたのがシルベスで」
「特別な思い入れはないのね?ではこうしましょう!私がコーテズに帰るとき、一緒にコーテズに参りましょう!そしてシーズン領で新たな店を開き、弟子を取って技術を教えるの!」
「いや、あの」
まさかそんな斜め上から来るとは誰も予想だもせず。
狼狽える店主の声はカーラの耳には届いていないようだ。
「作ったものは片っ端から売れてしまうでしょうから、何も心配はいらないわ」
おろおろと固まっている店主を見かね、ナラが話に割り込んだ。
トイルが店主に、すこーし恨みがましく言うと、すまなそうにペコリと頭を下げた。
「最近作った物なもので」
「そうなの?じゃあこれはまだ誰も知らないのかしら?」
「何人かに見せたのですが、どうしてもお値段が高くなりますもので、うちのような店にいらっしゃる方にはなかなかどうして」
「売れなかったのね?」
そう言ったカーラは、口からイヒヒヒヒと声が聞こえそうなニヤニヤ笑いを浮かべていた。
「これ全部頂きますわ!というか、よろしければ私と専属契約を結びませんこと?
毎月同じ量を納めてくだされば、その分は固定にしてお支払い、私がより多く売ることが出来たときはそれを出来高払いで上乗せして差し上げましょう!どう?どうかしら?」
カーラ以外の全員がキョトンとする。
「ちょっと、どうして誰も反応しないのよ!」
「いやいや、カーラ様そんなこと勝手に決めたらダメじゃないですか?」
ナラは諌言しながら、立てた人差し指を振る。
「私のお小遣いでやるから大丈夫よ。それにまだ誰も手を付けていない今がチャンス!私がコーテズの社交界で流行らせ、売りまくれば資金なんてすぐに回収できるわよ。ねえ、それともナラはこれ売れないと思う?」
圧がすごい、自分ならノーは言えないなとトイルは目を反らしたが。
「まあ、売れると思います。宝石を髪にも纏わせたくて、わざわざがっちり糸に編み込んでネットを作るくらいですからね。それでも踊ったりするうちに外れて失くすのはザラですから」
「でしょ、でしよ、でっしょー!でもこれは踊っても外れないのよ。私が用意した宝石をつけてもっと高級な品に仕立てたら、絶対に売れるわ。それもびっくりするほど売れるわよ!
ねえ今の話を聞いて、あなたはどうなさりたいの?」
グイグイと押されて、主はガクッと跪いた。
「おいおい、大丈夫か?」
ルブが助け起こすと、酷く汗をかいている。
「カーラ様、少しはお相手のことを気遣って差し上げなくては!」
「だって、こんな条件滅多にないことよ、お互いに!」
引く気のないカーラはまだ喋り続けている。
「あの、御令嬢・・・嬉しいとは思うのですが、見てのとおり一人で細々とやっておりめすので、とてもご期待には添えないかと思います・・・」
言葉尻がどんどんと小さくなって、自信のなさが見てとれるようだ。
カーラ以外は皆、店主を気の毒そうに見守っている。
「ご主人はこのシルベスがお好きなのかしら?」
急に話を変えたカーラに、主は無意識に誘導された。
「たまたま辿り着いたのがシルベスで」
「特別な思い入れはないのね?ではこうしましょう!私がコーテズに帰るとき、一緒にコーテズに参りましょう!そしてシーズン領で新たな店を開き、弟子を取って技術を教えるの!」
「いや、あの」
まさかそんな斜め上から来るとは誰も予想だもせず。
狼狽える店主の声はカーラの耳には届いていないようだ。
「作ったものは片っ端から売れてしまうでしょうから、何も心配はいらないわ」
おろおろと固まっている店主を見かね、ナラが話に割り込んだ。
0
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説
迅英の後悔ルート
いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。
この話だけでは多分よく分からないと思います。
えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?
真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。
完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!
音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。
頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。
都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。
「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」
断末魔に涙した彼女は……
推しの負けヒロインの親友ポジに転生したので全力で推しを勝たせたいと思います!
むこう
恋愛
普通の女子大生だった私、天童雅には、心から愛する異世界恋愛小説のキャラクターがいた。
名前はリリア。リリアは「負けヒロイン」──正ヒロインに王子様を奪われ、幸せを掴めない彼女。
しかしドジっ子で自信がないけれど、何事にも一生懸命な彼女に私は惹かれていた。
そんなある日、彼女のフィギュアを手に入れて大満足で家に帰る途中、突然の事故に遭い気がつけばその物語の中に転生していた!しかも、私は彼女の親友ポジションのキャラクターに転生していたのだ。
これはもう、神様が私に与えたチャンスかもしれない!大好きな彼女を勝たせるために、私は彼女を全力でサポートし、毎日彼女を褒めちぎって自己肯定感を高める作戦に出る!二人で一緒に王子様を目指し、正ヒロインに挑む日々が始まる──!
彼女が幸せになれる未来を、私が創ってみせる!
とびきりのクズに一目惚れし人生が変わった俺のこと
未瑠
BL
端正な容姿と圧倒的なオーラをもつタクトに一目惚れしたミコト。ただタクトは金にも女にも男にもだらしがないクズだった。それでも惹かれてしまうタクトに唐突に「付き合おう」と言われたミコト。付き合い出してもタクトはクズのまま。そして付き合って初めての誕生日にミコトは冷たい言葉で振られてしまう。
それなのにどうして連絡してくるの……?
好き。ずっと。
野兎 いちご
恋愛
幼稚園からの幼馴染の男の子。
同い年の男の子。
大好き。大好き大好き大好き。
でも、あの子は私の事別に好きじゃないみたい?
私の気持ち、知ってるくせに。
でもいいの。そんなあなたが好きだから。
single tear drop
ななもりあや
BL
兄だと信じていたひとに裏切られた未知。
それから3年後。
たった一人で息子の一太を育てている未知は、ある日、ヤクザの卯月遥琉と出会う。
素敵な表紙絵は絵師の佐藤さとさ様に描いていただきました。
一度はチャレンジしたかったBL大賞に思いきって挑戦してみようと思います。
よろしくお願いします
【完結】小国の婚約破棄騒動とその行方
かのん
恋愛
これは少し普通とは違う婚約破棄騒動のお話。
婚約破棄の真相と、運命に翻弄される小国の少女の勇敢な決断のお話。
ハッピーエンドかは、人それぞれの解釈によるかもしれません。コメディ要素が今回はありませんので、それでもかまわない方は読んで下さい。
一話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる