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シルベスでの出会い

第13話

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「私、以前も何度かこちらに伺いましたが、このように美しく装飾された物は初めて見ましたわ」

 トイルが店主に、すこーし恨みがましく言うと、すまなそうにペコリと頭を下げた。

「最近作った物なもので」
「そうなの?じゃあこれはまだ誰も知らないのかしら?」
「何人かに見せたのですが、どうしてもお値段が高くなりますもので、うちのような店にいらっしゃる方にはなかなかどうして」
「売れなかったのね?」

 そう言ったカーラは、口からイヒヒヒヒと声が聞こえそうなニヤニヤ笑いを浮かべていた。

「これ全部頂きますわ!というか、よろしければ私と専属契約を結びませんこと?
毎月同じ量を納めてくだされば、その分は固定にしてお支払い、私がより多く売ることが出来たときはそれを出来高払いで上乗せして差し上げましょう!どう?どうかしら?」

 カーラ以外の全員がキョトンとする。

「ちょっと、どうして誰も反応しないのよ!」
「いやいや、カーラ様そんなこと勝手に決めたらダメじゃないですか?」

 ナラは諌言しながら、立てた人差し指を振る。

「私のお小遣いでやるから大丈夫よ。それにまだ誰も手を付けていない今がチャンス!私がコーテズの社交界で流行らせ、売りまくれば資金なんてすぐに回収できるわよ。ねえ、それともナラはこれ売れないと思う?」

 圧がすごい、自分ならノーは言えないなとトイルは目を反らしたが。

「まあ、売れると思います。宝石を髪にも纏わせたくて、わざわざがっちり糸に編み込んでネットを作るくらいですからね。それでも踊ったりするうちに外れて失くすのはザラですから」
「でしょ、でしよ、でっしょー!でもこれは踊っても外れないのよ。私が用意した宝石をつけてもっと高級な品に仕立てたら、絶対に売れるわ。それもびっくりするほど売れるわよ!
ねえ今の話を聞いて、あなたはどうなさりたいの?」

 グイグイと押されて、主はガクッと跪いた。

「おいおい、大丈夫か?」

 ルブが助け起こすと、酷く汗をかいている。

「カーラ様、少しはお相手のことを気遣って差し上げなくては!」
「だって、こんな条件滅多にないことよ、お互いに!」

 引く気のないカーラはまだ喋り続けている。

「あの、御令嬢・・・嬉しいとは思うのですが、見てのとおり一人で細々とやっておりめすので、とてもご期待には添えないかと思います・・・」

 言葉尻がどんどんと小さくなって、自信のなさが見てとれるようだ。
カーラ以外は皆、店主を気の毒そうに見守っている。

「ご主人はこのシルベスがお好きなのかしら?」

 急に話を変えたカーラに、主は無意識に誘導された。

「たまたま辿り着いたのがシルベスで」
「特別な思い入れはないのね?ではこうしましょう!私がコーテズに帰るとき、一緒にコーテズに参りましょう!そしてシーズン領で新たな店を開き、弟子を取って技術を教えるの!」
「いや、あの」

 まさかそんな斜め上から来るとは誰も予想だもせず。
狼狽える店主の声はカーラの耳には届いていないようだ。

「作ったものは片っ端から売れてしまうでしょうから、何も心配はいらないわ」

 おろおろと固まっている店主を見かね、ナラが話に割り込んだ。
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