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シルベスでの出会い

第12話

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「はい、何でございましょうか」
「カンザシってなんですの?髪を留めたりできるのはわかったのですけれど、初めて見た物なので、どこの物なのか気になりましたの」
「ああ。私を見ればおわかりになったかもしれませんが、カンザシは遠く東方にある国の髪留めや髪飾りです」
「まあ、東方の!どおりでエキゾチックな雰囲気がありますわね。この塗料はなんですの?」

 昨日ノアランから貰った手鏡にも使われていた、艷やかでしっとりした感触の塗料が気になった。

「ウルシといいますが、ご存知ない方も多いようですね」
「ウルシ?聞いたことがありますわ、兄が通った道に生えていたせいでかぶれて」
「それです!その木から樹液を採って、彩色に使っているんです」
「貝や石も散らしていらっしゃるの?」
「はい、華やかさを出すには、何かもう少し必要ですから」

 訊ねたすべてに丁寧に答えてくれる主は、自ら述べたようにシルベスでもコーテズでも見かけない、細い目の、なんというか薄い顔立ちをしている。
 カーラにとってはシルベスの人々も異国人だが、こうして見ると東方の人々は根幹から違う人種ではないかとさえ思えるほどだ。

「こちらの文化に合わせたものもございますよ、ご覧になりますか?」

 頷いたカーラに頷き、一度奥に戻って細長い箱をいくつか持って来た。

「これはドレスにも合わせやすいように、安物ですが宝石を取り付けています」

 蓋を開けようとしている店主にカーラが声を上げた。

「ピンに宝石をつけると重みで落としてしまうことが多いから、ダンスのある夜会にはつけられませんのよ」
「はい、ですがこちらは落ちにくいように細工がされているので、大丈夫でございまして」

 包んでいた布を捲って、中からキラキラと光る一本のカンザシを引っぱりだすと、カーラが首を傾げた。

カンザシの棒の部分がギザギザ波打っている。

「波部分があることで通常のピンよりしっかりとお髪に絡みます。
それにこうして上からもう一本ピンを留めると、ちょっと踊ったくらいでは抜けません。
どうぞお試し下さい」

 渡されたカンザシを受け取ったトイルがカーラの髪に差し込むと、なるほどそれだけでもがっちりと噛んでいる気がする。

「ルブ、ちょっとダンス!」
「え?」
「ほら早く、くるくる踊らせなさいよ」

 仕方なさそうにカーラの手を取り、踊るようにくるくるくるりと回してやると、ステップを踏みながら回るカーラに合わせ、巻かれた毛先は揺れるものの、カンザシは頭皮にしがみついているかのようにビクともしないのだ!

「すごいっ!これなら失くさずに済むじゃない!」

 カーラとトイルたち女性陣のテンションが一気に上がった。
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