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47話
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一息ついたあと、ふたりはドレインが口を開くのを静かに待った。
呼吸を整える姿を見るに、よほどのことなのだと想像がついたから。
「ローズリー・ワンドには付き合っていた女性がいました」
バレてしまうかもしれないが、せめてもの恩情のつもりで過去形にして話していた。
「その女性がレンラ令嬢との結婚をローズリーに勧めたようで」
怪訝な顔をしたミヒアは速攻で「何故?」と突っ込んだ。
「私が調べたところローズリーとレンラ令嬢を結婚させ、令嬢の財産を奪おうと考えたようです」
「財産を奪う?何を馬鹿なことを。そんなの相手を・・!」
「そう、たぶんその女はそのつもりです。証拠はありませんが、私の推測ではそうしてローズリーが財産を手にしたら、今度は女がローズリーと結婚してその財産を奪い、最後にそれを手土産に恋人と結婚するつもりかと」
ミヒアとナミリアは顔を見合わせた。
複雑にからみ合い、何がなんだかわからなくなったのだ。
ドレインはカバンからメモとペンを出して図解してやった。
ローズリーと女、女とその恋人と矢印で繋げていく。
「こうなったら、ここがこうしようと・・・するかと」
愕然としたミヒアとナミリア。
先に我に返ったのはミヒアの方だ。
「なんてこと!それが本当なら大変なことよナミリアさん」
「ミヒア様、私どうしたらよろしいのかしら、ローズリー様のことも心配ですわ」
「大丈夫よ!事が知れた以上、私たちイールズ家とレンラ家が全力であなたを守るから心配しないで」
手を握り合ったあと、ミヒアはドレインを見た。
「どうして発覚したのか、経緯を聞いても?」
「はい。まずローズリーが昔の恋人をメイドに雇ってやっていると聞いて、驚いたことから始まりました。その女性がおとなしくメイドなどするような性格ではない上、普段はローズリーの目が届かない別邸にいると聞き、心配になったのです」
別邸と聞いて、ミヒアはピンときた。
ローズリー・ワンドは暫く前まで足繁く別邸に通っていた。それが最近遠のいていると金をやって見張らせた農民が言っていたらしい。
「そう・・・。そこからどうしてここまでの話がわかったの?」
「まず私はローズリーとは幼馴染で、ワンド子爵家とも親しくしてきました。使用人もよく知る者が多いのです。
そして私は王宮で調査官として勤めており、調べごとは得意です」
「調査官?」
ナミリアは首を傾げたが、ミヒアはああ!と納得した顔をした。
「ワンド別邸はその女一人に任されており、少し見張っただけですぐ、商人らしい恋人のひとりが来ました。女はローズリーが不在の時に恋人と子爵家で逢引きしており、その時に話していたのを・・・ゴホン!・・・聞いたのです」
ドレインは盗み聞きしたと言いかけて、慌てて誤魔化した。
「また女にはもう一人貴族の恋人がおり、こちらが本命のようですが、どんな会話を交わしたか今まだ掴めておりません」
頷いたミヒアが疑問点を訊ねていく。
「はっきりと財産を奪うとか話しているのを聞いたのかしら?」
「はい、私がこの耳で聞いたので間違いありません」
「そう・・・。ワンド子爵はそのことを知っているの?」
「知ってはいるのですが、残念ながらそれが何を意図するか、はっきりわかっていないようです。もともとは真っ正直な男ですから、意味を理解したら引くと思いますよ」
ドレインは何故、エランディアにナミリアの財産を奪おうと言われたとき頷いてしまったのかと、疑問に思ったのだが。
今自分の口を通して発せられた言葉で、ローズリーは奪うことがナミリアの命をも、とは理解していなかったのだと改めて腹に落ちた。
そしてミヒアは、女がはっきりとローズリーに迫ったから、ローズリーは女に距離を置くようになったのだろうと考えていた。
呼吸を整える姿を見るに、よほどのことなのだと想像がついたから。
「ローズリー・ワンドには付き合っていた女性がいました」
バレてしまうかもしれないが、せめてもの恩情のつもりで過去形にして話していた。
「その女性がレンラ令嬢との結婚をローズリーに勧めたようで」
怪訝な顔をしたミヒアは速攻で「何故?」と突っ込んだ。
「私が調べたところローズリーとレンラ令嬢を結婚させ、令嬢の財産を奪おうと考えたようです」
「財産を奪う?何を馬鹿なことを。そんなの相手を・・!」
「そう、たぶんその女はそのつもりです。証拠はありませんが、私の推測ではそうしてローズリーが財産を手にしたら、今度は女がローズリーと結婚してその財産を奪い、最後にそれを手土産に恋人と結婚するつもりかと」
ミヒアとナミリアは顔を見合わせた。
複雑にからみ合い、何がなんだかわからなくなったのだ。
ドレインはカバンからメモとペンを出して図解してやった。
ローズリーと女、女とその恋人と矢印で繋げていく。
「こうなったら、ここがこうしようと・・・するかと」
愕然としたミヒアとナミリア。
先に我に返ったのはミヒアの方だ。
「なんてこと!それが本当なら大変なことよナミリアさん」
「ミヒア様、私どうしたらよろしいのかしら、ローズリー様のことも心配ですわ」
「大丈夫よ!事が知れた以上、私たちイールズ家とレンラ家が全力であなたを守るから心配しないで」
手を握り合ったあと、ミヒアはドレインを見た。
「どうして発覚したのか、経緯を聞いても?」
「はい。まずローズリーが昔の恋人をメイドに雇ってやっていると聞いて、驚いたことから始まりました。その女性がおとなしくメイドなどするような性格ではない上、普段はローズリーの目が届かない別邸にいると聞き、心配になったのです」
別邸と聞いて、ミヒアはピンときた。
ローズリー・ワンドは暫く前まで足繁く別邸に通っていた。それが最近遠のいていると金をやって見張らせた農民が言っていたらしい。
「そう・・・。そこからどうしてここまでの話がわかったの?」
「まず私はローズリーとは幼馴染で、ワンド子爵家とも親しくしてきました。使用人もよく知る者が多いのです。
そして私は王宮で調査官として勤めており、調べごとは得意です」
「調査官?」
ナミリアは首を傾げたが、ミヒアはああ!と納得した顔をした。
「ワンド別邸はその女一人に任されており、少し見張っただけですぐ、商人らしい恋人のひとりが来ました。女はローズリーが不在の時に恋人と子爵家で逢引きしており、その時に話していたのを・・・ゴホン!・・・聞いたのです」
ドレインは盗み聞きしたと言いかけて、慌てて誤魔化した。
「また女にはもう一人貴族の恋人がおり、こちらが本命のようですが、どんな会話を交わしたか今まだ掴めておりません」
頷いたミヒアが疑問点を訊ねていく。
「はっきりと財産を奪うとか話しているのを聞いたのかしら?」
「はい、私がこの耳で聞いたので間違いありません」
「そう・・・。ワンド子爵はそのことを知っているの?」
「知ってはいるのですが、残念ながらそれが何を意図するか、はっきりわかっていないようです。もともとは真っ正直な男ですから、意味を理解したら引くと思いますよ」
ドレインは何故、エランディアにナミリアの財産を奪おうと言われたとき頷いてしまったのかと、疑問に思ったのだが。
今自分の口を通して発せられた言葉で、ローズリーは奪うことがナミリアの命をも、とは理解していなかったのだと改めて腹に落ちた。
そしてミヒアは、女がはっきりとローズリーに迫ったから、ローズリーは女に距離を置くようになったのだろうと考えていた。
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