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43話 ドレイン・トロワー
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ドレインはメッへーから助手をふたりつけてもらい、ひとりはナミリアの周囲を、もうひとりはエランディアとアレン・ジメンクスの調査に当たらせた。
早々に上がってきたナミリアの報告書には、今のナミリアの資産状況が覗える。
ナミリア・レンラはイールズ商会長で男爵夫人ミヒアとロリーン・レイザ・トラス女男爵と三人で共同出資し、工房を起ち上げている。
ナミリアの元資はイールズ夫人からの贈与資産と見られるため、財産の殆どは今事業に注ぎ込まれているだろうと書かれていた。
工房の女工の半分はチューラルンゲからの出稼ぎ、残り半分は自国の農家の女たちを育成しているところで、現時点での主な収益は出稼ぎ女工たちが生み出しているが、収益を上げる道筋は見えており、東国が独占してきた市場に参入した功績は大きい。
事業を始めてからのナミリアは、女性たちが収入をあげて独立した豊かな生活を送れるようにしたいと発言しており、王妃もその言動を気に入られていると噂のようだ。
そこまで読んで、もしナミリアが狙われ、いや万一害されるようなことがあれば国の大損失となる可能性が高く、メッへーの命令もあながち間違いではないと気がついた。
「アレン・ジメンクス次期伯爵について」
一体いつからアレンとエランディアは付き合っていたのだろう。
「まったく知らなかったな」
ドレインの知るアレンはいろいろと凡庸な男である。
成績は勉強も武術も中くらい、積極的にクラスに関わる性格ではなく、何となく教室にいるが存在感は薄い。長すぎる前髪に隠された瞳が、何を考えているのかよくわからない男だった。
ようするにドレインはアレンを顔くらいしか知らなかったのだ。
情報は少ないが、何故かよい印象のない男。
調査によると、やはり結婚はしていた。
しかし一年の結婚生活ののちに妻が病死しており、現在は独身。
「じゃあ堂々と会っても問題ないじゃないか。後妻なら前妻より格落ちすることはよくあるぞ」
だというのに、あれほど厳重にエランディアとの接点を隠すのは何故か。
「伯爵が反対してるとか?」
それはありうることだ。
現にローズリーも最初イールズ男爵夫人の姪と聞いて先代ワンド子爵は大乗り気だった。しかしミヒア夫人が姉とエランディアに距離を置いていることを知って、態度を変えたのだから。
「まだ嫡男の身だからな」
ジメンクス伯爵家の調査結果は、今のところこれというものはない。
伯爵はかなり威圧的で権威権力が好きな性格。
だとすればアレンの警戒ぶりも理解できると頷いた。何しろ場末の食堂のむすめに過ぎないのだから。
ふとドレインの脳裏によくない想像が駆け巡った。
例えばエランディアがワンド子爵夫人となったあとならどうだろうか?
ローズリーがレンラ令嬢と結婚して財産を奪ったあと、今度はエランディアとアレンがローズリーの財産を奪う。
そして被害者のような顔で未亡人となった元子爵夫人エランディアが、アレンに嫁ぐとしたら?
ローズリーに子がいなければ、アレンがまずワンド子爵家を継承し、その後にジメンクス伯爵家を継ぐ?
爵位と小さな領地がついてくるならジメンクス伯爵家にとっては濡れ手に粟ではないか。
そこまで考えて、ドレインはゾッとした。
「いや奴らがそこまで考えているなんて限らないぞ。きっと行き当たりばったり、金の匂いを嗅ぎつけただけに違いない」
そうでなければナミリア・レンラとローズリーは・・・。
ぶるぶるっと頭を振って、湧き上がった考えを吹き飛ばしたドレインだった。
早々に上がってきたナミリアの報告書には、今のナミリアの資産状況が覗える。
ナミリア・レンラはイールズ商会長で男爵夫人ミヒアとロリーン・レイザ・トラス女男爵と三人で共同出資し、工房を起ち上げている。
ナミリアの元資はイールズ夫人からの贈与資産と見られるため、財産の殆どは今事業に注ぎ込まれているだろうと書かれていた。
工房の女工の半分はチューラルンゲからの出稼ぎ、残り半分は自国の農家の女たちを育成しているところで、現時点での主な収益は出稼ぎ女工たちが生み出しているが、収益を上げる道筋は見えており、東国が独占してきた市場に参入した功績は大きい。
事業を始めてからのナミリアは、女性たちが収入をあげて独立した豊かな生活を送れるようにしたいと発言しており、王妃もその言動を気に入られていると噂のようだ。
そこまで読んで、もしナミリアが狙われ、いや万一害されるようなことがあれば国の大損失となる可能性が高く、メッへーの命令もあながち間違いではないと気がついた。
「アレン・ジメンクス次期伯爵について」
一体いつからアレンとエランディアは付き合っていたのだろう。
「まったく知らなかったな」
ドレインの知るアレンはいろいろと凡庸な男である。
成績は勉強も武術も中くらい、積極的にクラスに関わる性格ではなく、何となく教室にいるが存在感は薄い。長すぎる前髪に隠された瞳が、何を考えているのかよくわからない男だった。
ようするにドレインはアレンを顔くらいしか知らなかったのだ。
情報は少ないが、何故かよい印象のない男。
調査によると、やはり結婚はしていた。
しかし一年の結婚生活ののちに妻が病死しており、現在は独身。
「じゃあ堂々と会っても問題ないじゃないか。後妻なら前妻より格落ちすることはよくあるぞ」
だというのに、あれほど厳重にエランディアとの接点を隠すのは何故か。
「伯爵が反対してるとか?」
それはありうることだ。
現にローズリーも最初イールズ男爵夫人の姪と聞いて先代ワンド子爵は大乗り気だった。しかしミヒア夫人が姉とエランディアに距離を置いていることを知って、態度を変えたのだから。
「まだ嫡男の身だからな」
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伯爵はかなり威圧的で権威権力が好きな性格。
だとすればアレンの警戒ぶりも理解できると頷いた。何しろ場末の食堂のむすめに過ぎないのだから。
ふとドレインの脳裏によくない想像が駆け巡った。
例えばエランディアがワンド子爵夫人となったあとならどうだろうか?
ローズリーがレンラ令嬢と結婚して財産を奪ったあと、今度はエランディアとアレンがローズリーの財産を奪う。
そして被害者のような顔で未亡人となった元子爵夫人エランディアが、アレンに嫁ぐとしたら?
ローズリーに子がいなければ、アレンがまずワンド子爵家を継承し、その後にジメンクス伯爵家を継ぐ?
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そこまで考えて、ドレインはゾッとした。
「いや奴らがそこまで考えているなんて限らないぞ。きっと行き当たりばったり、金の匂いを嗅ぎつけただけに違いない」
そうでなければナミリア・レンラとローズリーは・・・。
ぶるぶるっと頭を振って、湧き上がった考えを吹き飛ばしたドレインだった。
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