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メンシアの、数日後には静養施設として開業する建物で、アレクシオスとパルティアは両親や友人たちに囲まれ、婚約式を行った。
滞在中だったニーチェルも、幸せそうなふたりに目を細める。
「婚姻は一年後とする」
何故かカーライルではなく、アレクシオスを婿に送り出すランバルディが仕切り、結婚式までの段取りもどんどん決めていく。
調印を終えると、祝いの食事で皆を饗した。
「パルティア嬢、ちょっといいかな」
ランバルディに呼ばれ、アレクシオスとともにそばに寄る。
「何でございましょうか?」
「我が息子アレクシオスをどうかよろしく頼みます」
そう言うと頭を下げたので、まわりの皆がひゅっと息を呑んだ。
「そ、そんな、お顔をお上げくださいませ」
「父上・・・」
皆の目を感激に湿らせたと思ったら、急に声色を変える。
「それで次の施設の場所はもう決めたのか?」
さっきまでの真摯な顔ではない。
金儲けに目をキラキラさせた貴族がそこにいた。
それから半年後。
三軒目の町中の施設は開業直後から大変な繁盛ぶりとなった。
当然貴族向けの施設より宿泊料はかなり安いのだが、部屋が狭い分客室数が多く、日帰り入浴の効果もあって、収益は鰻登りである。
それに味をしめたランバルディが後ろ盾となり、セリアズ公爵領地やエンダライン侯爵領地にいくつもの施設が計画され始めた。
婚約期間を無事に終えたパルティアたちは結婚式を迎えた。
いや、無事ではない。
セリアズ、エンダラインとベンベロー、シリドイラの四手に追われたオートリアスが、ある日パルティアの前に現れたのだ。
ライラはとうに捕縛され、シリドイラの修道院に幽閉されたと聞いてはいた。
その際エイリズも、カーライルとランバルディに証拠を突き付けられて断罪され、ベンベローは家を残すため当然のようにオートリアスとエイリズを切り捨てた。
それまではなんとかオートリアスを救済する方法はないものかと探っていたベンベロー侯爵夫妻が、まさかエイリズが黒幕、それに躍らされた愚か者がオートリアスと知り、ベンベロー侯爵は匙を投げたのだ。
この件でベンベロー家は領地の一部を売却し、セリアズとエンダラインに慰謝料を上乗せして支払うと申し入れてきたので、金はいらぬがその土地をもっと大きくよこせとランバルディが圧をかけた。
受け取り主はもちろん、パルティアとアレクシオスである。
「これでさらに事業が進めやすくなったな」
「ベンベローからこんなに毟り取ったのか?いくらなんでも酷いのでは?」
カーライルが同情するほど広い領地を、ベンベローは若いふたりに移譲した。
「なんの。己が息子たちを管理していなかったのだから当然の結果であろう。土地を寄越したことで我らは口を噤む。さすれば爵位が守れ、嫡男はベンベロー侯爵になれるのだ。口止め料も上乗せされたと思えば安いものだ。それでオートリアスはまだみつからんのか?ライラを見捨てて逃げるとは情けない男だが」
「ああ。エイリズを捕まえたところまでは良かったのだが・・・。そういえばシリドイラ家は本当にベンベローを訴えるのか?」
「いや、何もできんだろう。
いくらエイリズに唆されたと言ってもその気になったのはライラなのだから、ベンベローを責めるなど片腹痛いというものだ。
まったくバカな奴等で驚いたわ。いやしかし、あんなのと姻戚とならずに済んで、エイリズには感謝してもよいかも知れぬ」
そんなことはこれっぽっちも思っていないが。
「とにかく広大な土地が手に入ったのだ。いくつかの宿場町を含むから、また事業計画を起こさせよう」
カーライルは、ランバルディの青い瞳に金が写っているように見えて、思わずゴシゴシと擦っていた。
滞在中だったニーチェルも、幸せそうなふたりに目を細める。
「婚姻は一年後とする」
何故かカーライルではなく、アレクシオスを婿に送り出すランバルディが仕切り、結婚式までの段取りもどんどん決めていく。
調印を終えると、祝いの食事で皆を饗した。
「パルティア嬢、ちょっといいかな」
ランバルディに呼ばれ、アレクシオスとともにそばに寄る。
「何でございましょうか?」
「我が息子アレクシオスをどうかよろしく頼みます」
そう言うと頭を下げたので、まわりの皆がひゅっと息を呑んだ。
「そ、そんな、お顔をお上げくださいませ」
「父上・・・」
皆の目を感激に湿らせたと思ったら、急に声色を変える。
「それで次の施設の場所はもう決めたのか?」
さっきまでの真摯な顔ではない。
金儲けに目をキラキラさせた貴族がそこにいた。
それから半年後。
三軒目の町中の施設は開業直後から大変な繁盛ぶりとなった。
当然貴族向けの施設より宿泊料はかなり安いのだが、部屋が狭い分客室数が多く、日帰り入浴の効果もあって、収益は鰻登りである。
それに味をしめたランバルディが後ろ盾となり、セリアズ公爵領地やエンダライン侯爵領地にいくつもの施設が計画され始めた。
婚約期間を無事に終えたパルティアたちは結婚式を迎えた。
いや、無事ではない。
セリアズ、エンダラインとベンベロー、シリドイラの四手に追われたオートリアスが、ある日パルティアの前に現れたのだ。
ライラはとうに捕縛され、シリドイラの修道院に幽閉されたと聞いてはいた。
その際エイリズも、カーライルとランバルディに証拠を突き付けられて断罪され、ベンベローは家を残すため当然のようにオートリアスとエイリズを切り捨てた。
それまではなんとかオートリアスを救済する方法はないものかと探っていたベンベロー侯爵夫妻が、まさかエイリズが黒幕、それに躍らされた愚か者がオートリアスと知り、ベンベロー侯爵は匙を投げたのだ。
この件でベンベロー家は領地の一部を売却し、セリアズとエンダラインに慰謝料を上乗せして支払うと申し入れてきたので、金はいらぬがその土地をもっと大きくよこせとランバルディが圧をかけた。
受け取り主はもちろん、パルティアとアレクシオスである。
「これでさらに事業が進めやすくなったな」
「ベンベローからこんなに毟り取ったのか?いくらなんでも酷いのでは?」
カーライルが同情するほど広い領地を、ベンベローは若いふたりに移譲した。
「なんの。己が息子たちを管理していなかったのだから当然の結果であろう。土地を寄越したことで我らは口を噤む。さすれば爵位が守れ、嫡男はベンベロー侯爵になれるのだ。口止め料も上乗せされたと思えば安いものだ。それでオートリアスはまだみつからんのか?ライラを見捨てて逃げるとは情けない男だが」
「ああ。エイリズを捕まえたところまでは良かったのだが・・・。そういえばシリドイラ家は本当にベンベローを訴えるのか?」
「いや、何もできんだろう。
いくらエイリズに唆されたと言ってもその気になったのはライラなのだから、ベンベローを責めるなど片腹痛いというものだ。
まったくバカな奴等で驚いたわ。いやしかし、あんなのと姻戚とならずに済んで、エイリズには感謝してもよいかも知れぬ」
そんなことはこれっぽっちも思っていないが。
「とにかく広大な土地が手に入ったのだ。いくつかの宿場町を含むから、また事業計画を起こさせよう」
カーライルは、ランバルディの青い瞳に金が写っているように見えて、思わずゴシゴシと擦っていた。
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