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 ふたりきりになる。
と言ってもお互いに侍女侍従を控えさせているので、まったくのふたりきりではないが、ちらちらと視線を合わせ、交わし、逸らすもどかしい姿に、ニーナは拳を握りしめていた。

 可愛らしいとも言えるが、じれったくて、後ろからパルティアに向けてアレクシオスを突き飛ばしてやりたくなったほどである。

「あの、ではこちらの進捗を話そう」

 せっかくいい雰囲気だったのに、アレクシオスが仕事の話を始めてしまい、ニーナは地団駄を踏む。ふと見ると、アレクシオスの侍従も拳を握りしめて食い入るようにふたりを見つめていた。


 アレクシオスが席を立ち、大きな籠を持って来るとパルティアの前に置いて、また座り直す。

「これ、アメニティですわね」

 ソープや優しい手触りのタオルなどが詰め込まれており、顔を寄せると品の良さを感じさせる優しい香りが鼻に届いた。

「素敵な香りだわ」
「メニアがこの地域の花を教えてくれたので、使ってみたんだ」

 メニアはパルティアがエルシドで最初に親しくなった平民の少女の一人である。
静養施設ができたらもちろんそこで働いてもらうつもりでいるが、地元との繋がりに一役買ってくれている。

 ダルディーンたちとともに建物を建てる地元の大工たちは、メニアが紹介してくれ、設計の準備が出来たらすぐ仕事に入れるように待機している。
 パルティアはその待機期間も全額ではないながらも一定の日当を払うと決めており、工事が始まるまでも大工たちは安心して待つことができたのだった。

 翌日、その大工たちとダルディーン、現場監督になるミルツたちの顔合わせが行われた。
 設計図はダルディーンが夜通しで描き上げ、資材の手配も済ませており、それが届いたらすぐ建築開始だ。

「これは随分シンプルな装飾ですね」

 大工のフィンが意外そうに言う。

「貴族が泊まると言っても疲れて休むための場所だから、装飾は控えめに、でもほら」

 ダルディーンが、貴族の好みそうな装飾を目立たぬよう配置していることを、図面を手に指し示す。

「なるほど」
「やってくれるかな?」

 ダルディーンとミルツ、大工の棟梁が話し込むとパルティアは茶の用意を手配してその場を離れた。

「出来上がりが楽しみだ」
「本当に!」

 建築が始まると、パルティアはダルディーンとミルツにそちらを任せて、アレクシオス、そしてメニアとエリオラ、アンシュという三人の少女たちと相談を重ねる。

 パルティアはこの三人を中心に任せるつもりでいたが、話を進めるほどに、貴族相手に慣れた者が必要だと痛感するようになっていた。
 言葉遣いや所作など、このままが彼女たちらしさなのだが、それがいいという者だけではないだろうと気がつくことが節々にあったから。

「アレクシオス様、ご相談がありますの」
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