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ランバルディ・セリアズ公爵が嫡男レンドルフに家と領地を任せ、湖畔の町エルシドに現れたのはその二日後。
パルティアがあと三日で帰郷するというぎりぎりのタイミングだった。
こじんまりとしたセリアズ公爵家別邸前をゆっくりと通り過ぎながら、アレクシオスの馬車があるかどうかを確認し、無いと見るとパルティアが宿泊すると聞くコテージへと向かう。
そこでもゆっくりと馬車を走らせて、公爵家の馬車があることに気づくとニンマリとした。
「この辺のどこか目立たないところに停めてくれ」
途中の宿場で買った不味い食事を馬車の中で食しながら、密かにコテージを見張る。
ふたり、アレクシオスとパルティアが並ぶ姿を見てみたかったから。
窓を少しだけ開け、じっと外の様子を覗っていると、話し声や笑い声が聞こえてくる。
「あれはアレクシオスか?」
朗らかで大きな笑い声に、様子を見なくとも二人がどんな様子で笑い転げているかが想像できる。
もちろん貴族ともなれば、特に令嬢があのように大きな声で笑うなどはしたないと叱られて然るべきだが、子どものように屈託なく笑いあう姿が目に浮かび、ほんの数週間前死にかけていた愛息を引き戻し、立ち直らせつつある笑い声だと思うと、それすらも愛おしく思えてくるから不思議なものだ。
「姿を見てみたいな」
窓をもう少し大きく開き、辺りを窺うもそれらしき者はいない。
扉を開けて馬車から下りると護衛がすっと配置について、ランバルディが歩くとおりに影が添えられていく。
「どの辺りにいるのだろうな?」
屋敷の外にいるようだ。
コテージを囲む塀の内側・・・
護衛を何人も引き連れて、立派な身なりだが不審な貴族が覗いているとパルティアに知らせが入り、アレクシオスとふたり、足音を潜めて見に行くと。
「ちっ、父上っ!なななにして?」
「あっ!アレクシオス!しまった」
「父上?え?セリアズ公爵様?」
三人はそれぞれに顔を見合わせて。
「何してるんですかーっ!」
セリアズ公爵はアレクシオスに叱られた。
「まあまあ、アレクシオス様そのへんでね」
しゅんと小さくなったランバルディを見かねて、パルティアが仲裁に入る。
「うむ、すまなかった。アレクシオスが元気になった姿がどうしても一目見たくて、飛んできてしまったのだ」
本当は少し違うが。
「お父上様に大変なご心配をおかけしたのに、アレクシオス様のために遠路を飛ばして来られたのですから、もっとお優しく労って差し上げても罰は当たりませんことよ」
そうアレクシオスを諌めたパルティアに、ランバルディは感動した。
いままでアレクシオスのまわりにいた者たちはランバルディの知る限り皆、アレクシオスの機嫌を取り、常に先回りして何でもしてやっていた。
このようにアレクシオスを諌め、そしてきっと叱咤激励して回復に導いてくれたに違いないと。
実際パルティアはそこまで深く考えていたわけではない。
ただ、自分とほぼ同時に同じ経験をし、より深く傷ついたアレクシオスの心の内が誰より理解できただけ。
心の傷が辛うじて塞がった頃からは、互いに支え合い思いやるうち、相手が元気になり笑ってくれることが嬉しいと思えるようになった。
だから自分も元気にならなくてはと。
パルティアを元気にしたのは、アレクシオスだとも言えるのだった。
パルティアがあと三日で帰郷するというぎりぎりのタイミングだった。
こじんまりとしたセリアズ公爵家別邸前をゆっくりと通り過ぎながら、アレクシオスの馬車があるかどうかを確認し、無いと見るとパルティアが宿泊すると聞くコテージへと向かう。
そこでもゆっくりと馬車を走らせて、公爵家の馬車があることに気づくとニンマリとした。
「この辺のどこか目立たないところに停めてくれ」
途中の宿場で買った不味い食事を馬車の中で食しながら、密かにコテージを見張る。
ふたり、アレクシオスとパルティアが並ぶ姿を見てみたかったから。
窓を少しだけ開け、じっと外の様子を覗っていると、話し声や笑い声が聞こえてくる。
「あれはアレクシオスか?」
朗らかで大きな笑い声に、様子を見なくとも二人がどんな様子で笑い転げているかが想像できる。
もちろん貴族ともなれば、特に令嬢があのように大きな声で笑うなどはしたないと叱られて然るべきだが、子どものように屈託なく笑いあう姿が目に浮かび、ほんの数週間前死にかけていた愛息を引き戻し、立ち直らせつつある笑い声だと思うと、それすらも愛おしく思えてくるから不思議なものだ。
「姿を見てみたいな」
窓をもう少し大きく開き、辺りを窺うもそれらしき者はいない。
扉を開けて馬車から下りると護衛がすっと配置について、ランバルディが歩くとおりに影が添えられていく。
「どの辺りにいるのだろうな?」
屋敷の外にいるようだ。
コテージを囲む塀の内側・・・
護衛を何人も引き連れて、立派な身なりだが不審な貴族が覗いているとパルティアに知らせが入り、アレクシオスとふたり、足音を潜めて見に行くと。
「ちっ、父上っ!なななにして?」
「あっ!アレクシオス!しまった」
「父上?え?セリアズ公爵様?」
三人はそれぞれに顔を見合わせて。
「何してるんですかーっ!」
セリアズ公爵はアレクシオスに叱られた。
「まあまあ、アレクシオス様そのへんでね」
しゅんと小さくなったランバルディを見かねて、パルティアが仲裁に入る。
「うむ、すまなかった。アレクシオスが元気になった姿がどうしても一目見たくて、飛んできてしまったのだ」
本当は少し違うが。
「お父上様に大変なご心配をおかけしたのに、アレクシオス様のために遠路を飛ばして来られたのですから、もっとお優しく労って差し上げても罰は当たりませんことよ」
そうアレクシオスを諌めたパルティアに、ランバルディは感動した。
いままでアレクシオスのまわりにいた者たちはランバルディの知る限り皆、アレクシオスの機嫌を取り、常に先回りして何でもしてやっていた。
このようにアレクシオスを諌め、そしてきっと叱咤激励して回復に導いてくれたに違いないと。
実際パルティアはそこまで深く考えていたわけではない。
ただ、自分とほぼ同時に同じ経験をし、より深く傷ついたアレクシオスの心の内が誰より理解できただけ。
心の傷が辛うじて塞がった頃からは、互いに支え合い思いやるうち、相手が元気になり笑ってくれることが嬉しいと思えるようになった。
だから自分も元気にならなくてはと。
パルティアを元気にしたのは、アレクシオスだとも言えるのだった。
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