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27 笑うソルベート
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四日後、ホートンにともに城に行かないかと誘われたが、まだ城に向かうには足が重いと告げた。
翌日ホートンが先触れを寄越したので待っていると、ホートンはなんとソルベート・ノートリアを伴い、屋敷に現れたのだ!
目の前に立つ男は、リイサが想像したような黒縁眼鏡はかけていないし、袖カバーもしていない。
黙って立っているだけなら嫌味一つも言うことはないので、知的で美しい黒髪の青年にしか見えなかった。
「ノートリア卿、こちらがサレンドラ公爵令嬢リイサ様です」
ホートンがうれしそうにソルべートにリイサを紹介した。
「ライザック・サレンドラ公爵の長女リイサでございます」
「イルドレイド・ノートリア侯爵嫡男ソルベートと申します。王宮でお見かけしたことがございましたが、お元気になられたようで何よりでございます。上司のメッキス大臣もサレンドラ公爵令嬢のご病状に心を痛めておりましたので、ご回復をとても喜んでおりました」
「メッキス大臣?」
「覚えていらっしゃいますか?」
リイサは少し躊躇って、正直に伝えることにした。どうせ知っているのだろうから。
「申し訳ないのですが、記憶は失ったままなのでございます。ただ過去の日記にメッキス大臣にお会いしたことが書かれておりましたので、旧知の方と理解しております。ご心配くださいましたこと、感謝いたしておりますと何卒宜しくお伝え下さいませ」
訪問者はホートンだけだと思っていたので、茶を用意したこじんまりしたガゼボに椅子は二個しか置いていない。
気づいたメイドたちはリイサの移動前にと急いで椅子を運び込み、ふかふかのクッションを置いて、何事もないようにもう一客ティーセットを用意する。
見計らったようにリイサがホートンとソルベート・ノートリアを伴い、しずしずと歩いてやって来た。
「素晴らしい庭園ですね」
意外なことにソルベートは庭園の花の名を呼んではその美しさを讃えながら歩いている。
「花がお好きでいらっしゃるのですね」
「ええ、心が癒やされます。というか花が嫌いな者がおりますか?」
ソルベートに訊き返され、リイサは軽く笑う。
「嫌いではないでしょうけれど、兄メルトニウスは私の知る限り花にまったく興味がございませんわ。美しいとも香しいとも申したことがなく、心配になります」
「なんと!あのメルトニウス様が?美丈夫に剣と薔薇を纏わせたいと女官たちが申しておりましたが」
そう言うと思い出したようにソルベートがくつくつと、いや、止まらずにそのうちけらけらと笑いだした。
「天才騎士と呼ばれる男に薔薇を纏わせたいなど、なんと愚かで浅ましい女たちなんだろう!」
─あー、なるほど。確かに女官もバカみたいなことを言ってると思うけど、こんなあからさまにバカにしちゃうからいろいろ言われているのね─
リイサは冷静に笑い声が止むのを待った。
====================
予約投稿が途切れておりました(汗)
明日からまた朝8時更新です、よろしくお願いします。
翌日ホートンが先触れを寄越したので待っていると、ホートンはなんとソルベート・ノートリアを伴い、屋敷に現れたのだ!
目の前に立つ男は、リイサが想像したような黒縁眼鏡はかけていないし、袖カバーもしていない。
黙って立っているだけなら嫌味一つも言うことはないので、知的で美しい黒髪の青年にしか見えなかった。
「ノートリア卿、こちらがサレンドラ公爵令嬢リイサ様です」
ホートンがうれしそうにソルべートにリイサを紹介した。
「ライザック・サレンドラ公爵の長女リイサでございます」
「イルドレイド・ノートリア侯爵嫡男ソルベートと申します。王宮でお見かけしたことがございましたが、お元気になられたようで何よりでございます。上司のメッキス大臣もサレンドラ公爵令嬢のご病状に心を痛めておりましたので、ご回復をとても喜んでおりました」
「メッキス大臣?」
「覚えていらっしゃいますか?」
リイサは少し躊躇って、正直に伝えることにした。どうせ知っているのだろうから。
「申し訳ないのですが、記憶は失ったままなのでございます。ただ過去の日記にメッキス大臣にお会いしたことが書かれておりましたので、旧知の方と理解しております。ご心配くださいましたこと、感謝いたしておりますと何卒宜しくお伝え下さいませ」
訪問者はホートンだけだと思っていたので、茶を用意したこじんまりしたガゼボに椅子は二個しか置いていない。
気づいたメイドたちはリイサの移動前にと急いで椅子を運び込み、ふかふかのクッションを置いて、何事もないようにもう一客ティーセットを用意する。
見計らったようにリイサがホートンとソルベート・ノートリアを伴い、しずしずと歩いてやって来た。
「素晴らしい庭園ですね」
意外なことにソルベートは庭園の花の名を呼んではその美しさを讃えながら歩いている。
「花がお好きでいらっしゃるのですね」
「ええ、心が癒やされます。というか花が嫌いな者がおりますか?」
ソルベートに訊き返され、リイサは軽く笑う。
「嫌いではないでしょうけれど、兄メルトニウスは私の知る限り花にまったく興味がございませんわ。美しいとも香しいとも申したことがなく、心配になります」
「なんと!あのメルトニウス様が?美丈夫に剣と薔薇を纏わせたいと女官たちが申しておりましたが」
そう言うと思い出したようにソルベートがくつくつと、いや、止まらずにそのうちけらけらと笑いだした。
「天才騎士と呼ばれる男に薔薇を纏わせたいなど、なんと愚かで浅ましい女たちなんだろう!」
─あー、なるほど。確かに女官もバカみたいなことを言ってると思うけど、こんなあからさまにバカにしちゃうからいろいろ言われているのね─
リイサは冷静に笑い声が止むのを待った。
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予約投稿が途切れておりました(汗)
明日からまた朝8時更新です、よろしくお願いします。
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