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第2話

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 マイルスは現当主ジャブリックの先代、トーソルドの祖父に当たるボールジャーから耳にタコができるほど聞かされていた。

「ヨヌク子爵ウイロー殿が内密に支援してくれたお陰で、事業に失敗しかけたことを表に出さずに済み、爵位を手放すことなく体面を保ったまま家も持ち直すことができたのだ。足を向けて寝られないほどの恩がある」と。

 だからトーソルドが5歳下のこどものような婚約者に興味を持つことなく、学院で恋人を作ったとき、何度も言って聞かせていたのだ。しかしトーソルドはそんな祖父の代の恩をなぜ自分が負わねばならないのだと納得はしなかった。

 ジャブリックはその昔、家の経済状況が不味いと聞かされたのがいつしか持ち直していたことがあった。すべてが終わって初めて、父ボールジャーから破綻の危機に救いの手を差し伸べてくれたヨヌク子爵家について聞かされ、今の自分の地位が守られている恩をしっかりと刷り込まれた。
 マイルスとともに、ジャブリックも口を酸っぱくして注意をするものの、肝心のトーソルドは騎士団で功績を挙げると、あっという間に騎士爵を授爵し、伯爵家の恩など最早まったく無縁と言ってのける。

それでもまだジャブリックは、そしてマイルスは結婚さえすればうら若き花嫁に目を向け、それなりに大切に扱うだろうと期待を捨てずにいたのだが。





 マイルスがアニエラに頭を下げていた頃、トーソルドは忌々しい結婚式の余韻を振り払って、恋人の元に転がり込んでいた。
恋人ルイーフは男爵家の次女のため、既に屋敷を出されて家を借り、近くにある貴族のタウンハウスで通いのメイドとして働いている。


「ねえルド、本当に結婚しちゃったの?」
「あんなもの形だけだ!私はフィー以外の女はいらん」
「うふふっ、私も!ルドと一緒にいるのは私じゃなきゃイヤよ」
「あの女、私のいない屋敷に居座るつもりかもしれんが、一度婚姻したのだから父上にも義理は果たした。絶対追い出してやる」


 そんなことを言ってルイーフの膝に頭を乗せたトーソルドは、アニエラを屋敷から追い出す計略に使用人たち利用しようと考えを巡らせていた。
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