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第3章 

第48話 使用人は結束する

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 さて。
 令嬢ユートリーを失ったソイスト侯爵家は、末端の使用人たちまで悲しみに沈んでいた。
 葬儀を控えて慌ただしいというのに、そして年若い令嬢が誰かを尋ねるには非常識な時間だというのに、ミイヤは思いついたままトローザー王子に先触れを向かわせ、馬車を用意しろと言う。
 使用人たちはあ然としてスチューを見たが、いつもなら鉄板の諫言もせずに黙って素通りさせている。
 ミイヤの侍女たちはリラの計らいで外出中だから誰も止めることがないまま、茶会から戻ったそのままの姿で出かけていくのを見送っていた。



「スチュー様、あの、よろしいのでしょうか?」
「いいんだ。案ずる必要はないよ」
「でも!ユートリー様がお亡くなりになったというのにミイヤ様はおかしいですわ!あれではまるで喜んでいるみたいではありませんか」

 メイドのひとりが思ったままを口にする。

「アオーラ、そんなこと口にしたら不敬・・・といつもなら言うところだが。しかし、今日は大目に見よう。本当のことだから」

「「「え!」」」

 その場にいたすべての使用人たちが、声を揃えて反応した。

「おお、いけない、口が滑ってしまった。みんな!葬儀が終わるまで、どれほど憤ることが起きたとしても平常心を保ってくれ。それがユートリー様の、そしてマーカス様リラ様、サルジャン様の願いだから。私がこんな事を言うのもおかしいとは思うが、神は必ず相応しい裁きを下すと約束する。頼む、マーカス様から指示があるまでは、何も知らず何も言わずを通してくれ。 誇り高き侯爵家の使用人なのだからできるだろう?」

 その場で話を聞いた皆、一糸乱れずこくりと頷いた。






 ソイスト侯爵夫妻とサルジャン、ユートリーは、ミイヤが自分たちが思うほど使用人たちから愛されていないことを知らなかった。
 ミイヤは裏で力のない使用人たちを見下し、馬鹿にすることも多かったのだ。


 ある日、休みを取ったメイドが裏口から外出するところを見かけたミイヤは、わざわざ追いかけてその姿を値踏みするような視線を向けると、髪色に服が合わないとかアクセサリーがおまえには可愛すぎるとかバカにした。
 出かける意欲を削ぎ、しょんぼりと屋敷を出ていく様子を嘲笑ったのだ。
 このようなことは、貴族の子息子女が務める侍女侍従たちにはやらない。平民出身のメイドや厩務員、庭師たちに向けられて、目立たぬように行われていた。
 決して侯爵夫妻や兄姉の前では見せない顔を、ミイヤは隠していたのだ。

「ミイヤ様に相応しい神の裁き・・・」

 ミイヤに蔑まれたメイドのひとりが、ほぅっと息を吐き出す。

「裁きが下っても、お優しいユートリー様がお戻りになるわけではございません」

 その言葉に、メイドたちは涙を堪えている。
 スチューはどれほど教えてやりたかったことか。これがミイヤとその黒幕をあぶり出す罠だと。本当はユートリーもナイジェルス王子もちゃーんと無事なのだと。
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