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恋は迷路の中
腹の探り合い
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「スミル、エザリア様のために一度確認してみてよ!」
主思いのメリに頼まれたスミルだが、実はブラスからも同じような指示を受けていた。
サリバー商会の跡継ぎともなれば、婿入りの希望者はいくらでもいる。
しかし下手にガチガチの柵に縛られた高位貴族と繋がるより、優秀な経営者の片鱗を見せるエザリアの、邪魔にならず、余計な野心を持たず、それでいて家の役に立つ者、となると、ブラスのお眼鏡に適う者はなかなかいなかった。
朴訥な平民のセインは商人としては欲のない、線の細い男なので、商会長で女男爵になるエザリアの隣に立つのは役不足かもしれないが、それを補って余りあるのが魔法医薬師としての実力だ。
圧倒的に少ない魔法医薬師を身内にできれば、何の心配もなく、魔法薬の取り扱いを拡げていける。
「幸いエザリアもセイン殿を気に入っているようだからな」
そこにセインの気持ちは考慮されていないが。
皆が狙うエザリアの夫の座を喜ばない者はいないと、ブラスは決めつけていた。
「セイン」
サリバー商会に納品に行っていたスミルが、妙に疲れた顔で森の小屋に戻ってきた。
まだやることが残っていたセインだが、萎れた草のように頬に縦皺を寄せたスミルが気になり、手を止める。
「おかえり。疲れた顔してるな」
「ただいま。あー・・だな。ちょっと茶でも飲んで一休みしないか?ん?そういえば弟子の話はどうなった?今日来たのか?」
「う・・・。ひとりと面接はしたよ」
ブラスが勝手にギルドに弟子募集の依頼を出したのだが、セインにはまだそこまでの自信がなく、応募者に会いはしたが決めきれていない。
窓から射し込む陽射しが、困ったようなセインを照らしていた。
「当座の給金はブラス様が援助なさるんだろう?それなら弟子にしてみたらいいじゃないか」
「でもまだ僕ではとてもそこまでは」
「そんなことないだろう、もう十分経験あるんだし?十代で魔法医薬師の資格取るなんてとんでもないことなんだから、もっと自信持てよ!」
「う、うん・・・」
言葉が尻窄んで聞こえなくなった。
「とにかくブラス様は人を見る目はあるから信用して」
「え?いや、悪いがとてもそうは思えないな。それなら変な女なんかに引っかからないと思う」
そんなつもりはないものの、無意識のセインにスミルがやり込められる。
「あれは魔術だったんだから仕方なかったんだよ」
それも一理あるが。
「でもエザリア・・様、や専属メイドは魅了にはかからなかったわけだし」
「そ、それはエザリアお嬢様や親しい使用人たちに備えがあったからで」
「商会長のブラス様は備えてなかったんだ。ふーーん」
スミルは両手をあげた、降参だ。
「一応ブラス様の名誉のために言うが、魔術でやられる前、最初にあいつらを雇ったのは執事なんだ。執事長が葬式で不在だった間のことらしい。
いつ魔法陣を屋敷に設置したのかはとうとうわからず終いだったが、ブラス様は気づく間もなくヤラれてたんだよ。頼むから大目に見てやってくれ」
何を大目に見ればいいのだろうかとセインは可笑しくなった。
「もういい、やめよう」
くつくつ笑いながらセインに言われ、スミルも代理戦争のようなことはやめようと頷いた。
「なあ、それよりセイン。エザリア様のこと、どう思ってるんだ?」
「どう?どうって何だ」
「う、ほら、好ましいとかそうでもないとかさ」
セインは一瞬ぽかんと口を開ける。スミルが言った言葉を噛み砕き、その意味を理解し、今度は目を見開いた。
「なっ、何言ってるんだよスミルっ!相手は貴族のご令嬢だっ、僕なんか、ふっ相応しくないよ」
ぶんぶんぶんっと手を振り、否定しまくる。
「ブラス様もエザリア様もそこは全然気にしてないぞ。気にしてたらエザリア様があんなに頻繁に、用もないのにここに来るわけがないだろ?セインはエザリア様を好ましく思えるのか?」
「・・・・・そんなこと考えたことがないから、聞かれても困るよ」
妙に弱々しく答えるセインは、視線を床に落とすのだった。
主思いのメリに頼まれたスミルだが、実はブラスからも同じような指示を受けていた。
サリバー商会の跡継ぎともなれば、婿入りの希望者はいくらでもいる。
しかし下手にガチガチの柵に縛られた高位貴族と繋がるより、優秀な経営者の片鱗を見せるエザリアの、邪魔にならず、余計な野心を持たず、それでいて家の役に立つ者、となると、ブラスのお眼鏡に適う者はなかなかいなかった。
朴訥な平民のセインは商人としては欲のない、線の細い男なので、商会長で女男爵になるエザリアの隣に立つのは役不足かもしれないが、それを補って余りあるのが魔法医薬師としての実力だ。
圧倒的に少ない魔法医薬師を身内にできれば、何の心配もなく、魔法薬の取り扱いを拡げていける。
「幸いエザリアもセイン殿を気に入っているようだからな」
そこにセインの気持ちは考慮されていないが。
皆が狙うエザリアの夫の座を喜ばない者はいないと、ブラスは決めつけていた。
「セイン」
サリバー商会に納品に行っていたスミルが、妙に疲れた顔で森の小屋に戻ってきた。
まだやることが残っていたセインだが、萎れた草のように頬に縦皺を寄せたスミルが気になり、手を止める。
「おかえり。疲れた顔してるな」
「ただいま。あー・・だな。ちょっと茶でも飲んで一休みしないか?ん?そういえば弟子の話はどうなった?今日来たのか?」
「う・・・。ひとりと面接はしたよ」
ブラスが勝手にギルドに弟子募集の依頼を出したのだが、セインにはまだそこまでの自信がなく、応募者に会いはしたが決めきれていない。
窓から射し込む陽射しが、困ったようなセインを照らしていた。
「当座の給金はブラス様が援助なさるんだろう?それなら弟子にしてみたらいいじゃないか」
「でもまだ僕ではとてもそこまでは」
「そんなことないだろう、もう十分経験あるんだし?十代で魔法医薬師の資格取るなんてとんでもないことなんだから、もっと自信持てよ!」
「う、うん・・・」
言葉が尻窄んで聞こえなくなった。
「とにかくブラス様は人を見る目はあるから信用して」
「え?いや、悪いがとてもそうは思えないな。それなら変な女なんかに引っかからないと思う」
そんなつもりはないものの、無意識のセインにスミルがやり込められる。
「あれは魔術だったんだから仕方なかったんだよ」
それも一理あるが。
「でもエザリア・・様、や専属メイドは魅了にはかからなかったわけだし」
「そ、それはエザリアお嬢様や親しい使用人たちに備えがあったからで」
「商会長のブラス様は備えてなかったんだ。ふーーん」
スミルは両手をあげた、降参だ。
「一応ブラス様の名誉のために言うが、魔術でやられる前、最初にあいつらを雇ったのは執事なんだ。執事長が葬式で不在だった間のことらしい。
いつ魔法陣を屋敷に設置したのかはとうとうわからず終いだったが、ブラス様は気づく間もなくヤラれてたんだよ。頼むから大目に見てやってくれ」
何を大目に見ればいいのだろうかとセインは可笑しくなった。
「もういい、やめよう」
くつくつ笑いながらセインに言われ、スミルも代理戦争のようなことはやめようと頷いた。
「なあ、それよりセイン。エザリア様のこと、どう思ってるんだ?」
「どう?どうって何だ」
「う、ほら、好ましいとかそうでもないとかさ」
セインは一瞬ぽかんと口を開ける。スミルが言った言葉を噛み砕き、その意味を理解し、今度は目を見開いた。
「なっ、何言ってるんだよスミルっ!相手は貴族のご令嬢だっ、僕なんか、ふっ相応しくないよ」
ぶんぶんぶんっと手を振り、否定しまくる。
「ブラス様もエザリア様もそこは全然気にしてないぞ。気にしてたらエザリア様があんなに頻繁に、用もないのにここに来るわけがないだろ?セインはエザリア様を好ましく思えるのか?」
「・・・・・そんなこと考えたことがないから、聞かれても困るよ」
妙に弱々しく答えるセインは、視線を床に落とすのだった。
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