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呪われたエザリア
ムユーク王国にて
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「大丈夫か?」
メクリム王国の魔導師二人の異変に、気づいたロレンスが申し訳無さそうに訊ねた。
「あまりに邪悪で、体が冷たくなってきたよ」
「ああ、わかるよ。尋問には私も立ち会ったが、聞いている方が具合が悪くなってきてな、他の者は休みを取っている。
グルドラは自分が悪いとはまったく思わない、特殊な性格をしていてな。
優れた自分を認めない方が悪いと言うんだ。
皆がグルドラに平伏し、グルドラのために小さな命を投げ出し、グルドラの礎となるべきなのだから、自分に一切の罪はないとな」
「え?それ、自白魔法でそう言った?」
「ああ。だから本当に本気でそう思い込んでいるということだよな・・・・」
今で言うサイコパスである。
「怖すぎる」
ミヌークスも天才魔導師で呪術も扱うが、一体グルドラと何が違うのだろうと、ロンメルンはミヌークスを見た。
「わ、私はそんなこと考えたことないぞ」
男爵家出身のミヌークスは神童と言われ、ただの人になることなく成長した。
自由奔放に振る舞うため役職には不向きと、魔導師団では遊軍扱いだが、本人はそれが居心地良いのだ。妬みや僻みとは遠いところにいる男である。
「というかだな、魔女は劣等感がすごかったんじゃないかと思う」
「劣等感?天才なのに?」
ミヌークスの言葉にロンメルンが首を傾げる。
「天才だからこそだ。突出した部分とそうでない・・・例えば容姿とかのギャップが受け入れられなかったんじゃないなと思ってな。私は男だから魔力量や魔術、仕事を認められれば満足だが、女性のランク付けはそれだけじゃない。ましてロレンスの妹御は美貌で知られた方だったのだろう?」
魔術にしか興味のなさそうなミヌークスが、女性の機微を訥々と話す。
ミヌークスは決してグルドラのやったことや物の考えを理解したわけではないが、グルドラのまわりの人間がもう少しだけ、女性としてのグルドラに心を配ってやっていたらここまでの化け物にはならなかったのではないかと、思わずにはいられなかった。
「もちろん罪は罪。怒りを感じても、それを表に出して爆発させるか、内的に処理できるかは人による。グルドラは前者だったというだけのこと。
すべてグルドラ自身の罪に間違いない」
一瞬なんと甘いことを言うのかと思ったロンメルンだがそんなことはなく、最後は冷たく切って捨てたミヌークスだった。
「それではロレンス、無事本懐を遂げることを心より祈念する」
「ああ、ありがとうミヌークス。自白魔法とミヌークスが施してくれた封印、麻痺魔法でだいぶ弱っているから、心配はいらん。あの麻痺魔法は素晴らしいな!ミヌークスが開発したのか?」
パラライズは状態異常を使う魔物のスキルの一つで、メクリム王国の魔導師団は普通に使いこなしている。ミヌークスは魔法陣でそれを超強力に発現させた。
だがムユークではその魔物がおらず、あまり馴染みがなかったらしい。
魔物の研究の一環に過ぎなかったが、まさかこんなことに役立つとはと、ミヌークス本人が一番驚いていた。
「ミヌークス、差し支えなければこの麻痺魔法を我が国に売って貰えないだろうか?勿論悪用されぬように厳正な使用方法を定めるので」
魔術大国のムユーク王国宰相からそんなことを言われ、喜ばない魔導師はいないだろう。
ミヌークスの自尊心はこちょこちょと擽られ、その口元はむにむにと蠢いている。
「一応、国に戻って相談してから回答する」
「ああ、勿論だ。そちらで悪用禁止の制限を来てきてもいいから、前向きに検討してほしい」
長年の懸念に終わりが見えてきたせいか、初めて会った頃より穏やかなロレンスが頭を下げた。
メクリム王国の魔導師二人の異変に、気づいたロレンスが申し訳無さそうに訊ねた。
「あまりに邪悪で、体が冷たくなってきたよ」
「ああ、わかるよ。尋問には私も立ち会ったが、聞いている方が具合が悪くなってきてな、他の者は休みを取っている。
グルドラは自分が悪いとはまったく思わない、特殊な性格をしていてな。
優れた自分を認めない方が悪いと言うんだ。
皆がグルドラに平伏し、グルドラのために小さな命を投げ出し、グルドラの礎となるべきなのだから、自分に一切の罪はないとな」
「え?それ、自白魔法でそう言った?」
「ああ。だから本当に本気でそう思い込んでいるということだよな・・・・」
今で言うサイコパスである。
「怖すぎる」
ミヌークスも天才魔導師で呪術も扱うが、一体グルドラと何が違うのだろうと、ロンメルンはミヌークスを見た。
「わ、私はそんなこと考えたことないぞ」
男爵家出身のミヌークスは神童と言われ、ただの人になることなく成長した。
自由奔放に振る舞うため役職には不向きと、魔導師団では遊軍扱いだが、本人はそれが居心地良いのだ。妬みや僻みとは遠いところにいる男である。
「というかだな、魔女は劣等感がすごかったんじゃないかと思う」
「劣等感?天才なのに?」
ミヌークスの言葉にロンメルンが首を傾げる。
「天才だからこそだ。突出した部分とそうでない・・・例えば容姿とかのギャップが受け入れられなかったんじゃないなと思ってな。私は男だから魔力量や魔術、仕事を認められれば満足だが、女性のランク付けはそれだけじゃない。ましてロレンスの妹御は美貌で知られた方だったのだろう?」
魔術にしか興味のなさそうなミヌークスが、女性の機微を訥々と話す。
ミヌークスは決してグルドラのやったことや物の考えを理解したわけではないが、グルドラのまわりの人間がもう少しだけ、女性としてのグルドラに心を配ってやっていたらここまでの化け物にはならなかったのではないかと、思わずにはいられなかった。
「もちろん罪は罪。怒りを感じても、それを表に出して爆発させるか、内的に処理できるかは人による。グルドラは前者だったというだけのこと。
すべてグルドラ自身の罪に間違いない」
一瞬なんと甘いことを言うのかと思ったロンメルンだがそんなことはなく、最後は冷たく切って捨てたミヌークスだった。
「それではロレンス、無事本懐を遂げることを心より祈念する」
「ああ、ありがとうミヌークス。自白魔法とミヌークスが施してくれた封印、麻痺魔法でだいぶ弱っているから、心配はいらん。あの麻痺魔法は素晴らしいな!ミヌークスが開発したのか?」
パラライズは状態異常を使う魔物のスキルの一つで、メクリム王国の魔導師団は普通に使いこなしている。ミヌークスは魔法陣でそれを超強力に発現させた。
だがムユークではその魔物がおらず、あまり馴染みがなかったらしい。
魔物の研究の一環に過ぎなかったが、まさかこんなことに役立つとはと、ミヌークス本人が一番驚いていた。
「ミヌークス、差し支えなければこの麻痺魔法を我が国に売って貰えないだろうか?勿論悪用されぬように厳正な使用方法を定めるので」
魔術大国のムユーク王国宰相からそんなことを言われ、喜ばない魔導師はいないだろう。
ミヌークスの自尊心はこちょこちょと擽られ、その口元はむにむにと蠢いている。
「一応、国に戻って相談してから回答する」
「ああ、勿論だ。そちらで悪用禁止の制限を来てきてもいいから、前向きに検討してほしい」
長年の懸念に終わりが見えてきたせいか、初めて会った頃より穏やかなロレンスが頭を下げた。
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