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呪われたエザリア
その頃ムユークでは
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ロレンス・カイザールとロンメルン、ミヌークスたちはグルドラ・ルストを麻痺させ続けながらムユーク王国に到着した。
旅の間にすっかりと気心の知れたロレンスとロンメルンたちだったが、さすがにグルドラを牢に入れる際には緊張感が漂う。
「まず、魔力の完全な断絶を、そして念のため強魔封じと、麻痺の魔法陣を」
ミヌークスが、一度はグルドラの脱獄を許したムユークの名だたる魔導師を押し退け、寸分の隙も作らぬように術を施していく。
その魔法陣の精緻さを見るだけで、ミヌークスの完璧主義かつ執念深い性格がうかがえた。
「ミヌークス疲れただろう?グルドラの尋問はこう言っては何だが形ばかりのもの。数日で決闘だから、よかったらそれまで我が家に滞在してはどうだ?」
ロンメルンはその言葉に驚く。
「尋問が形ばかり?それでは真実を明らかにできないのではないか?」
「真実など今更知って何になる?妹が生き返るというならまだしも、グルドラが犯人ということさえ間違いなければ、それ以上は時間の無駄だ」
ロンメルンとミヌークスはチラっと視線を交わす。
ロレンスとは親しい間柄にはなったが、どうやらムユーク人はメクリム人と精神構造が大きく違うらしい。
「そういうものなのか」
同意を求めるでもなく、ロンメルンは呟いていた。
ロレンスに招かれたロンメルンたちはカイザール邸で骨休めの時間を堪能した。
その数日の中でも、大小様々なことで文化や習慣、物の考え方の違いに戸惑わされたが。
「休んでいるのか、疲れているのかわからなくなってきた」
ミヌークスでさえそうボヤくほど。
エザリア・サリバーや他の被害者のためにも、グルドラの処刑・・いや、決闘を見届けたいと思うが、いるだけで疲れを感じさせるムユークから、一刻も早くメクリムに戻りたいとロンメルンが思い始めた頃。
「ロンメルン、ミヌークス!決闘の日が決まったぞ」
紅潮した顔でロレンスが城から帰って来た。
「尋問は結局どうなったんだ?」
「うむ。自白魔法を五重掛けして口を割らせたが」
「ご、五重掛け?そ、そんなことをしたら廃人に」
「罪人など別に死んでも構わん」
冷たい声音であっさりと言うロレンス。
「しかし死なせたら決闘が」
「ははは。そういうこともあるな。屍だとしても杭に体を縛り付けて行うことになっているんだよ」
そのロレンスの言葉に、ロンメルンたちの中でムユークの決闘がどんなものなのか漸く腹に落ちた気がした。
「死んでいてもいい?」
「そうだ。立会人たちの前で一太刀浴びせ、命が消えていればな。それが決闘の前に消えたものかは確認しないことになっている」
なんともいけ好かない話に、ロンメルンはメクリムに早く帰りたくなった。
「・・・それで自白はしたのか?」
「あ?ああ。あの魔女め、わかってはいたが第一王子に懸想して妹を陥れ、魅了魔法陣をあちこちに展開させたと白状した。妹の行く手に魔物を誘き寄せたのもあの魔女だ」
ギリッと歯を噛みしめる音がロレンスから漏れる。
「そうして王子の婚約者となってはみたが、魅了は国のすべてを覆うわけではないからな。
出自がよいわけでも美しいわけでもない、私もだが、優秀なだけの子爵家のグルドラが王子の婚約者に納まったことに疑念を持つ者も多くいた。
王子と夜会に出れば悪意を向けられ、その度に呪術で相手を服従させていったらしいが、あまりの多さにやりきれなくなり、綻びが出始めた頃、第一王子の立太子に絡む身体調査で王子が精神操作を受けていることが判明した。投獄されたあの女は魔封じを解除して脱獄。
容姿と名を変え、メクリムでやったような呪術で貴族や商会を乗っ取り、執念深く追跡を続ける我がムユーク王国を潰すために、メクリムの王位を乗っ取る計画を立てたようだ」
ゾワッと背筋が凍りつくような寒気に、ロンメルンは腕を寄せる。
それを見たミヌークスが背中を擦ってやった。
旅の間にすっかりと気心の知れたロレンスとロンメルンたちだったが、さすがにグルドラを牢に入れる際には緊張感が漂う。
「まず、魔力の完全な断絶を、そして念のため強魔封じと、麻痺の魔法陣を」
ミヌークスが、一度はグルドラの脱獄を許したムユークの名だたる魔導師を押し退け、寸分の隙も作らぬように術を施していく。
その魔法陣の精緻さを見るだけで、ミヌークスの完璧主義かつ執念深い性格がうかがえた。
「ミヌークス疲れただろう?グルドラの尋問はこう言っては何だが形ばかりのもの。数日で決闘だから、よかったらそれまで我が家に滞在してはどうだ?」
ロンメルンはその言葉に驚く。
「尋問が形ばかり?それでは真実を明らかにできないのではないか?」
「真実など今更知って何になる?妹が生き返るというならまだしも、グルドラが犯人ということさえ間違いなければ、それ以上は時間の無駄だ」
ロンメルンとミヌークスはチラっと視線を交わす。
ロレンスとは親しい間柄にはなったが、どうやらムユーク人はメクリム人と精神構造が大きく違うらしい。
「そういうものなのか」
同意を求めるでもなく、ロンメルンは呟いていた。
ロレンスに招かれたロンメルンたちはカイザール邸で骨休めの時間を堪能した。
その数日の中でも、大小様々なことで文化や習慣、物の考え方の違いに戸惑わされたが。
「休んでいるのか、疲れているのかわからなくなってきた」
ミヌークスでさえそうボヤくほど。
エザリア・サリバーや他の被害者のためにも、グルドラの処刑・・いや、決闘を見届けたいと思うが、いるだけで疲れを感じさせるムユークから、一刻も早くメクリムに戻りたいとロンメルンが思い始めた頃。
「ロンメルン、ミヌークス!決闘の日が決まったぞ」
紅潮した顔でロレンスが城から帰って来た。
「尋問は結局どうなったんだ?」
「うむ。自白魔法を五重掛けして口を割らせたが」
「ご、五重掛け?そ、そんなことをしたら廃人に」
「罪人など別に死んでも構わん」
冷たい声音であっさりと言うロレンス。
「しかし死なせたら決闘が」
「ははは。そういうこともあるな。屍だとしても杭に体を縛り付けて行うことになっているんだよ」
そのロレンスの言葉に、ロンメルンたちの中でムユークの決闘がどんなものなのか漸く腹に落ちた気がした。
「死んでいてもいい?」
「そうだ。立会人たちの前で一太刀浴びせ、命が消えていればな。それが決闘の前に消えたものかは確認しないことになっている」
なんともいけ好かない話に、ロンメルンはメクリムに早く帰りたくなった。
「・・・それで自白はしたのか?」
「あ?ああ。あの魔女め、わかってはいたが第一王子に懸想して妹を陥れ、魅了魔法陣をあちこちに展開させたと白状した。妹の行く手に魔物を誘き寄せたのもあの魔女だ」
ギリッと歯を噛みしめる音がロレンスから漏れる。
「そうして王子の婚約者となってはみたが、魅了は国のすべてを覆うわけではないからな。
出自がよいわけでも美しいわけでもない、私もだが、優秀なだけの子爵家のグルドラが王子の婚約者に納まったことに疑念を持つ者も多くいた。
王子と夜会に出れば悪意を向けられ、その度に呪術で相手を服従させていったらしいが、あまりの多さにやりきれなくなり、綻びが出始めた頃、第一王子の立太子に絡む身体調査で王子が精神操作を受けていることが判明した。投獄されたあの女は魔封じを解除して脱獄。
容姿と名を変え、メクリムでやったような呪術で貴族や商会を乗っ取り、執念深く追跡を続ける我がムユーク王国を潰すために、メクリムの王位を乗っ取る計画を立てたようだ」
ゾワッと背筋が凍りつくような寒気に、ロンメルンは腕を寄せる。
それを見たミヌークスが背中を擦ってやった。
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