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呪われたエザリア

グルドラと追跡者 1

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グルドラと追跡者、2話一気に更新します。
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 誰かがリルケにある、壊れかけたロリンの家のドアを開けた。

 何者かが踏み込むことがあったらわかるように、魔法陣を設置してあった。

 いつもなら誰が踏み込んだのかもわかるように魔導水晶を設置するのだが、パルツカ子爵家でうまくいき、サリバーでもシュマーが再婚するまでサクサクと進んだので、まさか一メイドに過ぎないロリンの出自まで調べたりはしないとタカを括っていた。

「チッ」

 しかし、たまたま無人の廃屋と間違えて侵入しただけかも知れない。
 慌てて闇雲に動くとやぶ蛇になってしまうか、はたまた戻らないほうがやぶ蛇か。

 迷ったグルドラは髪と目の色を変えて、リルケの小屋とサリバー邸に探りに行くことにした。





 グルドラはまずリルケの町にあるロリンの家を見に行った。

 家といえば聞こえのいい掘っ立て小屋である。
小屋の周囲200メートルほどを探索するが、潜む者はいないようだ。

「やはりたまたまの来客だったのか?気にしすぎたか」

 そう呟きながらほっと息を吐いた。

 家の前に置いた古びたベンチに座ると、耕す者もいなくなった畑が雑草だらけでこんもりと繁っている。
じっと気配を消して畑を探索サーチしたがやっぱり引っかかる者はない。

「クリアー。じゃあやっぱり迷い込んだ者だった?」








「お、おい誰か来たようだ!女だな、でも赤毛じゃないから違うか?」
「馬鹿!油断するなよ、髪などいくらでも染められる」

 必ず二人ないしは三人で行動すると義務づけられた騎士と魔導師のペアは、グルドラが探索した畑の先に繁った、木の枝に潜伏していた。
 そこは小屋から300メートル以上離れ、普通なら監視には向かない距離だが、ムユーク王国で新たに開発された魔導遠眼鏡をいくつか送ってきたので、それを活用している。
とんでもなく遠くからでも鮮明に見える優れものだ。

「拡大してみてくれ」

 覗く魔導師がダイヤルを回すと女の顔がかなりはっきり見えてくる。

「俺にも見せてくれよ」

 騎士が遠眼鏡を覗くと、髪色は違うが顔立ちが似ている。

「本命か?」
「そのようだな」

 魔導師は宙に向けて魔法陣を描き出した。

「あ?なんだそれ?」
「今からちょっとした召喚をして、それにあの女を追わせる」

 ちょっとした召喚?

 顔を上げた魔導師がサッと手を動かし、飛んでいた蝶を左手で掴むと、右手で描いた魔法陣に左手ごと乗せた。何かを唱えていたと思うと、ゆっくり手を開き、小さな白い蝶がふわりと飛び上がり・・・。

 魔導師の顔の前でパタパタととどまっている。



「えっ」

 騎士の驚きに言葉を返すことなく、魔導師が蝶に「頼んだぞ」と声をかけると、身を翻して畑の中に姿を隠した。

「今のあれ、なんだ?」
「魔力を蝶に纏わせて、私の目と耳にしたんだ」
「そんなことができるなんて、すげえな」

 フッと笑ったあと、魔導師の意識は蝶に向いた。

「うむ。やはりこの女がロリンの名乗っている者に違いないな。魔法陣を確認している・・・」

 蝶は見つかればあっという間に命を奪われ、二度と同じ手を使うことは出来なくなる。
慎重に、距離を保ってその動向を探った。

「魔法陣を新たに設置しているな。ん?」

 何かがキラリと光った。

「水晶を仕込んでいるぞ。遠隔で様子が見られるようにか?」
「前はなかったよな?ということは、警戒レベルを引き上げた?うかうかとあの小屋に近づかないほうがいいな」
「ああ。団長にもそう報告しよう」





 グルドラは小屋の中に一つ、そして小屋の庇の内側にも外からは見えないよう魔導水晶を取り付け、魔法陣も新しく仕込み直す。

「これで、私を探る者がいてもすぐにわかる」

 グルドラは油断があったと自分を戒めたばかりなことを忘れて、くつくつと肩を揺らす。
グルドラがまだ知らない、新しい魔道具が彼女を見つめていることも知らずに。
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