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呪われたエザリア
残る者
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コンコンとノックし、先程追い出されるように出てきた部屋へ戻ると、セインの膝の上で丸くなり、気持ちよさげに撫でられている白猫がミクスの目に飛び込んでくる。
─やはり猫だ。どう見ても猫だ!猫にしか見えないのに呪われて姿を変えた令嬢だと?─
戸惑いから抜けきれないミクスだが、イーブィの言動が引き起こしたことを思い出して口を噤む。
「ミクスそれと」
「シュメーンと呼んでください」
青年魔導師がそう頼んだので、ジョルは即座に頷いた。
「シュメーン!さっきも紹介したがエザリア嬢だ」
「にゃっ」
「はじめまして」
平静を装い、令嬢に対するよう腰を曲げて礼をした。
すると。
猫が前足でテーブルをとんとんと叩く、ミクスたちの注意をひくように。
猫の目の前には使い込まれた手描きの文字盤が置かれ、シュメーンが自分を見たと確信した猫が前足で文字を指し示した。
『よろしく』
落ち着けと自分に言い聞かせるシュメーンだが、目が白猫に吸い付いて離れない。
今見たことは夢か幻か、それとも本当に本当のことなのか?
「おいシュメーン大丈夫か?」
「ん?あ、ああ大丈夫・・」
と言いながらもまだその目は白猫から離れない。
「くっ。まあみんな通る道ってやつだよそれは」
「みんな通る道?」
「ああ。私も団長もみんな最初はそうだった。しかし、いくつか質問するうちに!信じざるを得なくなる。
私も、団長もそうだった。
あの女魔導師ならきっとこのエザリア嬢を見ても、トリックがあると疑い続けただろうがな」
「ちなみに騎士団長はどんな質問を?」
シュメーンが訊ねる。
「ミクスは少し前に団長の甥っ子が婚約を考えていた令嬢の身上調査をしたの、覚えてるか?」
「あっ!あったなそんなことが。珍しく公私混同っぽくて」
「それだ!実はその相手がエザリア嬢の友人だったらしくて、団長の甥っ子にも会ったことがあるそうなんだ。それで、団長の甥っ子の容姿や髪瞳の色とかを質問してた」
まさかである。
ミクスは自分の妻の友人の髪や瞳の色を答えろと言われて、思い出せるかと首を傾げた。
しかしそういえば妻はどこの誰が髪型を変えただの、髪を染めていただの、化粧を変えただのと、まわりのちょっとした変化にも非常に目ざとい
─女性というのはそういう生き物か─
自らをそう納得させて白猫を見ると、顎をツンと上げて、胸を張っているように見える。
それが思いの外可愛らしくて、こどもを見守るようにやさしく笑うと、白猫はストンとテーブルからおりてミクスの足元に来た。
ミクスのまわりをぐるりと回り、最後に尻尾でふぁさっとミクスをの足を撫でる。
次に目を皿のようにしたシュメーンの足元にとことこと歩いていき、こちらも尻尾で撫でた。
「にゃっ」
「どうやらここにいてもいいらしいぞ」
ジョルの言葉に猫が頷く。
「ハ、ハハハ。それはよかった!これで職務を全うできる」
猫に認められたのが、うれしいことなのかよくわからないが。
ミクスとシュメーンはイグルスの言葉どおり、ジョルとともに無事にエザリアの護衛の座に収まることができたのだった。
─やはり猫だ。どう見ても猫だ!猫にしか見えないのに呪われて姿を変えた令嬢だと?─
戸惑いから抜けきれないミクスだが、イーブィの言動が引き起こしたことを思い出して口を噤む。
「ミクスそれと」
「シュメーンと呼んでください」
青年魔導師がそう頼んだので、ジョルは即座に頷いた。
「シュメーン!さっきも紹介したがエザリア嬢だ」
「にゃっ」
「はじめまして」
平静を装い、令嬢に対するよう腰を曲げて礼をした。
すると。
猫が前足でテーブルをとんとんと叩く、ミクスたちの注意をひくように。
猫の目の前には使い込まれた手描きの文字盤が置かれ、シュメーンが自分を見たと確信した猫が前足で文字を指し示した。
『よろしく』
落ち着けと自分に言い聞かせるシュメーンだが、目が白猫に吸い付いて離れない。
今見たことは夢か幻か、それとも本当に本当のことなのか?
「おいシュメーン大丈夫か?」
「ん?あ、ああ大丈夫・・」
と言いながらもまだその目は白猫から離れない。
「くっ。まあみんな通る道ってやつだよそれは」
「みんな通る道?」
「ああ。私も団長もみんな最初はそうだった。しかし、いくつか質問するうちに!信じざるを得なくなる。
私も、団長もそうだった。
あの女魔導師ならきっとこのエザリア嬢を見ても、トリックがあると疑い続けただろうがな」
「ちなみに騎士団長はどんな質問を?」
シュメーンが訊ねる。
「ミクスは少し前に団長の甥っ子が婚約を考えていた令嬢の身上調査をしたの、覚えてるか?」
「あっ!あったなそんなことが。珍しく公私混同っぽくて」
「それだ!実はその相手がエザリア嬢の友人だったらしくて、団長の甥っ子にも会ったことがあるそうなんだ。それで、団長の甥っ子の容姿や髪瞳の色とかを質問してた」
まさかである。
ミクスは自分の妻の友人の髪や瞳の色を答えろと言われて、思い出せるかと首を傾げた。
しかしそういえば妻はどこの誰が髪型を変えただの、髪を染めていただの、化粧を変えただのと、まわりのちょっとした変化にも非常に目ざとい
─女性というのはそういう生き物か─
自らをそう納得させて白猫を見ると、顎をツンと上げて、胸を張っているように見える。
それが思いの外可愛らしくて、こどもを見守るようにやさしく笑うと、白猫はストンとテーブルからおりてミクスの足元に来た。
ミクスのまわりをぐるりと回り、最後に尻尾でふぁさっとミクスをの足を撫でる。
次に目を皿のようにしたシュメーンの足元にとことこと歩いていき、こちらも尻尾で撫でた。
「にゃっ」
「どうやらここにいてもいいらしいぞ」
ジョルの言葉に猫が頷く。
「ハ、ハハハ。それはよかった!これで職務を全うできる」
猫に認められたのが、うれしいことなのかよくわからないが。
ミクスとシュメーンはイグルスの言葉どおり、ジョルとともに無事にエザリアの護衛の座に収まることができたのだった。
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