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呪われたエザリア
城の密談
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王城の謁見の間では。
王立騎士団長イグルス・ベイトリールが国王リブルトロブス・フォナックミズ・メクリムに謁見し、悪質極まりない呪術を行う者が野放しになっていると報告しているところだ。
「呪いで猫に変えられただと?イグルス、其方よほど疲れているのではないか?」
思わず騎士団長の体調を心配したリブルトロブスだが、イグルスはジョルの報告書の他、同じような状況で姿を消した貴族の子息の報告書なども合わせ、理詰めで信じにくいことを淡々と説明する。
当初、リブルトロブスとその侍従だけが話を聞いていたが、途中リブルトロブスは側近たちを招集し、イグルスの報告を共有することにした。
「陛下、そういえば数年前にムユークで脱獄した魔導師の指名手配があったかと」
その場に居合わせた中ではもっとも年嵩の、外務を担当する大臣ツィールド・ソルガンが思い出したように口を挟んだ。
先王が崩御してリブルトロブスに代替わりしてからまだ三年ほど。国王の側近は一新されていたが、ツィールドは幼少のリブルトロブスの教育係を努めていたことから、先王から引き続き側近となっていた。
「こういうときはやはり年長者も身の回りに必要だと実感するな」
リブルトロブスはそう呟きながら、ムユークの魔導師の脱獄について、当時ムユークから届いた手配書を探すよう指示を飛ばす。
「まあ、私のような者は、若い者たちにはいろいろ疎ましいものなのですよ陛下」
ツィールドを自身の側近にすると決めたとき、老体は潔く身を引くべきと物申した側近候補がおり、リブルトロブスはツィールドを残し、身の程知らずな一候補を捨てた。
勿論諌言は大切だが、自分たちよりちょっと年を取っていて扱いにくいというだけで身を引けとは、目上の者に対し敬意のかけらもない!何たる言い草だと、リブルトロブスを怒らせたのだ。
以来ツィールドの積み重ねた知識や記憶が物言う度、リブルトロブスは年長者も必要、有り難い存在だと口にするようになった。
「陛下、こちらが届きました」
文官が持ってきた手配書に目を走らせたあと、円卓に乗せると、皆が覗き込む。
「ムユーク王国にて収監していた魔導師グルドラ・ルストが脱獄、国際指名手配」
その手配書の裏面にはグルドラ・ルストの悪行が小さな文字でびっしりと書き込まれていた。
「皆で覗き込んでいては効率が悪い。誰か読みあげてくれ」
リブルトロブスの一声で侍従が一礼のあと、皆に聞こえるようそれを音読し始めた。
「グルドラ・ルスト、赤髪の魔女と呼ばれるムユーク史上最悪の魔導師。
元はルスト子爵家出身、貴族学院時代に知り合った第一王子を呪術で懐柔し、その婚約者が事故で亡くなったあと自身を婚約者とさせた。
婚約時代、立太子前に第一王子の身辺検査が行われた際、呪術の痕跡を発見、調査の結果グルドラが捕縛された。
グルドラは学院時代から魔力、魔術ともに優れ、禁呪とされた呪術も独学にて身につけたほど。だが身の程をわきまえず王太子妃、いずれは王妃となって国を我が物にしようとしたこと、そして亡くなった王子の元婚約者を呪術で害したことも判明。
断首刑が下されたが、魔力封じの牢を掻い潜り脱獄逃走。脱獄の経路や手段は未だ不明」
国を我が物にという下りは、国王とともに政に忙殺される側近と重臣たちにも衝撃を与えた。
「早速調査に取り掛かるが、同時に呪術を封じる策を取らねばならんな。魔導王国ムユークの魔力封じを掻い潜るほどの者とは!こんな者が本当に我がメクリムに潜伏していたとしたら大変だ。
おい、ムユークが今も手配中なのか急ぎ確認し、このグルドラ・ルストの事情がもっとわかるものを送るよう依頼してくれ」
リブルトロブスの決断は早かった。
「イグルス、此度の件は其方が暗部、魔導師団と連携してことに当たれ。指揮は其方とする」
「かしこまりました。呪いの話を信じてくださり、ありがとうございます」
「ん?ああ、猫にされたというやつか?ハハハッさすがにそれは信じておらんが!猫耳を生やすくらいの呪術はあると聞いたことがあるから、強ちすべて嘘でもないだろうと思ってな。それに手配書を読む限り、これはかなり危険な人物だ。早く知らせてくれてよかった。猫にされたという令嬢の保護にも細心の注意を払ってやれ」
■□■
いつもありがとうございます。
暫く猫とセインはおやすみ、魔女絡みの話になります。
よろしくお願いいたします。
王立騎士団長イグルス・ベイトリールが国王リブルトロブス・フォナックミズ・メクリムに謁見し、悪質極まりない呪術を行う者が野放しになっていると報告しているところだ。
「呪いで猫に変えられただと?イグルス、其方よほど疲れているのではないか?」
思わず騎士団長の体調を心配したリブルトロブスだが、イグルスはジョルの報告書の他、同じような状況で姿を消した貴族の子息の報告書なども合わせ、理詰めで信じにくいことを淡々と説明する。
当初、リブルトロブスとその侍従だけが話を聞いていたが、途中リブルトロブスは側近たちを招集し、イグルスの報告を共有することにした。
「陛下、そういえば数年前にムユークで脱獄した魔導師の指名手配があったかと」
その場に居合わせた中ではもっとも年嵩の、外務を担当する大臣ツィールド・ソルガンが思い出したように口を挟んだ。
先王が崩御してリブルトロブスに代替わりしてからまだ三年ほど。国王の側近は一新されていたが、ツィールドは幼少のリブルトロブスの教育係を努めていたことから、先王から引き続き側近となっていた。
「こういうときはやはり年長者も身の回りに必要だと実感するな」
リブルトロブスはそう呟きながら、ムユークの魔導師の脱獄について、当時ムユークから届いた手配書を探すよう指示を飛ばす。
「まあ、私のような者は、若い者たちにはいろいろ疎ましいものなのですよ陛下」
ツィールドを自身の側近にすると決めたとき、老体は潔く身を引くべきと物申した側近候補がおり、リブルトロブスはツィールドを残し、身の程知らずな一候補を捨てた。
勿論諌言は大切だが、自分たちよりちょっと年を取っていて扱いにくいというだけで身を引けとは、目上の者に対し敬意のかけらもない!何たる言い草だと、リブルトロブスを怒らせたのだ。
以来ツィールドの積み重ねた知識や記憶が物言う度、リブルトロブスは年長者も必要、有り難い存在だと口にするようになった。
「陛下、こちらが届きました」
文官が持ってきた手配書に目を走らせたあと、円卓に乗せると、皆が覗き込む。
「ムユーク王国にて収監していた魔導師グルドラ・ルストが脱獄、国際指名手配」
その手配書の裏面にはグルドラ・ルストの悪行が小さな文字でびっしりと書き込まれていた。
「皆で覗き込んでいては効率が悪い。誰か読みあげてくれ」
リブルトロブスの一声で侍従が一礼のあと、皆に聞こえるようそれを音読し始めた。
「グルドラ・ルスト、赤髪の魔女と呼ばれるムユーク史上最悪の魔導師。
元はルスト子爵家出身、貴族学院時代に知り合った第一王子を呪術で懐柔し、その婚約者が事故で亡くなったあと自身を婚約者とさせた。
婚約時代、立太子前に第一王子の身辺検査が行われた際、呪術の痕跡を発見、調査の結果グルドラが捕縛された。
グルドラは学院時代から魔力、魔術ともに優れ、禁呪とされた呪術も独学にて身につけたほど。だが身の程をわきまえず王太子妃、いずれは王妃となって国を我が物にしようとしたこと、そして亡くなった王子の元婚約者を呪術で害したことも判明。
断首刑が下されたが、魔力封じの牢を掻い潜り脱獄逃走。脱獄の経路や手段は未だ不明」
国を我が物にという下りは、国王とともに政に忙殺される側近と重臣たちにも衝撃を与えた。
「早速調査に取り掛かるが、同時に呪術を封じる策を取らねばならんな。魔導王国ムユークの魔力封じを掻い潜るほどの者とは!こんな者が本当に我がメクリムに潜伏していたとしたら大変だ。
おい、ムユークが今も手配中なのか急ぎ確認し、このグルドラ・ルストの事情がもっとわかるものを送るよう依頼してくれ」
リブルトロブスの決断は早かった。
「イグルス、此度の件は其方が暗部、魔導師団と連携してことに当たれ。指揮は其方とする」
「かしこまりました。呪いの話を信じてくださり、ありがとうございます」
「ん?ああ、猫にされたというやつか?ハハハッさすがにそれは信じておらんが!猫耳を生やすくらいの呪術はあると聞いたことがあるから、強ちすべて嘘でもないだろうと思ってな。それに手配書を読む限り、これはかなり危険な人物だ。早く知らせてくれてよかった。猫にされたという令嬢の保護にも細心の注意を払ってやれ」
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いつもありがとうございます。
暫く猫とセインはおやすみ、魔女絡みの話になります。
よろしくお願いいたします。
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