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呪われたエザリア
やっぱりなかなか信じられん
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スミルが二頭の馬を繋ぎ、店のドアを開けるとドアに取り付けられたベルがカラコラと音を立てる。
「いらっしゃい!ああスミル、そちらの方が?」
「ああ。ジョル・ドレイラ卿だ。エザリアお嬢様は?」
「寛いでる」
ハハッと笑ったセインがジョルに「セイン・デールです」と挨拶し、握手を交わす。
「じゃあこっちにどうぞ」
カウンターのスイングドアを押したセインが、スミルたちを手招きした。
ジョルは初めて魔法医薬師の店の裏側に入ったため、物珍しさにきょろきょろが止まらない。
「デール殿」
敬意を込め、ジョルはセインをデール殿と呼んだ。
魔法医薬師は、魔導師団という活躍の場があり、出世の道が約束された魔導師に比べ圧倒的に少なく、また錬金術師に比べ儲からないと言われている。
しかしジョルのような騎士にとり、ポーション、魔力回復薬やエリクサーといった普通の薬師には作れないものを供給してくれる魔法医薬師は間違いなく尊ぶべき存在であった。
「あ、気にせずにセインと呼んでください。エザリアはこの奥にいるのでどうぞ」
店の奥は台所、その奥に居間があった。
確かにソファに置いたクッションで寛いでる白猫がいる。
ちらりと水色の目を向けたと思うと、すくっと体を起こして座り直した。
「ニャ」
ふぁさと尻尾を揺らしながら、前足を文字盤に乗せている。
『ようこそ えざりあ さりばー』
勿論、話に聞いてはいた。
信じがたい話だと思ったが、先入観を持たずに調べようと平常心を心がけていたが、思わず叫んでしまっていた。
「何だこりゃあ!嘘だろう?」
「いえ、間違いなくエザリア・サリバー男爵令嬢です」
予想された反応に淡々とスミルが返すも、ジョルは頭を左右に振りながら「そんなはずはない」と、既に聞いていたはずの事実を受け入れられずにいる。
「ニャッ」
白猫がジョルの注意を引いたあと、文字盤を指し示した。
『しつもんして』
スミルとセインはうんうんと頷いて、猫に同意している。
猫の示した言葉に大の男たちが追随する姿は滑稽なものだ。そう気づくと、ジョルの頭は急速に落ち着きを取り戻していく。
そしておかしくてたまらなくなった。
「ふっ、ふふっ、ハハハッ!まったくなんてことだよこれは!本当にどこからどう見ても猫じゃないか」
笑いだしたジョルが癇に障ったらしいエザリアは、ジョルのそばに移動する。
─あっ!─
スミルとセインがジョルに注意する間もなかった。
エザリアは自分を助けてくれるかもしれない騎士だというのに、何の遠慮もなく、彼の手の甲に爪を立てたのだ。
「うっ!」
さすがに騎士は「ぎゃ」とは言わなかったが。
笑いすぎたと白猫に頭を下げる自分も滑稽だと、またくすくす笑いだしてしまう。
「ご、ごめ、ツボにはまっ・・くふふ」
「え、エザリア!まずはほら、お客様にお茶を出そうか」
白猫が発する不穏な空気に、セインが機嫌を取り始める。
「今日のお茶菓子はエザリアも食べられるプリンにしたんだよ、ほら!」
猫になってから、食べたくても食べられないものもある。熱々のお茶や熱々のブリオッシュはどうやっても舌が受け付けない。辛いものも食べられない。
その中で猫の口でも安定して食べやすく、満足度が高いデザートがプリンだった。
「にゃあん!」
前足をセインの腕に乗せて、ちょいちょいと引いている。
「はいはい、すぐに出すから待ってね」
「スミル、セインさ・・んは猫語がわかるのか?」
「いやわからないでしょ。でもあれくらいなら俺もわかるな。早くくれって言ってる。何しろエザリアお嬢様は食い意地張っ!」
スミルが最後まで言うことはなかった。
音も立てずあっという間にスミルの前に移動したエザリアは、シャキンと爪を出してスミルの顎を撫でたから。
「いらっしゃい!ああスミル、そちらの方が?」
「ああ。ジョル・ドレイラ卿だ。エザリアお嬢様は?」
「寛いでる」
ハハッと笑ったセインがジョルに「セイン・デールです」と挨拶し、握手を交わす。
「じゃあこっちにどうぞ」
カウンターのスイングドアを押したセインが、スミルたちを手招きした。
ジョルは初めて魔法医薬師の店の裏側に入ったため、物珍しさにきょろきょろが止まらない。
「デール殿」
敬意を込め、ジョルはセインをデール殿と呼んだ。
魔法医薬師は、魔導師団という活躍の場があり、出世の道が約束された魔導師に比べ圧倒的に少なく、また錬金術師に比べ儲からないと言われている。
しかしジョルのような騎士にとり、ポーション、魔力回復薬やエリクサーといった普通の薬師には作れないものを供給してくれる魔法医薬師は間違いなく尊ぶべき存在であった。
「あ、気にせずにセインと呼んでください。エザリアはこの奥にいるのでどうぞ」
店の奥は台所、その奥に居間があった。
確かにソファに置いたクッションで寛いでる白猫がいる。
ちらりと水色の目を向けたと思うと、すくっと体を起こして座り直した。
「ニャ」
ふぁさと尻尾を揺らしながら、前足を文字盤に乗せている。
『ようこそ えざりあ さりばー』
勿論、話に聞いてはいた。
信じがたい話だと思ったが、先入観を持たずに調べようと平常心を心がけていたが、思わず叫んでしまっていた。
「何だこりゃあ!嘘だろう?」
「いえ、間違いなくエザリア・サリバー男爵令嬢です」
予想された反応に淡々とスミルが返すも、ジョルは頭を左右に振りながら「そんなはずはない」と、既に聞いていたはずの事実を受け入れられずにいる。
「ニャッ」
白猫がジョルの注意を引いたあと、文字盤を指し示した。
『しつもんして』
スミルとセインはうんうんと頷いて、猫に同意している。
猫の示した言葉に大の男たちが追随する姿は滑稽なものだ。そう気づくと、ジョルの頭は急速に落ち着きを取り戻していく。
そしておかしくてたまらなくなった。
「ふっ、ふふっ、ハハハッ!まったくなんてことだよこれは!本当にどこからどう見ても猫じゃないか」
笑いだしたジョルが癇に障ったらしいエザリアは、ジョルのそばに移動する。
─あっ!─
スミルとセインがジョルに注意する間もなかった。
エザリアは自分を助けてくれるかもしれない騎士だというのに、何の遠慮もなく、彼の手の甲に爪を立てたのだ。
「うっ!」
さすがに騎士は「ぎゃ」とは言わなかったが。
笑いすぎたと白猫に頭を下げる自分も滑稽だと、またくすくす笑いだしてしまう。
「ご、ごめ、ツボにはまっ・・くふふ」
「え、エザリア!まずはほら、お客様にお茶を出そうか」
白猫が発する不穏な空気に、セインが機嫌を取り始める。
「今日のお茶菓子はエザリアも食べられるプリンにしたんだよ、ほら!」
猫になってから、食べたくても食べられないものもある。熱々のお茶や熱々のブリオッシュはどうやっても舌が受け付けない。辛いものも食べられない。
その中で猫の口でも安定して食べやすく、満足度が高いデザートがプリンだった。
「にゃあん!」
前足をセインの腕に乗せて、ちょいちょいと引いている。
「はいはい、すぐに出すから待ってね」
「スミル、セインさ・・んは猫語がわかるのか?」
「いやわからないでしょ。でもあれくらいなら俺もわかるな。早くくれって言ってる。何しろエザリアお嬢様は食い意地張っ!」
スミルが最後まで言うことはなかった。
音も立てずあっという間にスミルの前に移動したエザリアは、シャキンと爪を出してスミルの顎を撫でたから。
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