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呪われたエザリア
けっして興味本位ではない
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騎士団で日々、治安を守るジョルにとって、家出なり誘拐なり家族が姿を消したのに、届け出をしないというのは理解できないことだった。
「何故捜しもしないんだ?サリバー商会の令嬢だぞ?」
「シュマーが、いや、夫人が言ったんですよ!エザリアお嬢様が夫人や連れ子を虐め、咎められて逃げ出したと探させなかったのです」
「書き置きなどは?」
「ありません」
「ふむ。でもニストさんはご令嬢の行き先を知っていると?」
ほんの少しの時間をともにしただけだが、スミルはジョルを信頼してよさそうだと思い始めていた。
理由はわからないが、勘がそう言っている。
「・・・はい。知っています」
「呪われたと書いてあったんだが、それが私にはちょっと、よくわからないというかだな」
「ええわかりますよ、見てみなければ信じられないのも。俺も信じられないです、今だって」
「ね・・こ?」
「そう、猫になっちゃったんです」
「いや、そんな呪いがあるなんて初めて聞いたぞ。ほら、よくあるのは運が悪くなるとか、やたら雨に降られるとか。ああ!尻尾が生えたとかは聞いたことがあるが、姿が完全に?」
「そうなんですよ、完全に猫です!朝目が覚めたら猫になっていて、メイドに叩き出されたって言ってました」
「ああやはり喋れるんだな」
「喋れませんよ、猫ですから」
ジョルは混乱してきた。
「え?喋れないのになぜその猫が令嬢だとわかり、叩き出されたとか知ることができたんだ?」
「文字盤です。猫の足でこう、文字盤を指して考えを伝えてくるんですよ」
「猫がか?」
「猫ですがお嬢様です」
天井を見つめたジョルは暫く固まっていた。
頭を整理したいのだが、聞いたことがない話に上手くまとめきれない。
「う・・・」
「あの、お嬢様の件はジョルさんが良ければお連れすることができますよ」
「ええ?猫に会えるのか?」
「はいお嬢様に会えます」
ふたりは段々とまどろっこしくなってきた。
「なあ、もっとざっくばらんに話すのはどうだろうか?あと、ですます言わなくてもいい」
「ありがとうございます、助かります」
「そこはありがとう助かるよって言うところだぞ、ニストさん」
「てはドレイラさん、私はスミルとお呼びくださ、呼んでくれ」
「よし。では私はジョルでな」
打ち解けたあと、スミルはエザリアやメリから聞いたシュマーについて話し始めた。
「呪いについては令嬢が自ら聞いているんだな」
「ああ猫になってかららしいが」
「本人が聞いたことに間違いないよ」
時系列に、あっただろうことを並べていく。
「しかし、令嬢は運が良かったな」
「本当に。セインが助けてくれなかったらどうなっていたことか」
「その魔法医薬師が猫の書いた文字だと信じ、文字盤を作らねば、令嬢は一生猫のままだ」
「あの、ジョル、ジョルは本当に人が呪いで猫に変えられるなんて信じる?」
「・・・・」
微妙な間が空いた。
「さっきもいったように、エザリアお嬢様に会いたいなら、連れて行くけど」
とうとうスミルは切り出した。
会ってみて良さそうなら、エザリアはジョルを連れてきてもいいと言っていた。
「って・・みたい」
「え?」
「会ってみたい」
事実を確かめる必要があるのだ。
決して興味本位で見てみたいわけではないと、何故か自分に言い訳をするジョルであった。
「何故捜しもしないんだ?サリバー商会の令嬢だぞ?」
「シュマーが、いや、夫人が言ったんですよ!エザリアお嬢様が夫人や連れ子を虐め、咎められて逃げ出したと探させなかったのです」
「書き置きなどは?」
「ありません」
「ふむ。でもニストさんはご令嬢の行き先を知っていると?」
ほんの少しの時間をともにしただけだが、スミルはジョルを信頼してよさそうだと思い始めていた。
理由はわからないが、勘がそう言っている。
「・・・はい。知っています」
「呪われたと書いてあったんだが、それが私にはちょっと、よくわからないというかだな」
「ええわかりますよ、見てみなければ信じられないのも。俺も信じられないです、今だって」
「ね・・こ?」
「そう、猫になっちゃったんです」
「いや、そんな呪いがあるなんて初めて聞いたぞ。ほら、よくあるのは運が悪くなるとか、やたら雨に降られるとか。ああ!尻尾が生えたとかは聞いたことがあるが、姿が完全に?」
「そうなんですよ、完全に猫です!朝目が覚めたら猫になっていて、メイドに叩き出されたって言ってました」
「ああやはり喋れるんだな」
「喋れませんよ、猫ですから」
ジョルは混乱してきた。
「え?喋れないのになぜその猫が令嬢だとわかり、叩き出されたとか知ることができたんだ?」
「文字盤です。猫の足でこう、文字盤を指して考えを伝えてくるんですよ」
「猫がか?」
「猫ですがお嬢様です」
天井を見つめたジョルは暫く固まっていた。
頭を整理したいのだが、聞いたことがない話に上手くまとめきれない。
「う・・・」
「あの、お嬢様の件はジョルさんが良ければお連れすることができますよ」
「ええ?猫に会えるのか?」
「はいお嬢様に会えます」
ふたりは段々とまどろっこしくなってきた。
「なあ、もっとざっくばらんに話すのはどうだろうか?あと、ですます言わなくてもいい」
「ありがとうございます、助かります」
「そこはありがとう助かるよって言うところだぞ、ニストさん」
「てはドレイラさん、私はスミルとお呼びくださ、呼んでくれ」
「よし。では私はジョルでな」
打ち解けたあと、スミルはエザリアやメリから聞いたシュマーについて話し始めた。
「呪いについては令嬢が自ら聞いているんだな」
「ああ猫になってかららしいが」
「本人が聞いたことに間違いないよ」
時系列に、あっただろうことを並べていく。
「しかし、令嬢は運が良かったな」
「本当に。セインが助けてくれなかったらどうなっていたことか」
「その魔法医薬師が猫の書いた文字だと信じ、文字盤を作らねば、令嬢は一生猫のままだ」
「あの、ジョル、ジョルは本当に人が呪いで猫に変えられるなんて信じる?」
「・・・・」
微妙な間が空いた。
「さっきもいったように、エザリアお嬢様に会いたいなら、連れて行くけど」
とうとうスミルは切り出した。
会ってみて良さそうなら、エザリアはジョルを連れてきてもいいと言っていた。
「って・・みたい」
「え?」
「会ってみたい」
事実を確かめる必要があるのだ。
決して興味本位で見てみたいわけではないと、何故か自分に言い訳をするジョルであった。
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