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呪われたエザリア

ドレイラ家にて

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 重大な役目を背負い、スミルは町に戻った。

「ランチのときに・・・か」

 こんな込み入った話を、ランチしながら話せるものだろうか?
そんな静かな店?いや静かな店で他の客に話が聞こえてもまずいと今更気がついたが、個室やパーテーションのある店でどこか良さそうな店はあっただろうか?

 考えながら馬を歩かせていると、騎士団の前についてしまった。

「ニストさん」

 頭をまとめる間もなく、ジョルに声をかけられる。
どうやら思っていたより時間が経っていたらしく、待たせていたと気がついた。

「遅れて申し訳ありません!」

 馬から飛び降りようとしたスミルを手で押し留め、ジョルも自分の馬に飛び乗った。

「では行こうか」


「あの、どこに行かれるのでしょうか?」
「ああ。考えたのだが、ナレスの手紙を読む限りその辺の食堂で気軽に話せることではなさそうだからな。私の屋敷に行こう」

 可も不可も答える間もなく、スミルはドレイラ騎士爵家に引っ張っていかれた。



「さあ、どうぞ」

 門番はいない。
高い鉄柵に囲まれた中に、小さな屋敷が建っている。
 貴族の屋敷というには狭いが、平民の家と言うには広く立派な佇まい。
武功をあげて騎士爵を賜った平民にはちょうどよい家だと、スミルは判断した。

 ジョルは馬を下りると自分でゲートを開けて、スミルを誘う。
驚いたことにエントランス隣りのドアを開けると馬房があり、馬を入れたあと、奥の扉を開けると室内と繋がっていた!

「そんなに驚いたか?」
「ええ、だって家の中に馬もいるんですよね?」
「ああ。馬も家族だから私にとっては当然のことだ。馬房を外に作るより、この方が早いしな」

 合理的な性格らしいジョルについていくと、食堂に連れて行かれた。

 (普通はまず応接じゃないか?)

 スミルの心の声が聞こえたかのように、ジョルが言い訳をする。

「うちは通いの賄いがいてね、今日は昼を二人分食堂に置いておくよう伝えてあるんだ」



 ジョルの言うとおり、食堂にはやや冷めかけたランチが用意されていた。

「まずは頂こう。冷めてしまう前にね」

 騎士らしく、量が多い。
それをザクザクと口に放り込んでいくジョルの速さに、スミルも焦って食べ終えた。
味はまったくわからなかった。

「茶を淹れるから少し待っていてくれ」

 ジョルの大きな手に持たれたティーソーサーはえらく小さく見える。

(トレーに乗せたりはしないんだな)

 雑といえば雑。
でも飾り気のないジョルに、スミルは好感を抱いた。


「ニストさんはナレスが私に送ってきた手紙の内容は知っているのかな?」
「いえ。知りませんが、想像はつきます。元は俺が、私がナレスさんに知らせたことなので」
「なるほど。だから詳細はニストさんに聞けとあったんだな」

ふむふむと何かメモを取り始めた。

「ナレスから個人的かつ内密に調べてほしいと言ってきたのはふたつについてだ。一つはシュマー・サリバーの過去、人物像、最近の動向。
ふたつめは行方不明と言われているエザリア・サリバーについて。昨日騎士団の捜索届を確認したが、出されていないことは確認している」

 ジョルの眉間に皺が寄った。
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