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呪われたエザリア
エザリア、いい人にたどりつく
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「なんだ?帰り道がわからないのかな?うちは僕だけだから泊まってもいいけど」
セインは久しぶりに話す相手にうれしくなり、家に入れてやってもいいなと思い始めていた。
孤独に慣れすぎたセインは、こんなに懐こくされてうれしくなってしまったのだ。
(泊まってもいい?うそ!ありがとうっ!なんていい人っ!)
エザリアは「ニャッニャー」と喜びの声をあげた。
「うれしい?そうか!じゃあソミーの葉をしまうからちょっとだけそこで待っていて」
セインは無意識に白猫の頭を撫でた。
まったく警戒しない猫に内心驚きながら、逃げてしまわないように、ソミーの葉より先に猫を家に入れたほうがいいんじゃないかと気づく。
「ねこちゃん!先に家に入って待っていて」
ひょいとエザリアを抱き上げ、ドアの中に放り込む。
「ニャッ」
すたっと床に着地し、振り返った猫がまるで返事でもしたかのように鳴いたので、セインはパァッと笑った。
「ハハハ、かっわいいね!お腹すいてるかな?仕事が終わったら何か作ってあげるから待っててね」
(ごはん作ってくれるの?うそ、ホントーっ!やった、うれしいありがとうおにいさーん)
「ニャッニャッニャッニャーン!」
バタンとドアを閉めると、くすくすと笑いながら肩を揺らす。
「本当に返事してるみたいだな、あれ」
日中の強い日差しに照らされてほどよく乾いた葉を取り込むと、倉庫に収納する。
仕分けは明日でいい。
ねこちゃんに何か食べさせてやって─。
「食べたあと、どうするんだろう?」
もし家から出たがったら?
夜の森は本当に危険なのだ。
汚れのない毛並みから町から来た猫だと思うが、森に暮らす野生の動物には歯が立たないだろう。
あの猫ちゃんが、魔獣や猪や狸や狐に襲われたらと思うと背中が冷たくなる。
「いやいやいや、だめだそんなのダメダメ」
もし外に出たがっても、今夜は絶対に家の中に入れておこう!
帰るなら明日だ。
セインはやわらかくてあたたかなねこちゃんを抱いて眠ることを期待し、わくわくしていることに気づいていなかった。
「さあ、お待たせ!とり肉があるから火を入れてあげるね。生がいいのかな?でももしお腹壊したら、うちは人間用の薬しかないからねえ。
あっ!僕は魔法医薬師をしてるセインだよ。ねこちゃんの名前はあるのかな」
答えを期待しているわけではないが、話しかける相手が家にいることが新鮮で、セインはずっとエザリアに話し続けている。
エザリアも、食事をくれそうだし、何なら泊めてくれそうなセインに、一生懸命返事をした。
(さっき温めてたスープでもいいのよ!)
と言いたいが、エザリアのぷっくり可愛い口からはニャーしか出てこない。
「さあ、これどうかな?あれ?ねこちゃんは野菜も食べるんだったっけ?」
「ニャッニャッ」
(野菜も食べたいわ!健康のためにね)
「はいどうぞ」
ふわぁと鼻に吸い込まれる、茹でたてのとり肉の香りはエザリアがものすごく空腹だったことを思い出させた。
はぐはぐはぐ。
「うみゃうみゃうみゃーん」
「おいしいかい?よかった!すごくお腹すかせてたんだね、いきなりたくさん食べるとお腹がびっくりしちゃうから、またあとで茹でてあげるね」
「ニャーン!」
エザリアは、人間だったときでもこんなに機嫌よく返事をしたことはなかった。
■□■
作者、訳あって庭にやってくる子猫たちを保護することになり、ただいま医療費ヤベー!状況でございまして(;^ω^)
少しでも足しになってほしいという邪な考えで書き上げた作品です(*_*;
お気軽にお気に入りにポチっと頂けると大変ありがたいです。
※毎日数話更新のため【最新話を読む】機能を使うと読み飛ばす可能性があります。【しおりから読む】をお勧めします。
どうぞよろしくお願いいたします。
セインは久しぶりに話す相手にうれしくなり、家に入れてやってもいいなと思い始めていた。
孤独に慣れすぎたセインは、こんなに懐こくされてうれしくなってしまったのだ。
(泊まってもいい?うそ!ありがとうっ!なんていい人っ!)
エザリアは「ニャッニャー」と喜びの声をあげた。
「うれしい?そうか!じゃあソミーの葉をしまうからちょっとだけそこで待っていて」
セインは無意識に白猫の頭を撫でた。
まったく警戒しない猫に内心驚きながら、逃げてしまわないように、ソミーの葉より先に猫を家に入れたほうがいいんじゃないかと気づく。
「ねこちゃん!先に家に入って待っていて」
ひょいとエザリアを抱き上げ、ドアの中に放り込む。
「ニャッ」
すたっと床に着地し、振り返った猫がまるで返事でもしたかのように鳴いたので、セインはパァッと笑った。
「ハハハ、かっわいいね!お腹すいてるかな?仕事が終わったら何か作ってあげるから待っててね」
(ごはん作ってくれるの?うそ、ホントーっ!やった、うれしいありがとうおにいさーん)
「ニャッニャッニャッニャーン!」
バタンとドアを閉めると、くすくすと笑いながら肩を揺らす。
「本当に返事してるみたいだな、あれ」
日中の強い日差しに照らされてほどよく乾いた葉を取り込むと、倉庫に収納する。
仕分けは明日でいい。
ねこちゃんに何か食べさせてやって─。
「食べたあと、どうするんだろう?」
もし家から出たがったら?
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あの猫ちゃんが、魔獣や猪や狸や狐に襲われたらと思うと背中が冷たくなる。
「いやいやいや、だめだそんなのダメダメ」
もし外に出たがっても、今夜は絶対に家の中に入れておこう!
帰るなら明日だ。
セインはやわらかくてあたたかなねこちゃんを抱いて眠ることを期待し、わくわくしていることに気づいていなかった。
「さあ、お待たせ!とり肉があるから火を入れてあげるね。生がいいのかな?でももしお腹壊したら、うちは人間用の薬しかないからねえ。
あっ!僕は魔法医薬師をしてるセインだよ。ねこちゃんの名前はあるのかな」
答えを期待しているわけではないが、話しかける相手が家にいることが新鮮で、セインはずっとエザリアに話し続けている。
エザリアも、食事をくれそうだし、何なら泊めてくれそうなセインに、一生懸命返事をした。
(さっき温めてたスープでもいいのよ!)
と言いたいが、エザリアのぷっくり可愛い口からはニャーしか出てこない。
「さあ、これどうかな?あれ?ねこちゃんは野菜も食べるんだったっけ?」
「ニャッニャッ」
(野菜も食べたいわ!健康のためにね)
「はいどうぞ」
ふわぁと鼻に吸い込まれる、茹でたてのとり肉の香りはエザリアがものすごく空腹だったことを思い出させた。
はぐはぐはぐ。
「うみゃうみゃうみゃーん」
「おいしいかい?よかった!すごくお腹すかせてたんだね、いきなりたくさん食べるとお腹がびっくりしちゃうから、またあとで茹でてあげるね」
「ニャーン!」
エザリアは、人間だったときでもこんなに機嫌よく返事をしたことはなかった。
■□■
作者、訳あって庭にやってくる子猫たちを保護することになり、ただいま医療費ヤベー!状況でございまして(;^ω^)
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