2 / 126
呪われたエザリア
呪い
しおりを挟む
「おはようございまあす、起きてますかぁ」
メイドがエザリアを起こしに部屋に入ると、暖炉に火を入れなかった部屋は耳が切れそうな冷たい空気に満ちていた。
「もう、あのケチ親子ったら薪くらいくれてやればいいのに!部屋に入るあたしの身にもなってもらいたいよ。ん?」
メイドはベッドにエザリアではなく、一匹の白猫が眠り込んでいることに気がつく。
「コラァ!おまえどこから入り込んだぁぁぁぁッ!」
箒を振り上げるとしゅっと音がして、猫が目を覚まし、驚いたように目を見張っている。
「まったく、エザリア様どこに行ったんだ?ちゃんと閉めていかないから猫なんかが入るんだよ。ほら、おまえは出ていけ」
窓を開け放ったメイドがベッドを箒で叩くと、猫は怯えて飛び退いた。
「ほらっ、早く行け」
箒でバンバンと床や壁を叩くと、それに追われて猫は窓辺に飛び乗った。
「外に行けーっ!」
大きく箒を振りかぶると、猫は窓から外にジャンプして逃げていった。
あとにはエザリアが眠る前に着込んでいた服が残されているが、ちらりと目をやったメイドは脱ぎ散らかされたようなそれを畳むこともせず、床だけささっと掃き終える。
「全く油断も隙もありゃしないよ!」
エザリアは花摘みに行っているくらいに考え、カチャリと扉を閉めて出ていった。
(はあはあ。何?何が起きたの)
エザリアはメイドに部屋を叩き出されたらしいと気づいたが、その理由がよくわからなかった。
(なんだかおかしいわ?)
異常に目線が低いのだ。それにさっき窓から飛び降りた気がする。
(窓から?私が?嘘でしょ?何?う・・うう?そお!)
窓ガラスに写った自分のはずの姿は。
(うそ、なんで?)
エザリアの姿があるべきところに、毛並みの長い白猫が映っているではないか!
一体何が起きたのか?パニックに陥る。
元の姿に戻れるのかも気になるが、自分にこんな異変が起きるような何かを仕組むとしたら、あの母娘のどちらかしかいない!
気を取り直したエザリアは二人の部屋の下に行ってみることにした。
「かあさん、ねえエザリアがいなくなったそうよ!代わりに猫がいたから追い出したってメイドが」
「ふふ。そうかい、本当に成功したんだね!呪いで猫にすると聞いたときはまさかと思ったけど!
せいせいするねえ、厄介者が消えて」
「でもとうさんが帰ったらどうするの?」
にやっと口を歪ませながら母親が笑う。
「盗みやロズリン、使用人への虐めが酷くて叱ったら、へそを曲げて出ていってしまったみたいなのですぅ」
そこで今度はわざとらしい泣き真似をした。
「どうだい?それっぽく聴こえるだろう?」
「ふふっ、それならとうさんも騙されそう!あの人ちょろいもんね」
窓の下にエザリアが潜んでいるとは知らず、やれこれでこの家の財産は自分たちのものだとか、不穏なことを憚りなく話し始めた父の後妻シュマーと連れ子のロズリン。
「ところでどんな猫になったんだろうね」
「白猫だったらしいわよ」
「そうか。ふふ。あれは自分では解呪できないからね、ずーっと猫のままで死ぬこった」
それを聞いたエザリアはゾッとした。
「へえ、じゃあ元には戻れなくなったの?」
「ん、いや、確かかけた本人が解くか、神殿でなら解呪できるらしい。
しかしだ、誰が神殿に猫を連れていき、呪われて猫になった娘だから解呪してくれって頼むんだい?金を払ってさ」
「あはは。確かにね。ただの猫がエザリアだと気づく人なんかいるわけないか」
「そうさ。だからあの娘は死ぬまで猫でいるしかないんだよ。いいね、旦那様が戻ってきても絶対にボロを出すんじゃないよ!」
一層声が小さくなり、耳を欹ててもひそひそとしか聞こえなくなってしまう。暫く様子をうかがっていると。
「・・・に感謝しないと!・・・・・ふっ、はははっ」
笑い声とドアが開く音。
バタンと音と振動が響いて気配が消えると、白猫はフーっと息を吐いた。
■□■
作者、訳あって庭にやってくる子猫たちを保護することになり、ただいま医療費ヤベー!状況でございまして(;^ω^)
少しでも足しになってほしいという邪な考えで書き上げた作品です(*_*;
お気軽にお気に入りにポチっと頂けると大変ありがたいです。
※毎日数話更新のため【最新話を読む】機能を使うと読み飛ばす可能性があります。【しおりから読む】をお勧めします。
どうぞよろしくお願いいたします。
メイドがエザリアを起こしに部屋に入ると、暖炉に火を入れなかった部屋は耳が切れそうな冷たい空気に満ちていた。
「もう、あのケチ親子ったら薪くらいくれてやればいいのに!部屋に入るあたしの身にもなってもらいたいよ。ん?」
メイドはベッドにエザリアではなく、一匹の白猫が眠り込んでいることに気がつく。
「コラァ!おまえどこから入り込んだぁぁぁぁッ!」
箒を振り上げるとしゅっと音がして、猫が目を覚まし、驚いたように目を見張っている。
「まったく、エザリア様どこに行ったんだ?ちゃんと閉めていかないから猫なんかが入るんだよ。ほら、おまえは出ていけ」
窓を開け放ったメイドがベッドを箒で叩くと、猫は怯えて飛び退いた。
「ほらっ、早く行け」
箒でバンバンと床や壁を叩くと、それに追われて猫は窓辺に飛び乗った。
「外に行けーっ!」
大きく箒を振りかぶると、猫は窓から外にジャンプして逃げていった。
あとにはエザリアが眠る前に着込んでいた服が残されているが、ちらりと目をやったメイドは脱ぎ散らかされたようなそれを畳むこともせず、床だけささっと掃き終える。
「全く油断も隙もありゃしないよ!」
エザリアは花摘みに行っているくらいに考え、カチャリと扉を閉めて出ていった。
(はあはあ。何?何が起きたの)
エザリアはメイドに部屋を叩き出されたらしいと気づいたが、その理由がよくわからなかった。
(なんだかおかしいわ?)
異常に目線が低いのだ。それにさっき窓から飛び降りた気がする。
(窓から?私が?嘘でしょ?何?う・・うう?そお!)
窓ガラスに写った自分のはずの姿は。
(うそ、なんで?)
エザリアの姿があるべきところに、毛並みの長い白猫が映っているではないか!
一体何が起きたのか?パニックに陥る。
元の姿に戻れるのかも気になるが、自分にこんな異変が起きるような何かを仕組むとしたら、あの母娘のどちらかしかいない!
気を取り直したエザリアは二人の部屋の下に行ってみることにした。
「かあさん、ねえエザリアがいなくなったそうよ!代わりに猫がいたから追い出したってメイドが」
「ふふ。そうかい、本当に成功したんだね!呪いで猫にすると聞いたときはまさかと思ったけど!
せいせいするねえ、厄介者が消えて」
「でもとうさんが帰ったらどうするの?」
にやっと口を歪ませながら母親が笑う。
「盗みやロズリン、使用人への虐めが酷くて叱ったら、へそを曲げて出ていってしまったみたいなのですぅ」
そこで今度はわざとらしい泣き真似をした。
「どうだい?それっぽく聴こえるだろう?」
「ふふっ、それならとうさんも騙されそう!あの人ちょろいもんね」
窓の下にエザリアが潜んでいるとは知らず、やれこれでこの家の財産は自分たちのものだとか、不穏なことを憚りなく話し始めた父の後妻シュマーと連れ子のロズリン。
「ところでどんな猫になったんだろうね」
「白猫だったらしいわよ」
「そうか。ふふ。あれは自分では解呪できないからね、ずーっと猫のままで死ぬこった」
それを聞いたエザリアはゾッとした。
「へえ、じゃあ元には戻れなくなったの?」
「ん、いや、確かかけた本人が解くか、神殿でなら解呪できるらしい。
しかしだ、誰が神殿に猫を連れていき、呪われて猫になった娘だから解呪してくれって頼むんだい?金を払ってさ」
「あはは。確かにね。ただの猫がエザリアだと気づく人なんかいるわけないか」
「そうさ。だからあの娘は死ぬまで猫でいるしかないんだよ。いいね、旦那様が戻ってきても絶対にボロを出すんじゃないよ!」
一層声が小さくなり、耳を欹ててもひそひそとしか聞こえなくなってしまう。暫く様子をうかがっていると。
「・・・に感謝しないと!・・・・・ふっ、はははっ」
笑い声とドアが開く音。
バタンと音と振動が響いて気配が消えると、白猫はフーっと息を吐いた。
■□■
作者、訳あって庭にやってくる子猫たちを保護することになり、ただいま医療費ヤベー!状況でございまして(;^ω^)
少しでも足しになってほしいという邪な考えで書き上げた作品です(*_*;
お気軽にお気に入りにポチっと頂けると大変ありがたいです。
※毎日数話更新のため【最新話を読む】機能を使うと読み飛ばす可能性があります。【しおりから読む】をお勧めします。
どうぞよろしくお願いいたします。
10
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説
余命2か月なので、好きに生きさせていただきます
青の雀
恋愛
公爵令嬢ジャクリーヌは、幼い時に母を亡くし、父の再婚相手とその連れ子の娘から、さんざんイジメられていた。婚約者だった第1王子様との仲も引き裂かれ、連れ子の娘が後釜に落ち着いたのだ。
ここの所、体調が悪く、学園の入学に際し、健康診断を受けに行くと、母と同じ病気だと言われ、しかも余命2か月!
驚いてショックのあまり、その場にぶっ倒れてしまったのだが、どういうわけか前世の記憶を取り戻してしまったのだ。
前世、社畜OLだった美咲は、会社の健康診断に引っかかり、そのまま緊急入院させられることになったのだが、その時に下された診断が余命2日というもの。
どうやって死んだのかわからないが、おそらく2日間も持たなかったのだろう。
あの時の無念を思い、今世こそは、好き放題、やりたい放題して2か月という命を全うしてやる!と心に決める。
前世は、余命2日と言われ、絶望してしまったが、何もやりたいこともできずに、その余裕すら与えられないまま死ぬ羽目になり、未練が残ったまま死んだから、また転生して、今度は2か月も余命があるのなら、今までできなかったことを思い切りしてから、この世を去れば、2度と弱いカラダとして生まれ変わることがないと思う。
アナザーライト公爵家は、元来、魔力量、マナ量ともに多い家柄で、開国以来、王家に仕え、公爵の地位まで上り詰めてきた家柄なのだ。でもジャクリーヌの母とは、一人娘しか生まれず、どうしても男の子が欲しかった父は、再婚してしまうが、再婚相手には、すでに男女の双子を持つ年上のナタリー夫人が選ばれた。
ジャクリーヌが12歳の時であった。ナタリー夫人の連れ子マイケルに魔法の手ほどきをするが、これがまったくの役立たずで、基礎魔法の素養もない。
こうなれば、ジャクリーヌに婿を取り、アナザーライト家を存続させなければ、ご先祖様に顔向けができない。
ジャクリーヌが学園に入った年、どういうわけか父アナザーライト公爵が急死してしまう。家督を継ぐには、直系の人間でなければ、継げない。兄のマイケルは、ジャクリーヌと結婚しようと画策するが、いままで、召使のごとくこき使われていたジャクリーヌがOKするはずもない。
余命2か月と知ってから、ジャクリーヌが家督を継ぎ、継母とその連れ子を追い出すことから始める。
好き勝手にふるまっているうちに、運命が変わっていく
Rは保険です
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~
なつめ猫
ファンタジー
唯一の血縁者である姪っ子を引き取った月山(つきやま) 五郎(ごろう) 41歳は、住む場所を求めて空き家となっていた田舎の実家に引っ越すことになる。
そこで生活の糧を得るために父親が経営していた雑貨店を再開することになるが、その店はバックヤード側から店を開けると異世界に繋がるという謎多き店舗であった。
少ない資金で仕入れた日本製品を、異世界で販売して得た金貨・銀貨・銅貨を売り資金を増やして設備を購入し雑貨店を成長させていくために奮闘する。
この物語は、日本製品を異世界の冒険者に販売し、引き取った姪っ子と田舎で暮らすほのぼのスローライフである。
小説家になろう 日間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 週間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 月間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 四半期ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 年間ジャンル別 1位獲得!
小説家になろう 総合日間 6位獲得!
小説家になろう 総合週間 7位獲得!
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる