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chapter1 黒き萌芽と執行者

第11話 生命と深淵 Ⅰ

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会話は終わった。話しは終わった。

悲劇の少女ヒロインの顛末が語られたとき、こんなにも、「救われて良かった」と思えただろうか。

「あむあむ・・・・ん?終わった?」

その木戸川《悲劇の少女》がオレの手から口を離す。

嚙みついていたあの快感はクセになってしまいそうだ。正直言ってずっと嚙んでて。

しかし、そんなことを口に出してみろ。どうなると思う?

「間違いなく、殴られる蹴られるのタコ殴りだな^^」

「――お前は黙ってろ、ていうかその不気味な顔はなんだその顔は!」

「間違いなく脈ありの男女をみて微笑ましく見守る時に出てしまうほくそ笑みフェイスだ。^^」

「説明せんでいい!」

――覚吏《コイツ》ほんとどこでも湧くよな。Gかよ。

「誰がGだよ!わたしは美し~い&賢いインテリビューティープレジデント、Ms.サトリ・ヒナザワ!」
「そして私がその母親!Ms.チヒロ・ヒナザワ!」

ほんとコイツら似た者親子だよな。血は争えないっていうか・・・そんなアホな遺伝なんぞしなきゃ良かったのに。

「・・・琉輝。」

「ん?」

木戸川が声をかけた。

「・・・ありがと。琉輝。トラウマをそれほど思い返すことなく聞き流せた。・・・センキュ。」

「・・・ありがとうを二回も言われるほど、オレはそんなに頼りにされてるのか?」

オレは木戸川にそう呼びかける。

「・・・・。」

木戸川は小さく頷き、尻尾を振る。向きは右だ。

オレは相当なつかれているらしい。

「・・・オレでよければ、いつでも嚙んでいいぞ。」

「・・・・ホントか?」

尻尾の振りが速くなった。凄く喜んでるみたいだ。

「ああ、ホントだ。」

正直言ってマッサージにはちょうどいい。だから、これからもお願いしたい。

「ま・・・毎日・・・でもか?」

あぁーっと。答えづらい回答が出てきたー。

どうしよ・・・・オレは週1程度の頻度で嚙んでもらえると嬉しいし、何よりも木戸川自身の顎の心配もあるしな・・・・

こういう時は・・・・!

「う、う~んそうだなぁ~・・・週に一度でいいからそれぐらいに頼むよ・・・・」

「・・・・分かった。琉輝がそういうなら・・・・。」

しょんぼりしてる・・・どんだけ嚙みたいんだ・・・・

「ところで・・・・」「どうしたの?」

稲志田が景虎に質問する。

「どうして凛ちゃんは、わざわざ姿を変えてまで、ここに入ったんですか?」

「・・・それもごもっともね。いいわ。ついでに話してあげる。」

奈(ついでなんだ‥‥)
琉(ついでかよ)

「あの子ねぇ、意外とシャイなのよ~!それでねぇ、自分のお気に入りの役の姿になりたいっていうミーハーなとこもあるのよぉ~!もぉ~可愛いわねぇ~凛ちゃん♡」

――子供のような発送だな‥‥

「い、偽りのアタシを装っていれば、誰かとアタシを認識されなくていいし、それに、芸能界も、や、やっぱ楽しかったから…アウウ…」

そして縮こまる木戸川。

――うん。可愛い。子犬かな?

「そ・れ・よ・り・も。わたしとお兄ちゃんの馴れ初めを喋るはずでしょ?パパ?^^」

「―――無言の圧力はやめてくれ。」


ティアと親父がようやく口を開いたか。

「つか発言って何だったんだよ。」

「そ・れ・は・で・す・ね・ぇ~。これまでの経緯とその真実です!パンパカパーン!パチパチパチパチ!ヒューヒュー!」

――セルフSEとか、なんなの?この子。

エ「経緯?」奈「それって、社長が言ってた『母親を亡くした』ってことと関係が?」テ「ピンポンピンポーン!!そのとーり!!」

―――アレか。

とうとう話すのか。

どうせ覚吏《アイツ》にはバレてるだろうし、それを踏まえて、仲間達《アイツら》に話すのか。

――お前のせいだぞ。美魔女ネタバレスキー。

「なんでだよ!わたし関係‥‥あるな。」

――やっと理解《わか》ったか。

「それはそれとして!美魔女かぁ~リュウ~。褒め倒してくれるじゃないか!このこの~。」

――うん。前言(?)撤回。やっぱなんも理解《わか》ってないなお前!

「(´・ω・`)」

「美魔女ってほどの年齢ではありませんが、わたしだって、可愛い魔法少女みたいなものです!名付けて、『魔法少女☆キュアキュアマトティア☆』です!さあお兄ちゃん!あなたのハートをキュアキュアリ~ン!」

――お前は唐突に何を血迷ったんだ!?

「ま…魔法少女…アタシもやってみたいなー…なんて。ウィヒヒ。」

――木戸川《お前》も何言ってんの!?

「みんなしっかりしてください!3年前、自撮りあげたら『うわきつ(褒め言葉)』とか、『長身美女が魔法少女コスしてて草』『馬鹿野郎そこがいいんだろjk』とか、『重度の魔法少女ヲタクで大草原不可避』『むしろあんなアンティークな作品のコスプレするとか懐かし過ぎて泣いた』とか言われてしばらく封印してた魔法少女のコスプレしたい気持ちをグッッッッと抑えて、琉輝君のお母さまが亡くなって、その後のティアちゃんとの馴れ初めとか諸々の壱原家の家庭事情を喋ろうとするのを静聴しようとしてるのに、美魔女からの魔法少女トークは控えるようにしてください!」

琉・覚「「稲志田《お前》が一番控えろよ!!」」
覚「なんなの!?え!?なんなの!?」
凛「アタシよりヲタクで好感度上がった。今度一緒にアニゲー宝箱いこ。(アニゲー宝箱:若者に人気のサブカルチャー売買店。ゲームセンターやカード売り場、アニメ作品のレアアイテムはもちろん、マンガなども取り揃えているヲタクの聖域。)」
琉「ウッソだろお前!?あんなマシンガントークしておきながら本題を差し置いてまさかの魔法少女ヲタクカミングアウトとかバカなの!?ていうか人形売りしてたのそれが一番の理由だろ!なんなの!?かわいすぎかよ!?スキ!!」
奈「う…うぅぅぅ…///凛ちゃんありがと…。一緒に行こう?そんで気に入ったものは全部社長のツケにしよう?」凛「Σd」覚「なんでさ!!」

――自業自得だろ。
「(#^ω^)ピキピキ」「すんませんゆるしてください冷凍庫行きは勘弁してください」「ゆるす^^」

エ「ていうか、何でそんなに顔が赤いんでs(((」奈「察しろよこの鈍感暖房ヤロー!!!!」

エリックが思いっきりぶん殴られて、床に延びた。

凛「今更ながら、星屑って飛ぶ時妙に暑かったと思ったらそういうことか。」奈「気流を操るからな。熱を操って飛ぶ事が仕組み|《アルゴリズム》なんだろう。…ていうか星屑って?」凛「ああそれ?めんどくさいからテキトーにあだ名付けた。」

『星宙エリック』だぞ!?どこをどう面倒くさがれば星屑になるんだ!?

―――つかなんで稲志田は顔が赤くなってんだろう。ホント。

「好きな男に『好き!!』なんて告白されればそりゃあ誰だって照れるだろ。わたしだって照れる。」解説乙。

奈「琉輝君…」琉「なんだ?」奈「今度、3人で一緒に行こう?」―――お誘いだ。

そうだな・・・断る理由もないし、それに、何かいいインスピレーションがあるかもしれないしな。

琉「…分かった。いいアイデアがないか、それ込みで買い物しよう。」奈「・・・!うん、ありがとう!やっぱり琉輝君は頼りになるね!…はっ!でもこれ実質デートでは!?いや、ダブルデートだ!」凛「琉輝…楽しみにしてるぞ?」―――凄い大変そうだ。

「・・・なあ、話し進めてもいいか?さっきから自由に喋りすぎだぞ?何でオレは黙ってこのカオスな空間に居続けるんだ?それとどうして息子に浮いた話が急激に入ってくるんだ?情報過多で死ぬぞ?」

―――親父が困惑している。・・・そりゃあそうか。

「はい!この話しはおしまいおしまい!!皆さんせっかくわたしとお兄ちゃんの話しをしようと思っていたのに、急激に魔法少女トークが始まってカオスが充満してしまったじゃないですか!まったく誰ですか、魔法少女なんて言い始めたの!?」

―――十中八九お前だよお前!間違いなくカオスの原因はお前!

千「…凄い。」覚「ママ?」千「まったく私が入り込む隙がなかった…穢虚盧《エコロ》君みたいに影が薄かった感じがする…」覚「パパと同じぐらいの影が薄いって・・・」厳「どんだけ濃いんだよ…穢虚盧《エコロ》と同じぐらいって相当だぞ…」

――いや、そこ競うとこじゃないから。んで何で親父も入ってんだよ。つか穢虚盧って雛沢穢虚盧警視総監か!?…よくよく考えたらそうだったわ。千尋さん警視総監夫人だったな。うん。

景「そのレベルって凄いわね。わたしが口をはさめないなんて…」

―――貴方は存在自体が濃厚過ぎるから妥当。

「・・・さて、取り直して話しをしよう。まずは、ティアの事からだな。」

―――いよいよ、運命が動き始める。
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