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本田君は私が席に収まった事を確認すると、私に向かって手を差し伸べて、彼らにこう紹介した。
「こちらが男性恐怖症の、井上さんだ。」
「へぇー。」
本田君の友人達は、一斉に感心したように声を上げた。私はびくびくしながらも、深くお辞儀をして言ったわ。
「皆さん今日は、・・・どうか、よろしくお願いします。」
「なかなか礼儀正しい人なんだ。」
本田君は付け加えるように言った。すると眼鏡を掛けた、色白でソフトな感じの男の人が、私に話し掛けてきた。
「あの、僕の名前は三田って言います。よろしく。
ところで井上さんは・・・、男の人の何が怖いの?」
私はちょっと戸惑ってから言った。
「あの、・・・言ってしまってもよろしいのでしょうか?」
「どうぞどうぞ。遠慮する事なく言っちゃってください。」
三田君がそう唆すので、私も決意を固めて言う事にしたわ。
「それは・・・、」
「うん。」
「正直に言うと・・・、」
「うん。」
今や男性陣全ての目が、私に注目していた。
「男の人のあんなものが怖いです。あんなものとはつまり・・・、男の象徴の事ですが・・・。」
すると座は一瞬しんと静まり返った。
それから彼らは一斉に下を向き、みんな必死に何かを堪えている様子だった。だが本田君が真っ先に、
「ぶっ。」
と吹き出すと、それを契機に彼らは遠慮する事なく笑い始めたのだ。
「あは。」
「ウハハハ。」
「ヒヒヒッ・・・。」
「フッ。」
それからしばらく5人の爆笑は続いたの。私は何とも言えない気持ちで、そんな彼らの様子を眺めていたわ。するとやや色黒の、精悍なスポーツマンといった感じの男の人が、私に訊ねた。
「じゃあさ、じゃあさ。もしかして今俺らの事を見ても、やっぱり“あんなもの”の事を思うの?」
私はきっぱりと答えた。
「はい、初めて皆さんを見た時、
(あんなものが5つ。)
と、心の中でひっそり思いました。」
「アハハハ。」
「でも井上さんは、男の核心を確かに突いているよね。だって男の人生の最も大きな役割って、“あんなもの”の働きひとつにかかっている、と言えるもの。」
どこか気の弱そうな、オタクっぽい雰囲気の太った男性がそう言うと、誰よりも馬鹿笑いをしていた本田君が、場をとりなすように言った。
「ね、井上さんって、なかなか面白い人でしょ?
まあ、何で彼女を今日の飲み会に連れて来たのかっていうと、要するに、皆に彼女の男性恐怖症を治す手伝いをしてもらいたい、と思ったわけなんだ。
だから・・・、協力してもらえるかな?」
「ふーん。」
「もちろん、いいよ。」
「なるほどね。」
「オッケーです。」
4人は4人なりに、軽く本田君に了解のメッセージを送った。私は何よりも私の存在で、場の雰囲気を壊してしまう事を怖れていたから、ひとまず彼らに受け入れられた事を知って、心の底からホッとしたものだった。
「こちらが男性恐怖症の、井上さんだ。」
「へぇー。」
本田君の友人達は、一斉に感心したように声を上げた。私はびくびくしながらも、深くお辞儀をして言ったわ。
「皆さん今日は、・・・どうか、よろしくお願いします。」
「なかなか礼儀正しい人なんだ。」
本田君は付け加えるように言った。すると眼鏡を掛けた、色白でソフトな感じの男の人が、私に話し掛けてきた。
「あの、僕の名前は三田って言います。よろしく。
ところで井上さんは・・・、男の人の何が怖いの?」
私はちょっと戸惑ってから言った。
「あの、・・・言ってしまってもよろしいのでしょうか?」
「どうぞどうぞ。遠慮する事なく言っちゃってください。」
三田君がそう唆すので、私も決意を固めて言う事にしたわ。
「それは・・・、」
「うん。」
「正直に言うと・・・、」
「うん。」
今や男性陣全ての目が、私に注目していた。
「男の人のあんなものが怖いです。あんなものとはつまり・・・、男の象徴の事ですが・・・。」
すると座は一瞬しんと静まり返った。
それから彼らは一斉に下を向き、みんな必死に何かを堪えている様子だった。だが本田君が真っ先に、
「ぶっ。」
と吹き出すと、それを契機に彼らは遠慮する事なく笑い始めたのだ。
「あは。」
「ウハハハ。」
「ヒヒヒッ・・・。」
「フッ。」
それからしばらく5人の爆笑は続いたの。私は何とも言えない気持ちで、そんな彼らの様子を眺めていたわ。するとやや色黒の、精悍なスポーツマンといった感じの男の人が、私に訊ねた。
「じゃあさ、じゃあさ。もしかして今俺らの事を見ても、やっぱり“あんなもの”の事を思うの?」
私はきっぱりと答えた。
「はい、初めて皆さんを見た時、
(あんなものが5つ。)
と、心の中でひっそり思いました。」
「アハハハ。」
「でも井上さんは、男の核心を確かに突いているよね。だって男の人生の最も大きな役割って、“あんなもの”の働きひとつにかかっている、と言えるもの。」
どこか気の弱そうな、オタクっぽい雰囲気の太った男性がそう言うと、誰よりも馬鹿笑いをしていた本田君が、場をとりなすように言った。
「ね、井上さんって、なかなか面白い人でしょ?
まあ、何で彼女を今日の飲み会に連れて来たのかっていうと、要するに、皆に彼女の男性恐怖症を治す手伝いをしてもらいたい、と思ったわけなんだ。
だから・・・、協力してもらえるかな?」
「ふーん。」
「もちろん、いいよ。」
「なるほどね。」
「オッケーです。」
4人は4人なりに、軽く本田君に了解のメッセージを送った。私は何よりも私の存在で、場の雰囲気を壊してしまう事を怖れていたから、ひとまず彼らに受け入れられた事を知って、心の底からホッとしたものだった。
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