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桃青

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14.かんちがい

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 雄大君は言う。
「どうっすか、このパーカー。ライトピンクなんですよ。春ということで、俺としてはスプリングカラーに挑戦したつもりです」
「あー、いいよ。ナイスなセンスだね」
 私は上の空で答える。サロン・インディゴは今の所平和だ。午前中に相談に来た、やや中年に差し掛かった、独身だと主張する女性は、目にする光の輝き具合で、自分はオーラを見ることができるのだと力説していた。ふーん、そうなのかと思って、リアルにオーラを見ているはずの雄大君を窺うと、目が点になっており、彼は言った。
「それって単に、反射の問題じゃないですか? 」
 するとその女性は目を丸くして叫ぶ。
「でも私、感じるんです、確かに! 」
 私は彼女に問うた。
「で、あなたはどうしたいんです? 」
「こんな力を授かってしまった私を、どうしたらいいのか分からなくなってしまって。良ければ私の力を必要とする人を教えてもらいたくて、今日ここに来ました。私の能力は……、自分で言うのもなんですけど、偉大だと思いますから、今やっているOLの仕事を続けるわけには―」
 雄大君は小声で言う。
「ここはハローワークじゃないですよ」
 私は小さく咳払いをしてから言った。
「OLの仕事の傍ら、ボランティアのような形で、オーラを見てほしいという人を見てあげたらどうですか。経験を積むと、自分の才能を深く知ることができるようになりますし、徐々に自分の方向性も見えてくると思います」
 すると彼女はこれ見よがしに溜め息をついて言った。
「私の友達に、あなたのオーラを見てあげますよと言って、自ら見てあげました。でもその人達が私を無視するようになりました。彼女達……、つまり普通の人には分からないんですよ、この繊細な感覚が。私には誰か自分のことを理解してくれる人が、必要なんです」
「恋人を探すといいんじゃないですかね」
 雄大君の小声の発言に、笑いだしそうになりながらも、私は言った。
「今の段階で私達にできることはなさそうです。ただ、理解者になることはできなくても、お話はいつでも聞きますので、話したいことがあるなら、またいらしてください」
「えええ。なんか上から目線で感じ悪。こんなことでお金を取るなんて、いい商売だわあ。多分もう、二度と来ないと思います。さようなら」
 そう言い捨て、彼女は相談料の二千円を荒々しく払うと、目を三角にしてさっさとここから出ていったのだった。
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